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書き出し

京都大学複合原子力科学研究所「第57回学術講演会報文集」

京都大学

2023.02

概要

ISSN 2434-1088

KURNS-EKR-17
PRINT ISSN 2434-6209
PRINT KURNS-KR-5

京都大学複合原子力科学研究所
「第 57 回学術講演会報文集」
Proceedings of the 57th KURNS Scientific Meeting

開催日:令和 5 年 2 月 14 日、15 日
(February 14 & 15, 2023)

京都大学複合原子力科学研究所
Integrated Radiation and Nuclear Science, Kyoto University

第 57 回京都大学複合原子力科学研究所学術講演会プログラム
開催日: 令和 5 年 2 月 14 日(火) 10:00 ~ 17:20
2 月 15 日(水) 10:00 ~ 15:10
依頼講演 : 京都大学複合原子力科学研究所 大会議室
Zoom ウェビナー ハイブリッド開催
一般講演 : Zoom ブレイクアウトルームによるオンライン開催
2 月 14 日(火)15:50~17:20
セッション A(15:50~16:20)
セッション B(16:20~16:50)
セッション C (16:50~17:20)
2 月 14日(火)10:00~17:20
開会の挨拶

(10:00~10:10) 所長 中島 健

新人講演
N1) 10:10~10:50

座長 田中 浩基

高放射線 CIGS 太陽電池技術を用いた自立駆動形放射線検出素子の1F 適応研究

········

1

······························

4

原子力基礎工学研究部門(核変換システム工学研究分野)
奥野 泰希

新人講演
N2) 10:50~11:30

座長 高宮 幸一

レーザーによる放射性核種内包フラーレンの生成実験
粒子線基礎物性研究部門(同位体利用化学研究分野)
稲垣 誠

トピック講演
T1) 11:30~12:10
座長 髙田 卓志
世界初の臨床用 BNCT 治療計画システムの検証と
独立モンテカルロ線量計算システムとの比較 ················ 6
粒子線腫瘍学研究センター(粒子線腫瘍学研究分野)
呼 尚徳

(休

憩) 12:10~13:10

i

新人講演
N3) 13:10~13:50

座長 日野 正裕

PHITS シミュレーションを用いた加速器熱中性子源開発と新型炉冷中性子源検討 ......
粒子線基礎物性研究部門(中性子応用光学研究分野)
中村 吏一朗

7

新人講演
N4) 13:50~14:30

座長 鈴木 実

伴侶動物への BNCT 適応に向けた生体の放射化による周囲環境への影響についての検討 10
粒子線腫瘍学研究センター(粒子線腫瘍学研究分野)
和田 悠佑
特別講演
S1) 14:30~15:30

座長 鈴木 実

ホウ素中性子捕捉療法のための生物影響研究 .................................... 12
原子力基礎工学研究部門(放射線管理学研究分野)
木梨 友子

(休

憩) 15:30~15:50

一般講演

2 月 14 日 15:50~17:20
セッション A(15:50~16:20)
No.1) 新規抽出剤を用いた硝酸溶液からのユーロピウムとテルビウムの溶媒抽出特性 ··················· 15
○池野将矢、加藤千図、福谷哲 1、松村達郎 2、藤井俊行
(阪大院工、京大複合研 1、日本原子力研究開発機構 2)
No.2) 岩石標準試料中のガリウム濃度 ···················································· 16
○加藤千図、福谷哲 1、藤井俊行(阪大院工、京大複合研 1)
No.3) X 線小角散乱法を用いた潤滑油添加剤分子の構造解析 ······························· 17
○平山朋子,南保壮平,山下直輝,高嶋頼由 1,佐藤信浩 2,杉山正明 2
(京大院工,出光興産 1,京大複合研 2)
No.4) ガンマビーム誘起陽電子測定によるバルク金属中での照射欠陥と水素相互作用に関する研究 ····· 18
○荒木翔太 1、平山翔太 1、徐虬 2、平義隆 3、堀史説 1
(阪公大院工 1、京大複合研 2、分子研 3)
No.5) 超薄多層膜と中性子集光ミラー開発の現状 ·········································· 19
○日野正裕、吉永尚生、中村吏一朗、小田達郎 1、細畠拓也 2、竹田真宏 2、山形豊 2、

