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爆轟法ナノダイヤモンドの産業応用を目指した材料の開発

間彦, 智明 神戸大学

2021.03.25

概要

ダイヤモンドは宝石の代表格としてよく知られる材料であるだけでなく、機能面においても、地球上で最も硬く、どんな金属よりもよく熱を伝え、電気を通さず、高屈折率を併せ持つュニークな材料として知られ、その硬度を生かして工業用ダイヤモンドは研磨剤や切削工具向けに幅広く使われてきた歴史がある。そして近年新たな研究対象としてナノサイズのダイヤモンドであるナノダイヤモンド( ND) に大きな注目が集まっている。NDは単にそれらの特徴をもった小さなダイヤモンドというだけでなく、想像の範囲を超えた特性や機能を発現するためである。NDの製法として最も効率的な製法が爆薬を原料に用いる爆磔法であり、 爆踫法で合成されたN D は爆淼法ナノダイヤモンド( Detonation Nano Diamond : DND)と呼ばれる。本論文ではDNDの事業化を加速するため事業と技術の両面で研究を行いその結果をまとめた。

序論では、本論文の背景としてナノダイヤモンドの特徴および開発の歴史について述べた。DNDは直径5 nm程度の世界最小レベルのナノ粒子であり、ダイヤモンドの化学的安定性とその形状( 球形) に由来して毒性は極めて低く、豊富な表面官能基を持つために表面コントロールが可能であり表面電位の制御やさまざまな溶媒への分散性付与ができるといった優れた特徴をもつ。一方でこの材料は1960年代の旧ソ連で開発された比較的歴史の古い材料であるが、今日ナノ炭素材料として盛んに研究が行われているカーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレンなどと比較して認知度が低く、アカデミックの領域において盛んに研究が行われてきたものの、産業利用を前提とした研究開発はほとんど行われてこなかった。株式会社ダイセル( 以下、当社) ではDNDの優れた特徴に着目し、当社保有技術との親和性も非常に高かったことから、DNDの産業応用を目指して2014年に播磨工場 ( 兵庫県、たつの市) に爆斑試験設備を建設し、生成プロセスの構築ならびに産業応用に向けた研究開発を進めている。

第2章では、DNDのメーカーが複数存在し市場が立ち上がろうとする中で、当社が競争優位性を構築し事業化を成し遂げることを目的に「事業」「技術」Γ知財j「財務」の観点で各戦略を検討した。事業戦略の中で基本的な方針と先進的なイノベーション・アイデアの候補として、DNDでは「半導体集積回路実装技術へのDNDの応用」への可能性が発想され、バイオアプリケーションへの貢献が期待されるSiVセンターを有する蛍光ナノダイヤモンド( Si V- N D) では「医療用電子デバイス応用Jと「生体情報センシング応用Jの発想が得られた。そして各種フレームワーク分析を行うことでヘルスケア分野におけるSiV-NDのポテンシャルを確認し、さらに技術戦略、知財戦略、財務戦略の中で具体化を検討し基本方針を得た。それら成果の概要をイノベーション・ストラテジー研究成果書にまとめ、本論文ではその概要を記載した。

第3章では、電子デバイス分野への応用の具体例として半導体集積回路3次元実装技術 へのDNDの応用に関する研究内容ついて記載した。半導体集積回路を縦方向に連結するためにTSV (Through SiliconX^a)配線技術が用いられる。

この配線形成プロセスでは電気銅めっきが用いられるが、直径1桁zzmスケールの微細なビアをボイドなく銅で充填する技術が求められる。過去に得た、貴金属めっきにおいて DNDを複合することでめっき表面の平滑性が向上する知見を活かして、TSVプロセス用の銅めっき添加剤としての応用開発に取り組んだ。先行研究からDNDはめっき浴の中で塩析効果を受けて沈降し分散性を保つことができないことが明らかであったため、本研究では水溶性修飾ナノダイヤ( ダイセル製) を用い、銅めっき浴中においてDNDを安定分散させた上で銅めっきを行った。この結果、銅めっきにおいてもDNDとの複合によって、表面凹凸が数μmにまで平滑化されることを確認した。

さらにDND複合した銅めっき膜の特性評価を進め、DNDを添加していないめっき膜と比較して、セルファニールによる結晶子サイズの増大を経時的に抑制する性質があることをXRDや電子顕微鏡観察により確認した。これは電子材料として梃れた特長・特性である。TSV配線パターンやシリコン孔の埋込みによる実験的確認に向けた継続的な取り組みが必要であるが、銅のセルファニール応力による配線ストレス緩和に貢献できる可能性を示す結果を得た。また、DNDを添加して得られた電気銅めっき膜では、無添加の銅めっき膜とDNDは絶縁物であるために、DNDの添加は銅の導電性を低下させる恐れがあったが、DND複合した銅めっき膜において導電性はわずかに改善された。これはめっき表面の平滑性が向上したことで、表面抵抗計測プローブとの接触抵抗が低減された効果と推察される。また銅めっき膜中においてDNDは銅めっき膜の最表面( 表面から40 nm程度) に偏析することがXPS計測から明らかになっており、内部にDNDが存在しないことで全体として銅の体積抵抗率は増加せず、良好な導電性が維持されたと考察した。実用化に向けてはTSVパターンにおける銅の埋め込みによって検証を行う必要があるが、本研究では初期的検証として銅めっき用添加剤としてDNDの可能性を示すことができた。

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参考文献

第 1 章 参考文献

1) 戸倉 和, 精密工学会誌, Vol. 78, No. 3 (2012).

