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大学・研究所にある論文を検索できる 「Analysis of macular curvature in normal eyes using swept-source optical coherence tomography」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Analysis of macular curvature in normal eyes using swept-source optical coherence tomography

Minami, Sou 南, 想 名古屋大学

2020.04.02

概要

【緒言】
 強度近視は我が国の失明原因の上位を占める重要な疾患の一つである。また近年は情報化社会における視覚環境の変化に伴い、近視人口は世界的に増加傾向にある。この強度近視で起きる形態異常には眼底後極部の突出した変形がその特徴である後部ぶどう腫がある。後部ぶどう腫では、眼球後極部の一部が進展することで網脈絡膜萎縮や脈絡膜新生血管、牽引性黄斑症などの様々な病態を合併する。後部ぶどう腫の定量的評価方法としては、光干渉断層計(OCT)画像における後部ぶどう腫の突出部の高さを計測する方法が報告されている。一方で、OCT装置の技術的進歩に伴い強度近視における後極部の形状評価が最近になりより容易になってきた。その進歩の結果生まれたスウェプトソース光干渉断層計(SS-OCT)では従来のスペクトラルドメイン光干渉断層計(SD-OCT)に比べ、一枚のスキャン画像でより広い範囲を描出可能である。また光源が長波長のSS-OCTはSD-OCTに比べ組織深達性に優れ、眼底のより深部まで描出可能であり、従来のSD-OCTでは評価の困難であった網膜組織よりも深部に位置する脈絡膜層や強膜組織をSS-OCTを用いることでより正確に評価することが可能になった。SS-OCTを用いることで、これまでよりもより広い範囲、より深部までの眼底の形状を確認することができるようになったのである。
 近年、SD-OCTで撮影された画像を用いて眼底の湾曲率を直接計測する新規の手法も報告されたが、この報告ではSD-OCTを用いていたため、計測光の深達度不足から計測が網膜色素上皮(RPE)の湾曲計測のみに留まっており、それよりも深層の湾曲は計測されていなかった。また、この報告を含むこれまですべての眼底の湾曲、後部ぶどう腫評価についての報告には、OCT装置本体によって引き起こされる画像の歪みが補正されていない、という大きな問題があった。

【目的】
 そこで、今回我々は、SS-OCTを用いて正常眼の眼底の湾曲をRPEと脈絡膜/強膜境界面(CSI)の両方で計測し、正常眼の眼底形状を調べ、定量的に評価を行った。評価に際しては、光学シミュレーションから計算された湾曲補正ソフトウェアによりOCT装置本体や眼球における光の通過中に起きる屈折により発生する画像の歪みが補正された画像を用いて測定を行った。さらに、RPE及びCSIの湾曲に関連する因子についても調べた。

【対象と方法】
 本研究では、健常な被験者29名の両眼及び名古屋大学医学部附属病院眼科を受診した患者19名の健側眼の計77眼のSS-OCT画像を用いて研究を行った。近視性脈絡膜新生血管、近視性脈絡膜萎縮、近視性網膜分離症、加齢黄斑変性症等の脈絡膜厚と関連する疾患や、眼軸長が28mm以上または等価球面度数-8.0ジオプター以下の強度近視は除外した。計測には中心窩を中心とした垂直方向と水平方向のスキャン長16mmのラインスキャン画像をそれぞれ用いた。まずこれらのSS-OCT画像における眼底の縦横比、光学歪みを補正した後、RPE及びCSIの湾曲の曲率を計測した。計測時には、中心窩を中心として、垂直方向の画像を上方・中央・下方、水平方向の画像を耳側・中央・鼻側として各長さ4mm幅になるよう3つに区分し、それぞれの湾曲の曲率の平均値を計算し、それぞれの区画同士を比較検討した。また、垂直方向と水平方向の全6区画を含めた全体の平均の湾曲の曲率を計算し、関連する因子について調べた。中央の区画においては、RPEの湾曲の曲率とCSIの湾曲の曲率の差分と脈絡膜厚との関連性を調べた。