ii

遠藤仁 3 (京大、東大 1、理研 2、高エネ機構 3)
No.6) BeO 光刺激ルミネセンス線量計を用いた BNCT 照射場中のγ線線量評価 ·················· 20
○松林錦、高田卓志 1、呼尚徳 1、笹木彬礼、武川哲也 2、菅啓大 2、櫻井良憲 1、田中浩基 1
(京大院工、京大複合研 1、住友重機械 2)
No.7) 板状燃料要素内気液二相流ボイド率の予測研究 ········································· 21
○沈秀中、山本俊弘、中島健、日引俊詞 1 (京大複合研、香港城市大学 1)
No.8) 原子炉、線形加速器、および放射光を用いた多元素メスバウアー分光の現状と
産業利用に向けた取組
1

1

········· 22
1

○北尾真司、小林康浩、黒葛真行、瀬戸誠、田嶋寛介 、山下拓之 、太田英寿 、
窪田卓見 2、増田亮 3 (京大複合研、京大理 1、京大環境安全 2、弘前大理工 3)

セッション B(16:20~16:50)
No.1) オルトバナジン酸ナトリウム溶液中のバナジウムイオンの酸化還元挙動 ················ 23
〇横山裕己、上原章寛 1 、 和田直也、杉山廉樹、元谷拓真 2 、 加藤千図、 藤井俊行
(阪大院工、量研 1 、阪大工 2 )
No.2) 新規抽出剤を用いた硝酸溶液からのアンチモンの溶媒抽出特性 ························ 24
○齋賀忠也、加藤千図、福谷哲 1、松村達郎 2、藤井俊行
(阪大院工、京大複合研 1、日本原子力研究開発機構 2)
No.3) 中性子位相イメージング法による金属積層造形物中の欠陥観察 ························ 25
関義親 、日野正裕 1、中村吏一郎 1、 篠原武尚 2、平山朋子 3
(東北大 多元研 、京大複合研 1、原子力 機構 J-PARC2、京大 院工 3)
No.4) 腫瘍内環境応答因子をターゲットとした放射線増感効果の解析 ························ 26
○真田悠生、髙田卓志、田中浩基、櫻井良憲、渡邉翼 (京大複合研)
No.5) BNCT のためのイメージングプレートを用いた熱中性子束評価························· 27
○野尻摩依 1、高田卓志 2、櫻井良憲 2、鈴木実 2、田中浩基 2
(京大院工 1、京大複合研 2)
No.6) 超高線量場における光ファイバーを介した線量モニタの開発 ·························· 28
○黒澤俊介 1,2,3、田中浩基 4、高田卓志 4、松倉大佑 2,5、藤原千隼 2,5、石澤倫 2、山路晃広 1,2、
小玉翔平 6
(東北大 NICHe1、東北大金研 2、阪大レーザー研 3、京大複合研 4、東北大工 5、埼玉大理工 6)
NO.7) ヒト水晶体内αA-クリスタリン中 Asp151 の迅速な異性化と、その影響 ················· 29
○菅河晴菜 1、髙田匠 (京大複合研、京大院理 1)
No.8) 中性子結晶解析による蛋白質水和構造の検討 ······································· 30
○茶竹俊行、田中伊知朗 1、日下勝弘 1、角南智子 2、藤原悟 2
(京大複合研、茨城大 1、量研機構 2)
No.9) 野生型大腸菌に対する放射線耐性進化大腸菌の遺伝子発現量の変化 ··················· 31
○齊藤毅(京大複合研)

