Development of Amine-Catalyzed Asymmetric Reactions of Aldehydes with Alkynyl Z-Ketimines
概要
アミン有機触媒を用いたイミンとの反応は、光学活性な含窒素化合物を合成する上で重要な反応であり、盛んに研究されてきた。しかし、イミンの中でもケトン由来のケチミンを不斉触媒反応に利用した例は限られている。その理由として、ケチミンの反応性の低さが挙げられる。また、もう一つの理由として、ケチミンの立体異性体の存在が挙げられる。ケチミンには窒素上の保護基の向きの異なるE体とZ体の異性体が存在する。不斉触媒はケチミンの保護基あるいは窒素上のローンペアと相互作用することで、ケチミンの反応面を制御している。そのため、立体異性体の混合物となるケチミン、例えばイミン炭素が二つのアルキル基で置換されたケチミンや、アルキル基とアルケニル基で置換されたケチミンを不斉触媒反応に適用した例はいまだに報告されていない。そこで申請者は、イミン炭素がアルキニル基で置換されたケチミンを、これらのアルキル基で置換されたケチミンの合成等価体として利用することとした。アルキニル基は立体的に小さい、電子求引性の置換基であるため、アルキル基で置換されたケチミンよりも高い反応性を示すことが期待される。また、このケチミンはZ体選択的に得られるため、不斉反応に適した基質と考えられる。検討の結果、二級アミン触媒によるアルキニル基とアルキル基で置換されたケチミンとアルデヒドとの不斉M annich反応、およびアルキニル基を有するα,β-不飽和ケチミンへのアルデヒドの不斉共役付加反応の開発に成功した。また後者の研究において、アルキニル基を有する α,β-不飽和ケチミンがエノンの合成等価体として利用できることを見出した。以下にその概略を示す。
①不斉触媒存在下、プロキラルなケチミンにエナミンを作用させると、光学活性なα- tert-アミン部位を有するβ-アミノアルデヒドが合成できる。しかし不斉反応へ適用可能なケチミンの構造は、イミン炭素上の二つの置換基の形状が大きく異なるものに限られており、形状の似た二つのアルキル基で置換されたケチミンを用いた反応は報告例が少ない。そこで、その合成等価体としてアルキニル基とアルキル基を有するケチミンを利用した。その結果、二級アミン触媒による高立体選択的な不斉Mannich反応を達成した。また、この反応ではシン体とアンチ体の二つのジアステレオマーが生じうるが、二種類の二級アミン触媒を使い分けることで、Mannich生成物のシン体およびアンチ体それぞれの高立体選択的な合成を達成した。
②アミン触媒によるアルデヒドの電子不足オレフィンへの不斉共役付加反応において、β位に置換基を有するエノンの中で、電子求引基としてケト基のみを有したエノンは反応性が低いため、共役付加反応に利用することは困難である。そこで、申請者はこれらのエノンの合成等価体としてイミン炭素がアルキニル基とアルケニル基で置換されたケチミンに着目した。酸によって活性化されたケチミンは対応するエノンよりも高い求電子性を示すことが期待される。その結果、酸性官能基を有する二級アミン触媒を用いた、アルデヒドのα,β-不飽和ケチミンへの高立体選択的な共役付加反応を達成した。