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国際共同治験の現状分析と開発ストラテジーに影響を与える要因に関する研究

浅野 邦仁 Asano Kunihito 名古屋市立大学

2020.03.31

概要

医薬品開発に関する規制要件については、国ごとの法制度や医療環境等の違いがあるため、基本的には各国の行政機関の権限で行われることが原則である。一方、1985 年に入り、医薬品の市場開放が課題とされ、また、医薬品の開発費用が膨大化することで、開発の国際化及び効率化が求められた 1)。そこで、1990 年 4 月、その当時の世界の医薬品市場の約 8 割を占めていた日米欧が中心となり、公衆衛生確保のための安全性、有効性等を確保しつつ、医薬品の国際的な開発の中で、重複した試験や調査を避け、必要な医薬品をより早く患者に届けるため、規制について国際的整合化を図り、ガイドライン等を作成するために日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH(現、医薬品規制調和国際会議))が設立された。

ICH 設立当時における本邦の医薬品開発の中心は、主に日本人を対象に第 I 相~第 III 相試験を実施する国内単独開発が続いたが、国内単独開発は、特に海外の後追い開発である場合、開発期間も長くなり、ドラッグラグが生じることが懸念される。このような状況下で、 ICH のトピックの 1 つとして、1992 年から医薬品の作用に与える民族的要因の影響を科学的に評価し、外国臨床試験データの利用を促進するための方策が検討され始め、1998 年に「外国臨床データを受け入れる際に考慮すべき民族的要因について」として、ICH-E5 ガイドライン 2)が発出された。当該ガイドラインは、外国臨床データを利用して医薬品の承認申請を行う際に、医薬品の有効性及び安全性に与える民族的要因の影響を評価するための基本的考え方、並びに外国臨床データを新地域(日本)への外挿可能性を評価するために新地域(日本)で実施すべき臨床試験の内容を示すものであり、ブリッジング開発に関連するガイドラインとして本邦で活用された。その後、国内単独開発に加え、ブリッジング開発を踏まえた臨床データパッケージによって開発された医薬品も本邦で承認されるようになった 3)が、ブリッジング開発は、臨床開発期間を短縮することはできるが、ドラッグラグを解消するには限界があった。

2006 年以降、このようなドラッグラグ解消のために、新規医薬品開発の効率化・迅速化の観点から国際共同治験を推進し、日本における医薬品の開発時期を諸外国と同調させ、医薬品の開発戦略から日本が取り残されないようにする方針が検討され、厚生労働省は、「革新的医薬品・医療機器創出のための 5 か年戦略」4)の中で国際共同治験推進の必要性を取り上げた。そこで、承認審査の観点から必要な国際共同治験の実施にあたっての考え方を明らかにする必要があるとされ、2007 年に「国際共同治験に関する基本的考え方について」5)( 以下、「基本的考え方」)を通知し、承認審査の観点から国際共同治験を実施する上での留意事項を 12 の Q&A 形式で示した。それ以降、本邦における開発ストラテジーとして、国内単独開発及びブリッジング開発に加えて、国際共同開発の考え方が浸透し、日本人が参加した国際共同治験の実施例は年々増加している 6)。さらに、近年では、欧米との国際共同治験だけではなく、アジア地域における医薬品市場の拡大や、GCP への対応などアジア地域における治験環境が急速に整備されてきたことから、アジア地域における国際共同治験の実施も期待され 7, 8)、本邦と海外との連携方法も多様化しつつある。このような状況を踏まえ、2007 年に発出された「基本的考え方」5)の理解をさらに深め、日本がより早い段階から国際的な開発に円滑に参加するとともに、今後も増加が予想されるアジア地域における国際共同治験等の円滑かつ適切な実施に資することを目的に、2012 年に「国際共同治験に関する基本的考え方(参考事例)について」9)が発出された。さらに、2014 年には、日本人での第 I 相試験成績が得られていない場合に、第 II 相又は第 III 相の国際共同治験に日本が参加することを許容できるか否かについて検討する上での留意事項として、「国際共同治験開始前の日本人での第I 相試験の実施に関する基本的考え方について」10)が発出された。

また、国内だけではなく、世界的にも医薬品開発のグローバル化の進展と共に、国際共同治験で得られたデータが、医薬品の製造販売承認を得る主たる根拠として、各地域及び各国の規制当局に受け入れられている。一方で、本邦と同様に、これまで国際共同治験に関連する考え方や現状等については欧州 11)や米国 12)でそれぞれ発出されていたが、国際的に標準化されたガイドラインはこれまでに存在しなかった。このような状況を踏まえて、2017 年に ICH の合意に基づき、国際共同治験の計画及びデザインに関する留意事項を示した初の国際的なガイドラインである「国際共同治験の計画及びデザインに関する一般原則に関するガイドライン」(以下、「ICH-E17 ガイドライン」)13)が発出された。

このように、本邦における医薬品開発の流れの中で、近年、国際共同治験が医薬品の開発ストラテジーの 1 つとして重要な位置づけを築いており、特にアジア地域での更なる効率的、かつ迅速的な開発が求められている。そこで、本研究ではアジア地域における国際共同治験の開発ストラテジーに影響を与える要因を明らかにするとともに、これまでに ICH-E17ガイドラインに関連する主要な原則がどのように考慮されて国際共同治験が実施されていたのかを明らかにすることで、国際共同治験を実施する際に留意すべき点を明らかにすることとした。さらに、以上の解析から得られた国際共同治験の特徴等を把握した上で、今後の医薬品開発において最適な国際共同治験の計画及び実施方法について提案するため、本研究を実施することとした。

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参考文献

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3. Uyama, Y., Hanaoka, H., Nagai, N., Shibata, T., Toyoshima, S. & Mori, K. Successful bridging strategy based on ICH E5 guideline for drugs approved in Japan. Clin Pharmacol Ther. 78, 102-113 (2005).

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8. Asano, K., Tanaka, A., Sato, T., & Uyama, Y. Regulatory Challenges in the Review of Data from Global Clinical Trials: The PMDA Perspective. Clin Pharmacol Ther. 94, 195-198 (2013).

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11. European Medicine Agency. Reflection paper on the extrapolation of results from clinical studies conducted outside the EU to the EU-population. (2009).<http://www.ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library/Scientific_guideline/2009/11/WC5 00013468.pdf> Accessed 10 January 2020.

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