iii

セッション C(16:50~17:20)
No.1) GSJ 岩石標準試料中のガリウム同位体比 ············································ 32
○麻生陸也、加藤千図、福谷哲 1、中田亮一 2、永石一弥 3、若木重行 2、藤井俊行
(阪大院工、京大複合研 1、JAMSTEC 高知 2、マリン・ワーク・ジャパン 3)
No.2) バナジウムの酸化還元反応に及ぼすマロン酸の影響 ·································· 33
○杉山廉樹、上原章寛 1、和田直也、横山裕己、元谷拓真 2、加藤千図、藤井俊行
(阪大院工、量研 1、阪大工 2)
No.3) 化学交換法における同位体分別研究 ················································ 34
○硲隆太、義本孝明、Kumsut Pantiwa、Rittirong Anawat4、佐久間洋一 1、藤井俊行 2、福谷哲 3、
芝原雄司 3(大産大、東工大原子炉 1、阪大工 2、京大複合研 3、阪大RCNP4)
No.4) Zr,Ce 酸化物固溶体の固相状態に基づく溶解挙動の解釈 ······························ 35
○佐藤侑太郎, 小林大志, 佐々木隆之, 池田篤史 1,松村大樹 1,元川竜平 1
(京大院工, JAEA1)
No.5) 水素イオン照射と高温アニールで形成される Si 中のナノボイドの陽電子ビーム評価······ 36
○廣江真俊 1,2、木野村淳 2、宇田欽治 3、鈴木耕拓 3、堀利彦 4、満汐孝治 4 真鍋征也4 、 松本 哲郎4
(京大院工 1、京大複合研 2、若狭湾エネ研 3、産総研 4)
No.6) 大気エアロゾル微小粒子の金属成分の粒径分布 ······································ 37
○伊藤憲男、溝畑朗(大阪公立大学)
No.7) ヒト水晶体内βB1-クリスタリン異常凝集体内部 Asp 異性化の増加 ····················· 38
○加賀澤悠太 1、金仁求、髙田匠(京大複合研、京大院理 1)
No.8) 加速器 BNCT における中性子強度変調照射法による線量分布形成の研究 ················· 39
○笹木彬礼、呼尚徳 1,2、高田卓志 1、松林錦、櫻井良憲 1、鈴木実 1、田中浩基 1
(京大院工、京大複合研 1、大阪医科薬科大 2)
No.9) トライボロジー現象解明に向けた中性子反射率測定による潤滑油/金属界面の
ナノ構造解析 ·········· 40
1

1

○山下直輝、平山朋子、日野正裕 (京大院工、京大複合研 )
2 月 15 日(水) 10:00~15:10
トピック講演
T2) 10:00~10:40

座長 伊藤 啓

過酷条件下における熱流動現象の中性子イメージング ································ 41
安全原子力システム研究センター(熱エネルギーシステム研究分野)
伊藤 大介
プロジェクト研究成果講演
PJ1) 10:40~11:20

座長 伊藤 啓

中性子イメージングプロジェクト ················································ 43
安全原子力システム研究センター(熱エネルギーシステム研究分野)
齊藤 泰司
iv
−iv−

プロジェクト研究成果講演
PJ2) 11:20~12:00

座長 高田 卓志

BNCT に関する総合的線量評価システムの高度化 ····································· 46
粒子線腫瘍学研究センター(粒子線医学物理学研究分野)
櫻井 良憲
(休

憩)12:00~13:00

特別講演
S2) 13:00~14:00
座長 八島 浩
環境放射能をはじめとする環境科学の研究

······································

51

原子力基礎工学研究部門(放射線管理学研究分野)
五十嵐 康人

特別講演
S3) 14:00~15:00

座長 三澤 毅

原子炉とともに ······························································· 54
原子力基礎工学研究部門(研究炉安全管理工学研究分野)
中島 健
閉会の挨拶(15:00~15:10) 所長 中島 健

