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大学・研究所にある論文を検索できる 「Zonisamide ameliorates progression of cervical spondylotic myelopathy in a rat model」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Zonisamide ameliorates progression of cervical spondylotic myelopathy in a rat model

Kanbara, Shunsuke 神原, 俊輔 名古屋大学

2020.11.10

概要

【緒言】
 頚椎症性脊髄症(CSM)は、脊髄の慢性的な圧迫によって痛み、しびれ、歩行障害などが引き起こされる、成人の脊髄症の最も一般的な疾患である。CSM の組織学的特徴は、グリオーシス、脊髄前角の運動神経細胞の喪失、皮質脊髄路を構成する軸索の変性、慢性的・機械的圧迫に起因する壊死などがある。ヒト CSM および頚髄が圧迫されるモデルマウス Tiptoe Walking Yoshimura (twy/wy) hyperostotic mouse では、神経細胞およびオリゴデンドロサイトのアポトーシスが観察され、グルタミン酸、フリーラジカル、活性酸素種からの酸化ストレスなどによる神経毒性が原因と考えられている。現在ヒト CSM の治療法は手術加療のみであり、治療薬剤は存在しない。
 以前に我々は、抗てんかん薬であるゾニサミドが活性酸素種から培養した脊髄運動神経細胞を保護することを報告した。そこで我々は、独自に開発した CSM モデルラットを用い、ゾニサミドの効果を検討した。この結果、ゾニサミドは CSM モデルラットの組織学的な特徴や歩行障害を軽減させたことから、ヒト CSM の新しい薬剤治療の候補となりうると考えている。

【対象及び方法】
 我々は、12 週 Wistar 種雌ラットを使用し、第 5 頚椎と第 6 頚椎の椎弓下の硬膜上に膨張性吸水性ポリマー(厚さ 0.80 mm× 縦 5 mm× 横 3 mm)を挿入し頚髄を徐々に圧迫することで頚髄症に似た症状を示す CSM モデルラットを作製した(図 1A,B)。shamラットはこのポリマーを挿入せずに処置を終了した。この CSM モデルラットを用いて、抗てんかん薬ゾニサミドを処置後 5 週目から毎日 30 mg/kg 経口投与を 5 週間行い、歩行能力、脊髄圧迫部位の組織学的評価と遺伝子学的評価を行った。歩行能力の評価は CatWalk と Wire mesh walking test を用いて行った。CatWalk で計測された歩幅と歩行 1 サイクルにおける各脚の立脚時間の割合を評価した。組織学的評価は hematoxylin/eosin (HE)染色にて脊髄前角運動神経細胞、Luxol Fast Blue/Nissl (LFB/Nissl)染色にて錐体路の軸索の髄鞘、免疫染色では活性酸素種による脂質酸化損傷マーカーである 4-hydroxynonenal (4-HNE)、蛍光免疫染色ではコリン作動性神経細胞の choline acetyltransferase (ChAT)とフリーラジカルや過酸化物といった活性酸素種から細胞を保護するトリペプチドの glutathione (GSH)を評価した。遺伝子学的評価は RT-PCR により Proliferating cell nuclear antigen (PCNA)、Metallothionein 2A、cystine/glutamate exchange transporter (xCT)の発現を評価した。