【結果】
 RPEの湾曲の曲率は、垂直方向においては上方・中央・下方はそれぞれ、16.6±3.1, 13.8±2.1, 17.7±3.2(x10-5[1/µm])であり、水平方向においては耳側・中央・鼻側はそれぞれ、17.2±2.3, 15.2±2.5, 18.8±2.7(x10-5[1/µm])であった。RPEの湾曲は中央の区画が周囲の全ての区画と比べて有意に平らであった。RPEの中央の区画における垂直方向と水平方向の湾曲の曲率には有意な差は見られなかった。CSIの湾曲の曲率は垂直方向においては上方・中央・下方はそれぞれ、17.8±3.0, 13.8±3.3, 18.4±3.3(x10-5[1/µm])であり、水平方向においては耳側・中央・鼻側はそれぞれ、18.3±2.7, 16.7±2.9, 14.4±2.9(x10-5[1/µm])であった。垂直方向では中央の区画が上方と下方の区画に比べて有意に平らであった一方で、水平方向では鼻側の区画が中央と耳側の区画に比べ有意に平らであった。CSIの中央の区画においては水平方向の中央の区画の方が、垂直方向の中央の区画に比べて有意に大きく湾曲していた。また、全体の平均の湾曲の曲率と関連する因子としては、RPEの湾曲の曲率はCSIの湾曲の曲率と有意に正の関係を認め、脈絡膜厚と眼軸長と有意に負の関係を認めた。一方でCSIの湾曲の曲率は眼軸長と有意に負の関係を認めた。中央の区画においてはRPEの湾曲の曲率とCSIの湾曲の曲率の差分は脈絡膜厚と有意に関係しており、黄斑部脈絡膜厚が薄いほどCSIの湾曲に対するRPEの湾曲がより大きかった。

【考察】
 RPEの湾曲は中央の区画が最も平らで周辺の区画の湾曲が強くなる対称的な形状をしていたのに対し、CSIの湾曲では垂直方向では上方と下方に差は見られないが、水平方向では鼻側の方が平らな非対称的な形状をしていた。また、CSIの湾曲が眼軸長と関係していた一方で、RPEの湾曲は眼軸長のみでなくCSIの湾曲、脈絡膜厚とも関係していた。このことから、眼底後極部における脈絡膜組織の分布がRPEの湾曲に影響していると考えられた。既報において、脈絡膜厚は視神経乳頭の周囲で薄くなっていることが報告されているが、今回の結果から、非対称的なCSIの湾曲が、脈絡膜が不均等に分布することによって対称的なRPEの湾曲をもたらしていることが示唆された。これにより眼内への入射光は黄斑部のより広い範囲で垂直に網膜視細胞へ達することになり、結果として黄斑部でのスタイルス・クロフォード効果がより広範に作用し、より良好な視機能へ貢献していると考えられる。また、眼軸長は角膜曲率半径と正の相関があることが報告されているが、今回の結果ではRPEとCSIの湾曲のどちらも眼軸長と負の相関が見られたことから、眼軸長が長くなる程に球体としての眼球の大きさが大きくなっていると考えられた。これは、強度近視において眼底後極部の後部ぶどう腫の進展が眼軸長の増加と正の相関関係があることとは対照的な結果となった。

【結語】
 今回、我々は眼底後極部のRPEの湾曲の曲率の測定に加え、これまで測定されていなかったCSIの湾曲の曲率を測定した。測定の際にはOCTを用いて撮影した場合に発生する画像の歪みを補正した。黄斑部の湾曲のみでなく周辺部の湾曲も測定し各部位の湾曲の関係性を調べた。RPEの湾曲は中心部が最も平らな対称的な形状であったのに対し、CSIの湾曲は視神経乳頭の存在する鼻側が平らな非対称的な形状をしていた。RPEの湾曲は、脈絡膜と強膜の分布と構造が影響していることが示された。眼底湾曲の計測により、後部ぶどう腫の正確な評価が可能であり、それにより強度近視性合併症の危険因子のより正確な推定が可能になると考えられた。

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