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大学・研究所にある論文を検索できる 「心身ともに健康で長く働ける職場の実現へ向けた腰痛並びにストレス対策に関する検討~的を絞った効率的な対策に向けて~」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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心身ともに健康で長く働ける職場の実現へ向けた腰痛並びにストレス対策に関する検討~的を絞った効率的な対策に向けて~

渡辺, 宗一郎 大阪大学

2022.03.24

概要

【背景】職場環境において、心身ともに健康で長く働ける環境は、労働者にとって安心して働ける拠り所となり、国としても医療費の削減に繋がる。しかし、実際は、慢性疼痛を有する労働者は40%を超えており、約60%の労働者が仕事や職業生活に強いストレスを感じていると報告されている。そこで、慢性疼痛の中でもっとも高く、身体の健康を阻害する腰痛、並びに精神障害などに繋がり、心の健康を阻害するストレスに着目し、研究を行った。

【研究1】静的シミュレーションによる腰痛体操構築手法の提案並びに介入試験による検証
(背景)腰痛は、職業によって有訴率が異なるとされており、その中でも物流業従事者は有訴率が、71-74%と最も高いと報告されている。運動は療法として、また、発症予防として効果があるとされる一方で、運動の種類の適切さについては、明らかにされていなかった。(目的)物流業従業員に適した運動を構築するための手法を提案し、介入試験により、その効果を検証することを目的とする。(方法と結果)(1)運動の設計:重量物挙上作業解析ソフトを用いて、Standing Lift, Stoop Lift, Squat Liftの3つを静的な挙上姿勢と定義した。次に、筋骨格シミュレーションを用いて、その静的姿勢時に活性化する筋肉を算出した。その結果、下肢筋肉46 種類(半身)中それぞれ 13(Standing Lift)、13(Stoop Lift)、16(Squat Lift)種類の筋肉が活性化していることが判明した。筋骨格シミュレーションにより、それらの筋肉を最低2回満遍なく動かす10種類の特異的な静的姿勢を構築した。次にこれらの姿勢を可動部が腰から足先に移動するように3分20秒の一連の運動を構築した。(2)有効性の検証:介入試験は倫理審査(承認番号15408)に則って単群試験にて20歳から50歳の非特異的腰痛保持者(n=6)に対して3ケ月、1日2回、運動を実施した。定性的な評価項目として、VASによる腰痛自己評価、腰痛特異的尺度テスト(Oswestry Disability Index(ODI:障害の状況), Roland-Morris Disability Questionnaire(RDQ:腰痛の状況))、包括的QOL尺度SF-36を用いた。また定量的な評価項目として、指床間距離(FFD:柔軟性)や下肢・股関節の関節可動域(ROM:柔軟性)、持ち上げ動作時の重心動揺計測(COP:バランス能力)、筋肉量計測(MM:筋量)を用いた。なお、柔軟性やバランス能力、筋量は腰痛発症と関連が報告されている。その結果、VAS(Mdn:39.5→16)、ODI(Mdn:15→12)、RDQ(Mdn:1→0)と腰痛の改善の傾向が見られた。また、FFD(Mdn:-5.5→2.75)、ROM(Mdn:19.5→39)、COP(Mdn:27.6→21.9)と腰痛の発症の予防につながる可能性が示唆された。QOL(Mdn:54.1→54.4)、MM(Mdn:51.3→51.3)については変化がなかった。以上より、物流業に適した運動構築手法の提案並びに腰痛の療法並びに発症予防に対して効果があることが示唆された。