v

(N1)高放射線 CIGS 太陽電池技術を用いた自立駆動形放射線検出素子の1F 適応研究
(京大複合研、JAXA1、AIST2、木更津高専 3、理研 4、QST5、東北大学 6)
○奥野泰希、今泉充 1、上川由紀子 2、岡本保 3、小林知洋 4、牧野高紘 5、笠田竜太 6
1.はじめに:
本福島第一原子力発電所(1F)の原子炉格納容器
(PCV)から燃料デブリを取り出し、1F の廃炉を効率
的に進めるためには、PCV 内の放射線源および 線量
率の分布を知り、適切な除染や放射線遮蔽措置を行
って、作業者の安全性を確保するとともに、廃炉に
使用する装置類の耐放射線性等の最適化をする必要
がある。またデブリ移動に伴う不測の再臨界が生じ
る可能性も懸念されており、ガンマ線だけでなく、
アルファ線や、中性子線の検出も重要視されている。
これまで、東京電力ホールディングスや国際廃炉研
究開発機構により、
遠隔操作ロボット等を用いた PCV
内部調査が各号機に対して行われ、これらに搭載し
た放射線センサー等により、線量率分布の実測がな
されてきた。PCV へのアクセスは長距離の移動、水環
境、高レベル放射線環境のため主にロボットや、ア
クセスポートを用いて行われる。しかし、線量計に
は小型化・軽量化・省電力化が求められており、使用
できる線量計には限りがあるため、放射線分布の情
報は、時間的にも空間的にも断片的である[1]。
線量情報が取得できない主な要因として、炉内での
電源供給の不足、アクセスできる形状や重量の制限、
広い線量率範囲および、高線量環境下での損傷など
が挙げられる。また、線量分布を把握することは、取
り出し作業前の燃料デブリ位置や汚染箇所の把握だ
けでなく、取り出し作業中の構造物の移動やデブリ
の反応による線量分布の変化に伴う被ばく事故およ
び運用中の装置の放射線障害を防止するために重要
である。そのため、今後、20−30 年以上続く廃炉措置
を安全に遂行するため、ロボットなどへ装着するリ
アルタイム線量測定だけでなく、長期間の定点観測
型マッピング線量測定の需要が強く求められている。
太陽電池は、自立駆動する光電変換素子として知
られている。太陽電池は、半導体で構成されるデバ
イスであるため、放射線が入射した場合も、放射線
のエネルギーから電子正孔対を生成することで発電
することが知られている。シリコン太陽電池の先行
研究では、Co-60 ガンマ線の線量率に対して線形的
に増加する電流が確認されており、放射線検出器と
して使用できる特性を有している。しかし、シリコ
ン太陽電池は、放射線耐性が低く、PCV で想定される
最も高い線量率 1 kGy/h の様な環境では、数時間で
信号の劣化が生じることが予測されており[2]、放射
線耐性の向上が課題である。人工衛星などに使用さ
れる宇宙用太陽電池では、バンアレン帯等の宇宙放
射線から照射損傷に耐える必要があるため、シリコ
ン太陽電池に変わる高い放射線耐性の太陽電池が開
発されてきた。その中でも CIGS 太陽電池は、電子線
においては、ほとんど劣化しない極めて高い放射線

-1-

耐性を有している[3]。ガンマ線環境中での劣化の要
因は、電子線から放出される 2 次電子が原子核へ衝
突することによるはじき出しによって格子欠陥が生
成することが要因であると考えられている。そのた
め、電子線照射環境でほとんど劣化しない CIGS 太陽
電池は、ガンマ線環境中で長時間安定した動作が可
能な放射線検出素子であることが期待される。
本研究では、PCV 内のリアルタイム・マッピング測
定を目的として高放射線耐性の高放射線耐性を有す
る CIGS 太陽電池を利用した長期運用型のガンマ線
観測システムの検出特性を解明する。
2.実験:
2.1 CIGS 太陽電池の作製:
図1に CIGS 太陽電池を用いたガンマ線センサの試
作機を示す。CIGS 吸収層は,3 段階のプロセスで
Mo バックコンタクト上に成長させた.ステージ I、
II、および III の基板温度は、それぞれ 350、400、
および 400℃に設定した。CIGS 吸収層上に CdS バ
ッファ層を化学浴蒸着法により作製した。RF および
DC スパッタリングにより、固有 ZnO(i-ZnO)層と
n 型 ZnO:Al(n-ZnO)層をそれぞれ成膜した。i-ZnO
層と n-ZnO 層の厚さはそれぞれ約 0.06 μm と 0.35
μm であった。成膜した素子は、ガラスカッタによ
り 15 mm× 6mm に加工された。素子上に 10 mm ×
5 mm にカットしたリバアルファを接着し、5%塩酸
溶液にて端面の ZnO 層をエッチングした。作製され
た素子は、試作機用のセンサケースの中心電極に裏
面電極、外電極に表面電極をそれぞれ銀ペーストと
銅線を用いて2端子法にて接続された。また、アル

図1. CIGS 太陽電池を用いたガンマ線センサ試作
機(a)CIGS 太陽電池の素子構造(b)作製した CIGS 太
陽電池の外観(c)5 つの部品で構成されたセンサケ
ースの設計(d)作製したセンサの外観

