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大学・研究所にある論文を検索できる 「二次性眼内悪性リンパ腫の臨床的特徴と予後解析」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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二次性眼内悪性リンパ腫の臨床的特徴と予後解析

唐川, 綾子 東京大学 DOI:10.15083/0002002474

2021.10.15

概要

【緒言】
 眼内悪性リンパ腫は、脳中枢神経系へ60から80%と高率に進展し、眼科疾患の中で最も生命予後の悪い疾患の一つである。眼内悪性リンパ腫の臨床病型は、原発性眼内悪性リンパ腫と、二次性眼内悪性リンパ腫に分類される。原発性眼内悪性リンパ腫は、眼内悪性リンパ腫の78%を占め、眼内悪性リンパ腫が眼から脳へ進展しやすい臨床的特徴から、中枢性悪性リンパ腫の一亜型と考えられている。一方、二次性眼内悪性リンパ腫は、全身性のリンパ腫から眼に進展した病型を表すが、その臨床的特徴、進展過程、予後解析は明らかにされておらず、詳細な臨床像は未報告である。

【目的】
 中枢性悪性リンパ腫の一亜型とは異なる、二次性眼内悪性リンパ腫の臨床的特徴、進展過程、予後を明らかにすること

【方法】
 2002年1月~2016年1月に東京大学医学部附属病院眼科にて、眼内悪性リンパ腫と診断された71例に対し、東京大学医学部附属病院倫理委員会承認の下、臨床病型による分類を行い、病型別発生頻度を後方視的に解析し、二次性眼内悪性リンパ腫の頻度を明らかにした。次に、二次性眼内悪性リンパ腫と診断された20例について、初発部位、初発部位の病理組織学的解析、進展過程と臨床経過、進展形式による臨床病型分類、再発の有無と再発部位、治療法及び予後について後方視的に解析した。また、眼内悪性リンパ腫の硝子体液の病理組織学的検索は困難であるため、眼内悪性リンパ腫と診断された71例の内、眼以外の臓器での初発部位、再発部位の病理組織が入手可能であった症例についてCD10、BCL6、MUM1の免疫組織染色を施行し、Hans分類に従って、ABC-DLBCLとGCB-DLBCLに分類した。更に、入手可能であった眼以外の初発部位、再発部位の病理組織に対してMYC、BCL2、BCL6の免疫組織染色を行い、ダブルプロテイン発現、トリプルプロテイン発現の頻度を求めた。予後解析は、二次性眼内悪性リンパ腫20例について、二次性眼内悪性リンパ腫と診断されてからの全生存期間と無再発生存期間の生存曲線を作成し、3年生存率と3年無再発生存率を求めた。また、同一症例内で、二次性眼内悪性リンパ腫の初発部位、様々な再発病変、眼内病変のMYD88 L265P変異を有する1症例を報告し、眼内病変に対し、Digital PCR解析を用いてMYD88L265P変異の標的遺伝子解析を行った。

【結果】
 眼内悪性リンパ腫は、臨床病型により、二次性眼内悪性リンパ腫20例(28%)、中枢性悪性リンパ腫を伴う原発性眼内悪性リンパ腫18例(25%)、中枢性悪性リンパ腫を伴わない原発性眼内悪性リンパ腫33例(46%)に分類された。二次性眼内悪性リンパ腫の初発部位は、リンパ節7例(35%)、精巣5例(25%)、乳房2例(10%)で、その他が6例(30%)であった。病理組織学的解析では、DLBCL18例(90%)、intravascular large B-cell lymphoma1例(5%)、NK/T-cell lymphoma1例(5%)であった。
 二次性眼内悪性リンパ腫を発症した時、発生過程から、以下の3つのtypeに分類された。即ち、病変が眼のみに限局していたOcular isolated type12例(60%)、眼と同時に全身の病変を合併したSIOL with systemic lesions5例(25%)、眼と同時に脳の病変を合併したSIOL with CNS lesions3例(15%)であった。
 また、二次性眼内悪性リンパ腫の治療後にも進展をみとめた。Ocular isolated typeでは、脳に進展したのが3例(15%)、眼と脳に進展したのが2例(10%)、眼と全身に進展したのが2例(10%)、眼に進展したのが1例(5%)、全身に進展したのが1例(5%)、再発なしまたは死亡が3例(15%)であった。SIOL with systemic lesionsでは、眼に進展したのが1例(5%)、全身に進展したのが1例(5%)、再発なしまたは死亡が3例(15%)で、脳への進展はみとめられなかった。SIOL with CNS lesionsでは、全身に進展したのが1例(5%)、再発なしまたは死亡が2例(10%)であった。二次性眼内悪性リンパ腫20例の内、眼に進展したのは6例(30%)、脳に進展したのは5例(25%)、全身に進展したのは5例(25%)であった。また、二次性眼内悪性リンパ腫の治療後、複数回の再発を繰り返す症例もみとめられた。
 二次性眼内悪性リンパ腫20例の治療法は、治療が眼に限局していたのは4例(20%)、眼と全身の治療を行ったのは14例(70%)、全身の治療のみ行ったのは2例(10%)であった。眼への治療法と頻度は、メトトレキサート(MTXと記載)硝子体注射が15例(75%)、眼局所照射が3例(15%)であった。脳への進展を防ぐため、MTX大量静注療法が7例(35%)に施行され、全脳照射が2例(10%)に施行され、救済化学療法が6例(30%)に施行された。二次性眼内悪性リンパ腫と診断されてからの、3年生存率は60%、3年無再発生存率は27%と予後不良で短期間に再発していた。
 眼内悪性リンパ腫の初発部位、再発部位をHans分類に従い、ABC-DLBCLとGCB-DLBCLに分類すると、全体で29例(97%)がABC-DLBCLであり、臨床病型分類に関わらず、ABC-DLBCLが多数を占めた。また、眼内悪性リンパ腫の初発部位、再発部位のうち、ダブルプロテイン発現は21%、トリプルプロテイン発現は18%を占めていた。更に今回の研究で、同一症例内で、二次性眼内悪性リンパ腫の初発部位、様々な再発病変、眼内病変のMYD88L265P変異を認める症例を経験した。

