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書き出し

Tunnel electron spectroscopy of atoms and molecules in circularly polarized laser fields by electron-ion coincidence momentum imaging

池谷, 大夢 名古屋大学

2023.06.26

概要

学位報告4

別紙4
報告番号





















論 文 題 目 Tunnel electron spectroscopy of atoms and molecules in
circularly polarized laser fields by electron-ion coincidence momentum imaging
(電子-イオンコインシデンス運動量画像法による円偏光レーザー場原子および分子のトン
ネル電子分光)



名 池谷 大夢

論 文 内 容 の 要 旨
近年のレーザーパルスの短パルス化,高強度化により,原子・分子内のクーロン電場に匹敵す
るほどの強いレーザー電場を生み出すことが可能となった。強レーザー場中で誘起される現象は,
弱い光の場では見られない特徴的なふるまいを示し,これを利用した新しい超高速分光法の開拓
が行われている。特に,強レーザー場によって歪められた束縛ポテンシャルを,電子がトンネル
透過してイオン化するトンネルイオン化は,イオン化軌道の特徴を反映することが指摘されてお
り,化学反応過程における電子ダイナミクスを探る手段として期待されている。
トンネルイオン化の主な観測量には,①トンネル光電子の垂直運動量分布,および②トンネル
イオン化レートが挙げられる。特に,円偏光レーザー場においては,トンネル電子とレーザー場
との相互作用によってイオンコアへの再衝突過程が抑制されるため,光電子運動量分布にその特
徴が現れることが期待される。これを踏まえ本論文では,円偏光強レーザー場中で生じたトンネ
ル電子の3次元運動量イメージング計測に基づいて,トンネル電子の垂直運動量分布の直接観測
を行った。その結果,イオン化軌道の性質の違いが実験室座標系のトンネル電子運動量分布に反
映されることを示した。
分子においては,分子座標系でのトンネル電子運動量分布を計測することで,空間分子配向に
よる平均化を除いた形で,トンネルイオン化レートを含めたイオン化過程についてのより詳細な
情報が得られる。分子座標系光電子角度分布(MFPAD)計測はこの目的に対して有用な手法で
ある一方で,分子座標系を解離生成イオンの運動量から決定するため,計測対象が円偏光レーザ
ー場において解離性イオン化が起こりやすい分子種に限定されている。これを踏まえて,本論文
では補助解離パルスを用いた新しい手法を開拓し,MFPAD 計測の適用範囲を拡大することに成
功した。
本論文は序論・理論・実験および本論2章により構成される。
第1章では,強レーザー場中で誘起されるトンネルイオン化および,これを用いた軌道情報を
読み出すための手法について解説されている。現状の課題とその解決策が示され,これを踏まえ
た本研究の目的と内容について要約が与えられている。

学位関係

第2章では,トンネルイオン化の非断熱性とイオン化軌道の特徴を考慮した電子運動量
分布の理解に向けて,高強度場近似(SFA)に基づいたトンネルイオン化理論について述
べられている。
第3章では,実験で使用した高強度パルスレーザーおよび電子-イオンコインシデンス
計測装置について記述している。
第4章では,円偏光強レーザー場中における Ar および H2 のトンネルイオン化電子3次
元運動量分布計測について報告している。電子の初期運動量分布は,円偏光レーザー場中
でトンネルイオン化した電子が形成するトーラス状(ドーナツ状)の運動量分布に直接現
れる。本研究では,イオン化軌道が光電子運動量分布に与える効果について理解を深める
ため,同程度のイオン化ポテンシャルをもつ Ar および H2 の混合気体を対象とした実験を
行った。これにより,電場強度やイオン化ポテンシャルが光電子運動量分布に与える影響
を抑えられ,2つの軌道の特徴の違いを実験的に読み出せることを明らかにしている。電
子-イオンコインシデンス計測法を用いて,Ar+および H2+と同時に検出された光電子の運
動量分布をそれぞれ取得した。2つのイオン化ポテンシャルは同程度(Ar: 15.759 eV,H2:
15.426 eV)にもかかわらず,観測されたトーラス半径および断面の幅には明瞭な差が見出
された。SFA 計算を用いて円偏光レーザー場中における p 軌道および s 軌道からイオン化
した光電子の運動量分布を計算したところ,実験結果と同様の差異を再現できることがわ
かった。これらの結果から,実験で見られた差異は Ar と H2 の価電子軌道がもつ特徴の違
い,特に軌道角運動量に起因していることが明らかとなった。一方,実験結果と理論結果
の絶対値には Ar および H2 ともにわずかな違いが見出された。これは本研究の SFA 計算で
仮定した近似の影響や,イオン化後のクーロン相互作用などの効果に起因していると考え
られる。
第5章では,補助パルスを用いた電子-イオンコインシデンス計測法による O2 分子の
MFPAD 計測について報告している。トンネルイオン化のための円偏光レーザーパルス照
射から時間遅延を置いて,紫外光パルスを補助解離パルスとして導入することで,分子の
解離反応を促進し,MFPAD 計測の適用範囲を拡大することを目指した。対象分子は円偏
光レーザー場中で解離性イオン化が起こりにくい O2 とした。補助解離パルスを導入するこ
とで,O+イオンの収量が増加したことから,本手法により O2 の解離反応を促進できること
が示された。総解離運動エネルギー(KER)スペクトルは,円偏光レーザーパルスのみを
照射した場合から変化し,主に 1 つのピークを示した。O2+の光解離に関する先行研究との
比較から,解離経路は HOMO-1(πu)からのトンネルイオン化を経由して進行したこと
が示唆された。これはイオン電子状態を指定して MFPAD 計測が可能であることを示して
いる。対応する MFPAD は分子軸に対して垂直方向に強い分布を示した。この結果は,弱
電場漸近理論に基づく HOMO-1 のトンネルイオン化レート計算の予想とよく一致してお
り,補助解離パルスの導入は MFPAD 計測の適用範囲を拡大するのに有効な手法であるこ
とが明らかとなった。
以上,著者は,電子-イオンコインシデンス計測法に基づく,円偏光強レーザー場中に
おけるトンネルイオン化を利用した軌道情報の読み出しに関する研究を行った。得られた
成果は,トンネルイオン化過程において軌道が及ぼす効果への理解につながると同時に,
化学反応を支配する電子ダイナミクスの実時間直接観測法の開拓に貢献するものである。

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