ゴン雰囲気グローブボックス内でシールドケース内
に CIGS 素子は封入された。
・ガンマ線照射場における測定
ガンマ線照射実験は、QST 高崎量子応用研究所の食
品照射棟の Co-60 ガンマ線源により行った。線量率
は、センサを直線駆動ステージに設置することによ
りガンマ線源とセンサの距離を変えることで調整し
た。電流計測においては、ピコアンメータ(iDC13, 泰
榮エンジニアリング社製)とセンサーを BNC 同軸ケ
ーブルにより接続した測定体系を用いて、測定時間
0.2 s で測定を行った。測定中はシールド線をアース
に接続した。
・電子線照射による劣化評価試験
ガンマ線照射実験は、QST 高崎量子応用研究所の電
子加速器により行った。照射中の照射雰囲制御のた
めに、窒素ガスに置換した気密ボックス中に試料を
設置した。劣化測定は、太陽電池の測定方法に準拠
した光電流電圧測定を行った。測定用光源は、AM0
スペクトル、かつ高強度 137 mW/cm2 の2光源ソー
ラシミュレータを利用した。電流電圧測定では、素
子を4端子法によりソースメジャーユニット
(B2901A, Keysight 社製)に接続した。

( a)

照射開始

ス テ ージ移動中

( b)

3.結果:
図 2 に CIGS 太陽電池素子を用いたガンマ線セン
サ試作機の Co-60 ガンマ線環境中での電流挙動を示
す。図 2(a)に示すように、照射開始と同時に電流が
発生しており、ステージの移動に伴い電流量が変動
している。これは、2500 秒までの時間では、線源に
近づく方向に移動し、6 つの線量位置で静止して測
定している。また、2500 秒以降の時間では、線源に
遠ざかる方向に連続して移動する稼働条件で測定し
ている。この静止中の信号および稼働中の信号を線
量率に対してプロットした結果を図 2(b)に示す。こ
の結果より、ステージは、約 1 .67 mm/s で動作して
いる環境にも関わらず、線量率に対してそれぞれ同
様に増加しており、稼働時のノイズや過渡応答など
は殆どないことがわかる。これは、1F 適応において
ロボットアームなどに搭載された場合、ロボットの
動きに追従して信号が 0.2 秒毎に取得できることを
示唆ており、廃炉作業において経時的に変化する線
量率を十分に測定できると考えられる。
( a)

図 2. Co-60 照射中の CIGS 太陽電池素子の電流挙動
(a)時間応答性(b)線量率依存性
図 3 にセンサの測定中の電流ゆらぎについて解析を
行った結果を示す。非照射中の電流ゆらぎは、約 4
pA の範囲であり、219 Gy/h 照射中のゆらぎも同様
に約 4 pA であった。このことから照射中の電流ゆ
らぎは、非照射時のゆらぎに依存していることがわ
かる。つまり、非照射時のセンサのゆらぎを抑える
ことが線量率の分解能を向上させる要因であると考
えられる。電位の揺れは、測定体系が晒される電磁
波によるノイズ及び、電源系から流入するノイズ等

( b)
⾮照射中

照射終了

( c)
219 Gy/h

⾮照射中
(未エッチング素⼦)

図 3. (a)非照射時、(b)Co-60(219 Gy/h)照射中、(c)未エッチングの CIGS 太陽電池素子の電流ゆらぎ

-2-

向上させることが、分解能や線量測定下限値等の測
定精度を改善する重要な要因であると考えられる。
図 4 に、CIGS 太陽電池の素子の(a)ガンマ線照射
および(b)電子線照射における劣化挙動を示す。ガン
マ線照射では、150Gy/h の線量率環境下で 16 時間の
連続照射を行った。センサー信号の劣化はほとんど
なく、
照射中で信号差は 1%以下であった。電子線は、
ガンマ線照射環境中での劣化の加速試験として利用
した。シリコン太陽電池の先行研究にて 1 MGy相当
の Co-60 ガンマ線により放出される2次電子が与え
る照射損傷量は、1 MeV 電子線約 1016 cm-2 照射時の
量と同等であると計算されている。
CIGS 太陽電池は、電子線照射後に光電流電圧特性を
取得し、その結果を解析することで短絡電流(ISC)お
よび開放端電圧(VOC)の変化量を照射前の値を1とし
て図 4(b)に示す。この結果より CIGS 太陽電池素子
は、電子線に対してほとんど劣化していないことが
わかる。そのため、1×1016 cm-2s 照射時に劣化がほ
とんどない CIGS 太陽電池は、Co-60 環境下でも十分
な耐性を示すと考えら得れる。1F の PCV では、最大
1 kGy/h 相当のガンマ線場が想定されており、10 MGy
は1F で最も過酷な条件における 1 年程度の線量率
に当たる。アイソトープに依存して放出されるガン
マ線のエネルギーが異なるが、想定されるガンマ線
は、Cs-137 が主な線源であるとするとガンマ線エネ
ルギーが 661 keV 程度であることから、Co-60 (1 MeV
程度)相当で換算した場合、安全側に評価できる。そ
のため、CIGS 太陽電池素子を応用したガンマ線検出
素子は、1F で長期間安定した動作が実現できると
考えられる。