【考察】
 これまで、原発性眼内悪性リンパ腫は脳中枢神経系に進展しやすい臨床的特徴から、中枢性悪性リンパ腫の一亜型と考えられてきた。一方、二次性眼内悪性リンパ腫の詳細な報告はなく、進展過程と臨床経過は不明であった。今回の研究では、二次性眼内悪性リンパ腫の進展過程と臨床経過、進展形式による臨床病型分類、予後を初めて報告し、二次性眼内悪性リンパ腫の詳細な臨床像を明らかにした。
 既報では、眼内悪性リンパ腫に占める二次性眼内悪性リンパ腫の割合は22%と報告されているが、今回の研究では、二次性眼内悪性リンパ腫の頻度は28%であり、眼内悪性リンパ腫の中でも、非常に稀ではなく一定の頻度で発症していた。また、二次性眼内悪性リンパ腫は、その進展過程から、Ocular isolated type、SIOL with systemic lesions、SIOL with CNS lesionsの3つのtypeに分類され、各typeに関わらず、治療後も眼、脳、身体に再発していた。
 また、二次性眼内悪性リンパ腫の初発部位として、精巣(25%)及び乳房(10%)の頻度が高かった。精巣及び乳房原発のリンパ腫は、中枢性悪性リンパ腫に進展しやすいことが報告されている。今回の研究では、精巣及び乳房原発のリンパ腫が中枢神経系のみならず、眼にも進展することを明らかにした。
 ダブルプロテイン発現、トリプルプロテイン発現をみとめるDLBCLは、予後不良で、MYC陽性のDLBCLは、中枢性悪性リンパ腫に進展しやすい可能性が示唆されている。今回の研究では、眼内悪性リンパ腫の初発部位・再発部位の免疫組織染色結果を初めて明らかにし、ダブルプロテイン発現は21%、トリプルプロテイン発現は18%を占めていた。このことから、MYC陽性のDLBCLでは中枢病変への進展だけでなく、眼病変の再発についても注意が必要である。
 近年、原発性眼内悪性リンパ腫に対し、眼局所治療と全身化学療法を行う新規治療法により、4年生存率が75~86%と著明に改善している。しかし、二次性眼内悪性リンパ腫に対する治療は、MTX化学療法およびリツキシマブ治療を行った症例報告はあるが治療成績は不良であり、有効な治療法は確立していない。原発性眼内悪性リンパ腫が高率に脳へ進展する特徴とは異なり、二次性眼内悪性リンパ腫は脳のみならず、眼や全身の臓器へ進展しており、これらの臨床経過や治療反応性を考慮すると、二次性眼内悪性リンパ腫には、中枢性と全身性の両方のリンパ腫治療の特徴を兼ね備えた治療が必要となる可能性がある。また、同一症例内でMYD88 L265P変異が初発部位、複数の再発病変、眼内病変で認められた二次性眼内悪性リンパ腫を経験した。MYD88変異は、精巣原発DLBCL(82%)や眼内悪性リンパ腫(69%)でも高率に認めており、今回の症例では、MYD88 L265P変異は、異なる組織及び組織型で共通して検出された。

【結論】
 本研究では、詳細が未報告の二次性眼内悪性リンパ腫の臨床的特徴、予後を後方視的に解析し、二次性眼内悪性リンパ腫の詳細な臨床像を明らかにした。二次性眼内悪性リンパ腫は28%と、眼内悪性リンパ腫の中で一定の頻度を占めた。二次性眼内悪性リンパ腫は、その進展形式により3つのtypeに分類された。二次性眼内悪性リンパ腫の初発部位としては、精巣(25%)及び乳房(10%)の頻度が高く、精巣及び乳房原発のリンパ腫が中枢神経系のみならず、眼にも進展することを明らかにした。二次性眼内悪性リンパ腫は短期間で度々再発しやすく予後不良であり、脳のみならず、眼や全身に進展することが明らかになった。
 近年の新規治療法により、原発性眼内悪性リンパ腫の予後が改善されたが、二次性眼内悪性リンパ腫に対する有効な治療法の確立が急務であり、現在、新規化学療法による前向き研究を計画している。

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