海洋微生物コミュニティにおける種間ネットワークの研究
概要
令和 4 年度 京都大学化学研究所 スーパーコンピュータシステム 利用報告書
海洋微生物コミュニティにおける種間ネットワークの研究
Study on interspecific networks in marine microbial communities
京都大学化学研究所バイオインフォマティクスセンター 化学生命科学領域 金子博人
研究成果概要
本年度私は、前年度に引き続き、京都大学化学研究所スーパーコンピュータシステム
を利用し、メタバーコードデータを用いた海洋微生物生態系の衛星観測モデルの開発を
行った。
海洋微生物生態系は地球の生態系や物質循環において大きな役割を持っており、その
ダイナミクスを把握することは理学的にも応用上でも大変重要である。しかしながら、
船舶を用いた観測にはコスト面やアクセスの上での制約が多く、観測地点や観測回数が
限られてくるため、これまでの研究は局所的な現象を中心に進められてきた。地球観測
衛星による全球の準リアルタイムな観測は、この問題を解決するブレークスルーになり
得る。
前年度までの研究で、生態系全体の情報を丸ごと含んだメタバーコードデータを用い
て生物種間ネットワークを再構築し、それを機械学習により衛星データと結びつけるこ
とで、海洋微生物生態系の衛星観測モデルの開発を行った。最終的に、正解率が 7 割程
度で、衛星データに基づき海洋微生物コミュニティの分布を予測するモデルを開発する
ことができた。本年度は、スーパーコンピュータシステムの大規模計算能力を活用し、
開発したモデルを用いて過去十数年間の毎月の衛星データから全球の微生物コミュニ
ティのデータを予測した。その結果、微生物コミュニティの分布が季節や年によりダイ
ナミックに変動する様子を捉えることができた。現在は、これらの成果をまとめた論文
を国際学術誌に投稿準備中である。 ...