【結果】
 CatWalk を用いた歩行能力評価では、処置後 1-3 週では、CSM モデルラットの前肢と後肢の歩幅は sham ラットと有意な差を認めなかった。処置後 5-10 週には、sham ラットは歩幅が徐々に増加したが、CSM モデルラットでは増加を認めなかった。立脚時間の割合は、sham ラットでは前後肢ともに徐々に減少したが、CSM モデルラットでは減少を認めなかった(図 1C,D)。処置後 5 週の CSM モデルラットの C5-6 脊髄前角のNissl 陽性細胞数は、sham ラットより有意に少なかった(図 1E)。処置後 10 週の CSMモデルラットの C5-6 脊髄前角の 4-HNE 陽性神経細胞数は、sham ラットより有意に多かった(図 1F)。
 次に CSM 症状が顕在化した処置後 5 週から溶媒メチルセルロースのみを経口投与する ZNS(-)群とゾニサミドを 30mg/kg/日を経口投与する ZNS(+)群を比較検討した(図 2A)。処置後 5 週から 10 週の 5 週間、ゾニサミドを毎日投与することで、CSM 処置による前後肢の歩幅の減少(図 2B,C)、後肢立脚時間の割合の維持(図 2D,E)、Wire mesh walking test での四肢のスリップ率の上昇(図 2F)が抑制された。処置後 10 週の CSM モデルラットの C5-6 脊髄前角の Nissl 陽性細胞の数は sham ラットより有意に減少したが、ゾニサミド投与によりその減少は抑制された(図 3A,C)。またゾ二サミドの有無にかかわらず CSM 処置により錐体路面積(図 3D)は減少したが、ゾニサミド投与により錐体路中の LFB 陽性髄鞘面積の減少は抑制された(図 3B,E)。加えて、 CSM 処置により C5-6 脊髄前角の ChAT 陽性運動神経細胞数は減少したが、これもゾニサミド投与によりその減少は抑制された(図 4A-B)。処置後 10 週の CSM モデルラットの C5-6 脊髄において、ゾニサミドは xCT と Metallothionein 2A の遺伝子発現を増加させ(図 5A)、ChAT 陽性運動神経細胞における GSH シグナル強度を増加させた(図 5B,C)。

【考察】
 これまで幾つかの CSM 動物モデルが報告されている。twy/twy マウスは、靭帯石灰化を発症し頚髄を圧迫するモデルであるが、関節拘縮を発症し頚髄症に関連した運動機能障害を評価することが困難である。一方、外科的な処置により脊髄症状を誘導するモデル作製方法がいくつか提案されている。第4頚椎に全周性に外科用の糸を結び局所の成長を抑制する方法は技術的に難易度が高い。頚髄をスクリューで圧迫する方法は段階的に脊髄を圧迫するため、徐々に脊髄を圧迫されることが原因の CSM モデルとは違いが予想される。合成芳香族ポリエーテルを挿入する方法は、材料の作製・入手が困難で汎用性に問題がある。膨張性吸水性ポリマーを挿入する方法はいくつか報告されているが、我々の作製方法はこれらの報告とは異なる2つの特徴をもつ。以前の報告では厚さ 0.7mm のポリマーを使用していたが、我々は厚さを 0.8mm に増加させ再現性を担保し、ポリマーの形状をブレード状に切断することで挿入処置による脊髄損傷の発生率を著しく低減させた。加えて、CSM モデルラットの歩行能力の評価として CatWalk を用いることで、従来手術後 8-17 週間後で確認されていた CSM 進行が早期(5-10 週)に検出可能になった。
我々の CSM モデルラットは、ゾニサミド投与により C5-6 レベルの慢性的な頚髄圧
 迫に起因する脊髄運動神経細胞数の減少と錐体路の脱髄が抑制され、さらに歩行障害の進行抑制が見られた。我々は以前に野生型マウス由来の培養された脊髄運動神経細胞の過酸化物によって誘発された細胞死がゾニサミド処理によって抑制されることを報告している。マウス脳内ではゾ二サミド投与により Astrocyte が xCT を介して cystine を取り込み、2 つの cysteine を生成・分泌し、それを運動神経細胞が取り込むことで GSH の生成が促され、細胞が活性酸素種から保護されるメカニズムが過去に提案されている。我々は野生型ラット脊髄由来の astrocyte でも同様のゾニサミドの効果を確認している。このため、CSM モデルラットにおいてゾニサミドは脊髄前角に存在する Astrocyte の xCT の発現上昇を介して運動神経細胞に抗酸化物質 GSH の生成を誘導し、酸化ストレスなどに対して神経保護効果を発揮した可能性が高いと考えられた。

【結語】
 CSM の進行過程においてソニサミド投与により脊髄前角の astrocyte や運動神経細胞での xCT と Metallothionein 2A の発現上昇、脊髄運動神経細胞での GSH 発現上昇と神経細胞死の抑制が見られた。このことからゾ二サミドが脊髄において抗酸化作用をもち神経細胞を保護することで CSM において見られる歩行障害の進行を抑制することが予想された。この抑制作用によりゾニサミドはヒト CSM 治療薬となる可能性がある。

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