が考えられる。非照射時に発生する電流に関して

図 4.CIGS 太陽電池素子の電子線耐性
は、ピコアンメータから出力されるオフセット電圧
が考えられる。 ...

参考文献

[1] 神田啓治(編), 京都大学臨界集合体実験装置大学

院生実験テキスト, 京都大学原子炉実験所 (1980).

[2] NUCEF 実験計画検討グループ, JAERI-M94-066,

日本原子力研究所 (1994).

[3] 中島健他, JAERI-Data/Code 2002-005~007, (2002).

[4] 外池幸太郎, 日本原子力学会誌, Vol.52, No.12,

p.51 (2010).

[5] 山根義宏, 日本原子力学会誌, Vol.52, No.9, p.57

(2010).

[5] K. Nakajima, et al., Nucl. Sci. Eng., 116, 138 (1994).

[6] K. Nakajima, et al., Nucl. Sci. Eng., 119, 175 (1995).

[7] K. Nakajima, J. Nucl. Sci. Technol., 38, 1120 (2001).

[8] 日本原子力学会 JCO 事故調査委員会, JCO 臨界事

故その全貌の解明, 東海大学出版会 (2005).

[9] 中島健,アトムサイエンスくまとり, Vol.10 (2010).

[10] 日本原子力学会東京電力福島第一原子力発電所

事故に関する調査委員会, 最終報告書, 丸善出版社

(2014).

[11] 中 島 健 , ア ト ム サ イ エ ン ス く ま と り , Vol.19

(2017).

[12] 京都大学における研究用原子炉(KUR)等の今

後の在り方について(京都大学ホームぺージ)

https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news/2022-04-05-0

[13] ,[14] 令和 3 年度京都大学複合原子力科学研究所

将来計画短期研究会報告書(2022).

https://www.rri.kyoto-u.ac.jp/wp-content/uploads/R3futureplan_report.pdf

Associating with Nuclear Reactors

Ken Nakajima

nakajima.ken.5m@kyoto-u.ac.jp

-57-

あ と が き

京都大学複合原子力科学研究所では、毎年1月下旬頃から2月上旬頃に、学術講演

会を開催しています。主に複合原子力科学研究所における共同利用・共同研究成果の一

部を所員、所外の共同利用研究者はもちろん、一般の方々にお知らせすることが開催の

趣旨です。第57回京都大学複合原子力科学研究所学術講演会は、令和5年2月14日

と15日の2日間にわたって、新型コロナウイルスの感染対策を行いつつ対面とオンラ

インのハイブリッド開催とします。その内容は、

1)

新人講演

4件

2)

プロジェクト研究成果報告

2件

3)

トピック講演

2件

4)

特別講演

3件

5)

一般講演

26件

です。この報文集が、複合原子力科学研究所における研究活動の記録とともに、広報

の一助となれば幸いです。

令和5年2月

学術公開チーム

田中浩基(チーム長)、福谷 哲、高橋俊晴、上林宏敏、寺田和司、

日野正裕、奥田 綾、渡邉 翼、白鳥篤樹、荻野晋也、鈴木倫代、

魚井健太、横田香織

KURNS REPORT OF

INSTITUTE FOR INTEGRATED

RADIATION AND NUCLEAR SCIENCE,

KYOTO UNIVERSITY

発行所

発行日

住所

京都大学複合原子力科学研究所

令和 5 年 2 月

大阪府泉南郡熊取町朝代西 2 丁目

TEL(072)451- 2300

掲載された論文等の出版権、複製権および公衆送信権は原則として京都大学複合原子力科学研究所に帰属する。

本誌は京都大学学術情報リポジトリに登録・公開するものとする。 https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/

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