【研究2】決定木アルゴリズムによる知覚ストレスの要因分析に関する考察
(背景)ストレスの発生機序は、複雑で様々な因子が関係している。ストレス対策は、主に職業性因子に着目されるが、個人因子や業務外因子などを含めた総合的な対策が必要である。しかし、従来研究では、様々な因子を総合的に考察したものはなく、それぞれの因子が他の因子と比べてストレスに対する影響度の大小を考察できなかった。その為、優先順位をつけた対策を行うことが難しかった。(目的) NIOSHの職業ストレスと健康モデルを参考にストレスモデルを作成し、職業性ストレッサー、個人因子、業務外因子、緩衝因子などの因子が知覚ストレスに与える影響の大きさについてビッグデータを基に考察する。(方法と結果) 自記式アンケートを用いて、A物流会社7,255人に対して、健康調査を行い、6,166名(有効回答数85%)から回答を得た(承認番号:17233)。健康調査データをもとに職業性ストレッサー(営業所、通勤時間、業務内容、労働時間、深夜勤務、仕事余暇、心理的安全性、仕事要求度、仕事調整)、個人因子(年齢、職種、社歴、同居、SOC(ストレス対処能力))、業務外因子(BMI、喫煙、飲酒、運動、家事、介護、PSQI(睡眠の質))、緩衝因子(上司支援、同僚支援)、以上31の因子を説明変数とし、知覚ストレスを目的変数としてストレスモデルを構築した。次に、本研究では、説明変数が30を超えるため、従来の統計手法では多重共線性の問題より、解が収束ない可能性がある。そこで、多重共線性の問題に堅牢な機械学習の手法を用いて解析を行った。決定木ベースのアンサンブル学習アルゴリズムであるRandomForest,XGBoost,LightGBM,CatBoostの4つのアルゴリズムを用いて、学習モデルを構築した。なお、交差検証は5回とし、ハイパーパラメーターは総当たりで、最適数値を算出した。学習アルゴリズムの評価は、検証データにおける決定係数を元にした。また、重要度算出の際には、予測値に対する寄与度を算出でき、一貫性が証明されている、SHAP ( SHapley Additive exPlanations)法の平均値を用いて算出した。その結果、 LightGBMの精度が最も高く(R2=0.35)、LightGBMによるアルゴリズムを用いた。次に、重要度算出においては、ストレス対処能力、睡眠の質の2つが、仕事の要求度など他の因子より特に大きな影響を与えていることが判明した。以上より、総合的に因子を検討し、どのような因子が知覚ストレスに影響を与えているか明らかになった。

【研究3】職場の集団分析による高ストレス職場の特定並びに因子に関する検討
(背景)研究2において、ストレス対処能力などの個人因子や睡眠の質など業務外因子など、労働者本人へのセルフケア対策の重要性を示した。しかし、それと同時に職場起因のストレッサーそのものを減らすという意味で職場単位の環境の改善も同じく重要である。職場単位の集団分析を行うことで、高ストレス集団の特定並びに、その因子について把握することができ、優先順位を付けた的を絞った対策を行えると考えられる。(目的) 職場ごとの高ストレス者の割合から、職場環境改善対策が比較的急務な職場の特定を行う。また、高ストレス職場における因子を把握し、効率的な職場環境改善について考察する。 (方法と結果) 職場はA物流会社における、全国27都道府県の149の営業所と定義した。なお、厚生労働省の集団分析のマニュアルでは、10名未満の集団分析は、個人が特定される恐れがあるとされているため、10名未満の営業所を除外し、118営業所にて解析を行った。研究2にて取得した労働・健康関連調査データセットを用いて、知覚ストレス値の全国平均値である30を超えている者の職場ごとの割合を算出した。そして、高ストレス者の割合が50%を超えている職場を高ストレス職場として、職業性ストレッサーの中央値と全数中央値との比を算出し、その比の高低から職場ごとのストレス因子を検討した。その結果、50%を超えている高ストレス職場は、36、92、98、107、109番営業所であることが判明した。また、36(通勤時間、仕事内容)、92(上司支援)、98(仕事内容、上司支援)、107(通勤時間、仕事内容、仕事の要求度、上司支援)、129(仕事内容、上司支援)の職業性因子の中央値が全数中央値と比較して、約20%以上悪い方向に乖離があった。以上より、高ストレス集団を特定し、高ストレス集団のストレス因子について明らかにした。

【総括】職場環境における健康対策は、限られたリソースにより的を絞って行わなければならないというのが現状であると考える。そのような中で、研究1では、筋骨格シミュレーションを用いて、重量物挙上時の姿勢から職業に特徴的な運動を構築し効果を検証することで、職場・職種別に適した運動設計の可能性を示唆した。研究2では、機械学習を用いて、知覚ストレスに影響を与える因子を幅広く検討し影響の大きい因子を特定し、仕事の要求度よりストレス対処能力並びに睡眠習慣の高さがストレス低減に重要である可能性を示した。そして、研究3では、高ストレス集団の特定と因子を明らかにすることにより、職場環境改善時の対象集団・対策項目における優先順位を付けた対策の可能性を示唆した。以上より、心身ともに健康で長く働ける職場を目指し、的を絞った効果的な対策を行うための多角的アプローチを示すことができたと考える。

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