リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「食事ステロイドの吸収動態に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

食事ステロイドの吸収動態に関する研究

武山, 藍 TAKEYAMA, Ai タケヤマ, アイ 九州大学

2022.03.23

概要

ステロイドは動物および植物細胞膜の構成成分であり、シクロペンタノヒドロフェナントレン環(ステラン)の 3 位にヒドロキシ基をもつステロールが主なものである。動物の主なステロールはコレステロール(Chol)である。植物ステロイドは二重結合の位置および数、側鎖の炭素数、置換基の種類と立体配位の違いにより多様な種類が存在し、脂質代謝改善作用、抗がん作用などの栄養生理機能を有する。Chol およびβ-Sitosterol、Campesterol、Stigmasterol の摂取量は多く報告されているが、その他の植物ステロイド摂取量に関する知見は少ない。本研究ではステロイド摂取量を明らかにするため、日本人の 1 日の食事に含まれる Chol および植物ステロイド量をガスクロマトグラフ分析(水素炎イオン化検出器)で測定した。分析した食事中には、β-Sitosterol、Campesterol、Stigmasterol、Brassicasterol、∆5-Avenasterol、24-Methylene cholesterol、∆7-Stigmastanol、Ergosterol、∆5,24(25)-Stigmastadienol、Sitostanol、Clerosterol、Campestanol、∆7-Avenasterol、Citrostadienol、Gramisterol、Cycloartenol、24-Methylene cycloartanol が含まれていた。分析結果より、Chol 摂取量は 352±124 mg/日、植物ステロイド摂取量は 211±59 mg/日であり、β-Sitosterol、Campesterol、Stigmasterol が総植物ステロイドの 80% 以上を占めることが明らかになった。また食後高血糖抑制作用を有する Cycloartenol の摂取量は 0.268 mg/日、抗炎症作用を有する 24-Methylene cycloartanol の摂取量は 0.0611 mg/日であった。他国における摂取量はCycloartenol 20.0 mg/日、24-Methylene cycloartanol 34.6 mg/日と報告されている。

食事 Chol の吸収阻害は高 Chol 血症改善に有効であることから、植物ステロイドをはじめ様々な食品成分の開発が行われている。リン脂質(PL)はその一つである。しかし PL の加水分解分解物であるリゾリン脂質(LysoPL)摂取が Chol 輸送に与える影響は不明であるため、食餌 LysoPL がChol 輸送に与える影響を検討した。胸管リンパ管カニュレ―ション手術を施したラットに卵黄由来 sn-1 LysoPL、sn-2 LysoPL、PL を添加した食餌を摂取させ、リンパ液を採取した。PL 摂取と比較して、sn-1 および sn-2 LysoPL 摂取はコレステロールエステル(CE)と遊離コレステロール(F-Chol)の合計であるリンパ液中総コレステロール(T-chol)輸送を 35% 低下させた。PL と比較して、sn-1 および sn-2 LysoPL で胆汁酸ミセルへの Chol 溶解性は 10% 程低下した。したがって、食餌 LysoPL は胆汁酸ミセルへの Chol 溶解性を低下させることで、リンパ液中への Chol 輸送を抑制することが示された。つぎに sn-1 および sn-2 LysoPL がリンパ脂質輸送速度に及ぼす影響を薬物動態解析の一つである 1-コンパートメントモデル解析により評価した。sn-1 および sn-2LysoPL で Chol 輸送量に差はなかったが、sn-2 LysoPL と比較して、T-chol および CE の輸送減少速度定数が sn-1 LysoPL で 2/3 および 1/2 程度に小さい値を示した。F-Chol の輸送速度定数には差が見られなかったことから、T-chol 輸送速度の低下は CE 輸送速度の低下によるものであると考えられる。小腸上皮細胞に取り込まれた Chol は、Acetyl-CoA acetyltransferase2(ACAT2)によりエステル化され、カイロミクロンに組み込まれリンパ液中へと輸送される。また ACAT2 は飽和脂肪酸である C18:0 と比較して不飽和脂肪酸である C18:1、C18:3、C20:4、C20:5 をエステル化に優先的に使うことが報告されている。そこでリンパ液中 Chol に結合している脂肪酸組成を評価した。リンパ液中 Chol に結合している脂肪酸組成において、sn-2 LysoPL 摂取と比較して sn-1LysoPL 摂取では飽和脂肪酸が増加し、多価不飽和脂肪酸が減少した。また sn-2 LysoPL 食と比較して、sn-1 LysoPL 食は食事中の不飽和脂肪酸アシル CoA の供給割合が 6 ポイント程度少なかった。PL の sn-1 位には飽和脂肪酸または一価不飽和脂肪酸、sn-2 位には一価不飽和脂肪酸または多価不飽和脂肪酸が主に結合している。つまり、小腸上皮細胞での PL 合成には sn-1 LysoPL は不飽和脂肪酸、sn-2 LysoPL は飽和脂肪酸を必要とする。したがって、sn-1 LysoPL 摂取時には PL 合成に不飽和脂肪酸を多く使うことで ACAT2 による CE 合成速度が遅くなり、CE 輸送ピーク後の輸送が遅くなったことが考えられる。

本研究では、食事中には 17 分子種の植物ステロイドが含まれており、その摂取量は Chol 摂取量の 65%程度であることを明らかにした。また食餌 PL と比較して食餌 LysoPL は胆汁酸ミセルへのChol 溶解性を低下させることで、リンパ液中へのコレステロール輸送を抑制することを明らかにした。さらに LysoPL の脂肪酸結合位置および脂肪組成の違いは Chol 輸送量を変えることなく、sn-1 LysoPL 摂取により Chol 輸送減少速度は遅延することを示した。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る