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Clinical significance of lymphatic invasion in the esophageal region in patients with adenocarcinoma of the esophagogastric junction

杉田, 静紀 名古屋大学

2021.07.16

概要

【緒言】
 近年、食道胃接合部癌(AEG)の患者数は欧米だけでなくアジア諸国でも増加傾向である。治療の主流は手術であるが、食道胃接合部(EGJ)周囲の解剖学的複雑性からリンパ節郭清範囲や手術方法は依然として議論の余地があり、地域や施設によって治療方針が異なるのが現状である。特に食道側と胃側へ向かう2方向のリンパ流の存在などが問題を複雑にしていると考えられる。
 また、固形癌においてリンパ管侵襲は領域リンパ節転移(LNM)や予後と相関するとの報告が散見され、AEG に関しても同様の報告を認める。しかし、食道側のリンパ管侵襲(eLI)と胃側のリンパ管侵襲(gLI)が同様に LNM や予後に影響を与えるかどうかは不明であり、これらを検討した報告はない。

【対象及び方法】
 2008 年 1 月から 2017 年 7 月の間に手術を行った AEG 患者を対象とし、術前の内視鏡下粘膜下層剥離術や重複癌、5 年以内に悪性疾患の既往のある患者、遠隔転移陽性や術中洗浄細胞診陽性例、姑息手術例、残胃癌症例は除外した(Fig.1)。
 術式は術前検査で食道浸潤 30mm 以下かつ明らかな縦隔 LNM を認めない場合は経裂孔アプローチによる胃全摘または噴門側胃切除、下部食道切除、下縦隔リンパ節郭清を第一選択とし、そうでない場合は食道亜全摘、3 領域リンパ節郭清を施行した。病理組織学的検査において、EGJ より口側の食道領域に認めたリンパ管侵襲を eLI、 EGJ より肛門側の胃領域に認めたリンパ管侵襲を gLI と定義した。EGJ は切除標本において肉眼的に周径の変わる部位とし、肉眼的判断が困難な場合は顕微鏡観察における扁平上皮の遠位端とした。
 リンパ管侵襲、腫瘍径、食道浸潤長等を再評価した上で、縦隔 LNM のリスク因子と、eLI と gLI が生存期間に与える影響、AEG の予後因子を検討した。

【結果】
 Siewert type I、type II、type III の AEG はそれぞれ 34、106、35 例であり、eLI は全患者の 34%(59/175)で認められた(Table1)。特に Siewert type I でリンパ管侵襲を認めたものは全て eLI 陽性であった。
 eLI 陽性例は陰性例と比べ食道浸潤長が長く(29.5 vs 12 mm, P < .001)、縦隔 LNM (39% vs 12%, P < .001)、腹腔内 LNM (83% vs 49%, P < .001)、gLI (68% vs 37%, P < .001)も高頻度に認めた(Table 2)。
 縦隔 LNM のリスク因子の解析では、eLI (オッズ比(OR):2.98, 95%信頼区間(CI):1.26-7.05)と食道浸潤>30mm (OR:6.63, 95% CI:2.43-18.10)が独立したリスク因子であった(Table 3)。
 また、eLI 陽性患者の 5 年生存割合は eLI 陰性患者よりも不良であり(ハザード比 (HR):2.45, 95%CI:1.37-10.01)(Fig.2)、予後因子解析でも eLI は予後不良因子の一つと考えられた(HR:1.72, 95%CI:0.92-3.20)(Table 4)。一方、gLI はどの検討でも優位な因子とならなかった。
 Siewert type II 患者(n = 106)に限定した副次解析でも、eLI 陽性患者の 5 年生存割合は不良であり(HR:2.32, 95%CI:1.09-4.95)(Fig. 3)、eLI は予後不良因子の一つと考えられた(HR:1.61, 95%CI:0.74-3.50)(Table 5)。

【考察】
 AEG の手術治療は、Siewert type I は食道癌として治療が行われるが、type II、type III は特に縦隔リンパ節の郭清範囲について議論の余地がある。縦隔 LNM の扱いが鍵を握ることは明らかであり、術前に縦隔 LNM の有無が判断できれば理想的だが、最新の CT 等を用いても診断は困難である。現状では食道浸潤長が最も信頼できる縦隔 LNM の予測因子とされ、我々の検討でも食道浸潤>30mm は縦隔 LNM の独立したリスク因子であった。同検討で eLI もリスク因子として抽出された(OR:2.98, 95%CI:1.26- 7.05)一方で、gLI は抽出されなかった。さらに詳細な検討では eLI 陽性患者の 39%で縦隔 LNM を認め、eLI 陰性患者と比べ優位に高頻度であった。Siewert type II に限った場合、eLI 陽性患者は陰性患者に比べ 2 倍の 28%に縦隔 LNM を認めた。黒川らは腫瘍中心が EGJ から上下 2cm 以内にある扁平上皮癌を含めた接合部癌患者における縦隔 LNM 頻度は 10%以下と報告しているが、我々の検討における eLI 陽性 Siewert type II 患者の縦隔 LNM はそれよりも高頻度であった。これらより、AEG の縦隔 LNM には食道浸潤長だけでなく、eLI も影響を及ぼしている可能性がある。
 さらに我々は長期成績や予後因子の検討も行った。多変量解析の結果、eLI は統計学的優位差は認めなかったが予後不良因子の一つと考えられた(HR:2.45, 95%CI:1.37- 10.01)。また副次解析を行った Siewert type II の患者群においても優位差は認めなかったが、eLI は不良な予後と相関を認めた(HR:1.61, 95%CI:0.74-3.50)。以上より、病理組織学的検査において eLI と gLI を分けて評価することは有用と考えられた。特に食道浸潤長が 30mm 以下の患者においてしばしば縦隔リンパ節郭清は省略されるため、このような患者の術後治療戦略を立てる上では意義があると思われた。
 一般的に AEG の予後因子として腫瘍深達度、LNM、遠隔転移、腫瘍遺残が挙げられるが、リンパ管侵襲も予後因子であるとの報告も散見される。von Rahden らはリンパ管侵襲は腫瘍の進行度と相関し、独立した予後因子であると報告している。今回、我々は eLI と gLI を分けて検討した結果、eLI と食道浸潤>30mm のみが予後不良因子として抽出された。これは、von Rahden らが報告したように AEG 患者においてリンパ管侵襲は予後と相関しているが、それは主に eLI が関係していると考えられた。
 上記結果より、eLI は日常臨床において有用な因子の一つであり、病理組織学的検査で eLI を認めた場合は手術標本で縦隔 LNM を認めなくとも予後不良と考えられた。その為、そのような患者に対しては術後の頻回なフォローアップや強力な術後補助化学療法等を検討するのも一つの選択肢と考えられた。さらに、アジア諸国ではエビデンスに乏しいが、術後の化学放射線療法も局所再発率制御のためには別の選択肢となりうると思われた。また、食道浸潤長は今回の検討でも術前に診断可能な縦隔 LNM と予後の予測因子であり、食道浸潤 30mm を越える Siewert type II の AEG は食道亜全摘を施行すべきと考えられた。

【結論】
 AEG 患者における eLI は、gLI と比べて縦隔 LNM と強い相関があり、予後不良因子であると考えられた。病理組織学的検査において eLI と gLI を分けて検討することは、術後の治療方針を決定する上で意義があると考えられた。

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