2) F. Bundy, et al., Nature, 176, 51-55 (1955).

3) 米国宝石学会 GIA ホームページ, https://www.gia.edu/JP/news-research-cvd-grown-part1

4) H. Watanabe, J. Vac. Soc. Jpn, Vol. 52, No. 6 (2009).

5) E. Neu, et al., App. Phys. Lett. 98, 243107 (2011).

6) V. V. Danilenko, “Some aspects of synthesis of detonation nanodiamond”, MRS2013.

7) エネルギー物質ハンドブック, 共立出版 (1999).

8) V. V. Danilenko, Combustion Explosion and Shock Waves, Vol. 41, No. 5, 577-588 (2005).

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10) V. Yu. Dolmatov, et al, Journal of Superhard Materials, Vol. 35, 143–150 (2013).

11) V. Yu. Dolmatov, et al, Journal of Superhard Materials Vol. 35, 77–82 (2013).

12) 一般社団法人 科学技術振興機構, https://www.jst.go.jp/stpp/q-leap/#

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17) S. Nioka, B. Chance, Tech. in Can. Res. & Treat., Vol. 4, 5, 497.

第 2 章 参考文献および引用

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2) 井上達彦, ゼロから作るビジネスモデル,東洋経済新報社, 2019.

3) Clayton M. Christensen, イノベーションのジレンマ, 翔泳社.

4) ジョアン・マグレッタ, マイケル・ポーターの競争戦略, 早川書房

5) Jay B. Barney、企業戦略論【基本編】ダイヤモンド社

6) Yuto Makino, Tomoaki Mahiko, et al., Diamond and Related Materials, Vol. 112, 108248 (2021).

7) 入山章栄 著、世界標準の経営理論、ダイヤモンド社、2019

8) 丸島儀一、知的財産戦略、ダイヤモンド社、2019

9) 小河紘一、「オープン&クローズ戦略」、翔泳社、第 2 版、2019

第 3 章 参考文献

1) M. Aoyanagi, et al., Synthesiology, Vol. 9, No. 1(2016). 2)傳田精一著, 半導体の 3 次元積層技術, CQ 出版社

3) D. Malta, Handbook of 3D Integration, Volume 3: 3D Process Technology (Wiley, Hoboken, NJ, 2014), chap. 5, p. 65.

4) 傳田精一, 貫通電極とめっき技術, Electrochemistry, 79 巻 3 号 (2011).

5) A. Radisic, O. Lühn, H. G. G. Philipsen, Z. E. Mekki, M. Honore, S. Rodet, S. Armini, C. Drijbooms, H. Bender, and W. Ruythooren, Microelectron. Vol. 88, Issue 5, 701-704, (2011).

6) Y. Guan, Q. Zeng, and J. Chen, 18th Int. Conf. on Electronic Packaging Technology, 2017.

7) R. Furuya, C. Fan, O. Asai, and K. Suzuki, IEEE 63rd Electronic Components and Technology Conf. (2013).

8) W.-P. Dow, H.-H. Chen, M.-Y. Yen, W.-H. Chen, K.-H. Hsu, P.-Y. Chuang, H. Ishizuka, N. Sakagawa, and R. Kimizuka, J. Electrochem. Soc. 155, 750 (2008).

9) 電気鍍金研究会編, 現代めっき教本, 日刊工業新聞社 (2011).

10) M. Stangl, M. Lipták, A. Fletcher, J. Ackerad, J. Thomas, H. Wendrock, S. Oswald, and K. Wetzig, Microelectron. Eng. 85, 534 (2008).

11) M. Stangl and M. Militzer, J. Appl. Phys. 103, 113521 (2008).

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13) H. Matsubara, J. Surf. Finishing Soc. Jpn. 65, 88 (2014), [in Japanese].

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15) M. Nishikawa, H. Takeuchi, and N. Matsuno, Japan Patent 101382 (2017).

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17) L. Zhao, Y.-H. Xu, T. Akasaka, S. Abe, N. Komatsu, F. Watari, and X. Chen, Biomaterials 35, 5393 (2014).

18) N. Komatsu and L. Zhao, in Carbon Nanoparticles and Nanostructures, 139-159, ed. N. Yang, X. Jiang, and D.- W. Pang,(Springer, Cham, 2016).

19) N. Komatsu and M. Ito, Japan Patent 5275088 (2013).

20) N. Komatsu and M. Ito, Japan Patent 080805 (2012).

21) Y. Kotani, Kyoto Municipal Institute of Industrial Technology research paper, No. 5 (2015).

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