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書き出し

フマル酸ジメチルはラット精巣における虚血再灌流障害を保護する

大西, 篤史 神戸大学

2023.09.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

Dimethyl Fumarate Protects Rats against
Testicular Ischemia–Reperfusion Injury

大西, 篤史
(Degree)
博士(医学)

(Date of Degree)
2023-09-25

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8752号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100485936
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

(課程博士関係)

学位論文の内容要旨

Dimethyl Fumarate Protects Rats against Testicular Ischemia–
Reperfusion Injury

フマル酸ジメチルはラット精巣における虚血再灌流障害を保護する

神戸大学大学院医学研究科医科学専攻
腎泌尿器科学
(指導教員:溝渕 知司教授)
大西 篤史

1

(導入)精巣捻転は若年男性に好発し、症例によっては男性不妊に至る可能性が
ある。その原因の一つに、精巣捻転後の虚血再灌流障害(ischemia-reperfusion
injury ; IRI)の存在が指摘されている。IRI では、活性酸素の過剰発生や炎症の誘
導などが関与し、より強い組織障害を与えると考えられている。また、過剰な活性
酸素やサイトカインの発生は精子 DNA を損傷し精子形成を阻害するため、男性不
妊の原因になるとされる。
精巣捻転に対する治療の根幹は、できる限り早く捻転を解除することであるが、
その後に起こる IRI を緩和する薬剤の研究も重要である。しかしながら、現時点で
有効な薬剤の開発には至っていない。
そこで我々は、Nuclear factor-erythroid 2 related factor 2(Nrf2)シグナル伝
達経路に着目した。Nrf2 はストレス環境下になると、細胞質から核内に移行して
活性化する。シグナル伝達経路の下流にあるヘムオキシゲナーゼ 1(HO-1)や
NAD(P)H キノン還元酵素 1(NQO1)といった抗酸化酵素を誘導し、抗酸化作
用を発揮する。また、Nrf2 は核内因子κB(NF-κB)が誘導する炎症を間接的に
抑制し、抗炎症作用も誘導する。
この Nrf2 シグナル伝達経路を活性化する薬剤の一つに、フマル酸ジメチル
(Dimethyl fumarate; DMF)がある。DMF は Nrf2 シグナル伝達経路を活性化す
ることで、抗酸化作用や神経保護的作用を持つため、再発寛解型多発性硬化症に対
して臨床使用されている。また、動物実験で他の臓器における IRI に対しても有効
性が報告されている。しかし、精巣 IRI に対する DMF の有効性に関しては現時点
で報告はされていない。今回、我々はラットの精巣捻転 IRI に対する DMF の有効
性を検討した。
(方法)Sprague Dawley 雄ラット(n=32)を、Ctrl 群、DMF 投与群、IRI
群、IRI+DMF 群の 4 群に無作為に分けた。精巣 IRI model の作成については、右
精巣を 720 度捻転させ陰嚢皮膚に縫合固定し、1.5 時間捻転させた後に捻転を解除
した。DMF の投与に関しては、精巣捻転解除 1 時間前から、実験 7 日目(終了)
まで毎日、200mg/kg/日の投与量で経口強制投与した。実験 7 日目に摘出した精巣
重量や精巣重量/体重比率を測定し、精巣組織は各項目で評価した。病理組織学的評
価は、精巣組織は H&E 染色して行った後、Johnsen score ならびに Cosentino
score を用いて、造精機能と精再建の組織障害をスコアリングで評価した。酸化ス
トレスマーカーとして、精巣組織のマロンジアルデヒド(MDA)
、スーパーオキシ
ドディスムターゼ(SOD)
、総グルタチオン(GSH)に対して、ELISA 法を用いて
測定した。精巣組織における Nrf2、HO-1、NQO1、NF-κB および炎症性サイト
カイン(IL1b、IL6、TNF-α)の mRNA を qPCR(Taqman 法)で測定し、ΔCT
法で発現量を定量評価した。(Ctrl 群の発現量を 1 とする)精巣組織のタンパク質
を細胞質、核で分離抽出した後に、核の Nrf2、細胞質の HO-1、NQO1 の発現量を
ウェスタンブロッティングで評価し、核タンパクを Histone H3、細胞質タンパク
2

をβ-actin で定量化した。結果項目を、各群で平均値±標準偏差で算出し、統計学
的に評価し p<0.05 を統計学的有意と判断した。
(結果)精巣重量に関しては、IRI 群 0.96±0.096 (g)に対して IRI+DMF 群
では 1.0±0.16(g)であり、明らかな改善は認められなかった。しかし、精巣重量
/体重比率では IRI 群 0.0034±0.00036、IRI+DMF 群で 0.0042±0.00045 であり、
IRI+DMF 群は IRI 群と比較して有意に改善を認めた。次に、IRI 群では、H&E
染色で精細管構造の破綻や萎縮、精細胞の減少などの所見が認められたが、
IRI+DMF 群ではそれらの病理所見の改善を認めた。また、Johnsen score は IRI
群で 4.6±0.47、IRI+DMF 群で 6.8±0.23、Cosentino score は IRI 群で 3.5±
0.31、IRI+DMF 群で 2.1±0.23 であり、いずれのスコアリングでも IRI+DMF 群
は、IRI 群と比較して有意な改善を認めた。酸化ストレスマーカーは、MDA は IRI
群で 25±4.8(nmol/g tissue)
、IRI+DMF 群では 12±3.5(nmol/g tissue)であっ
た。SOD は IRI 群で 2.2±0.49(×104U/g tissue)、IRI+DMF 群では 4.9±1.3
(×104U/g tissue)であった。総 GSH は、IRI 群で 1.7±0.42(μmol/g tissue)

IRI+DMF 群では 3.7±0.42(μmol/g tissue)であり、いずれの酸化ストレスマー
カーも IRI 群と比較して、IRI+DMF 群で有意な改善を認めた。qPCR における
mRNA 発現量に関しては、Nrf2 は、IRI 群で 1.0±0.16(倍)
、IRI+DMF 群で 1.5
±0.31(倍)であった。HO-1 は、IRI 群で 1.2±0.29(倍)、IRI+DMF 群で 1.8±
0.45(倍)であった。NQO1 は IRI 群で 0.94±0.21(倍)
、IRI+DMF 群で 1.9±
0.43(倍)であった。NF-κB は IRI 群で 1.4±0.40(倍)
、IRI+DMF 群で 0.48±
0.049(倍)であった。IL1b は IRI 群で 3.2±1.8(倍)、IRI+DMF 群で 1.3±0.40
(倍)であった。IL6 は IRI 群で 3.3±1.1(倍)
、IRI+DMF 群で 1.3±0.56(倍)
であった。TNF-αは IRI 群で 1.6±0.39(倍)、IRI+DMF 群で 0.86±0.30(倍)
であった。以上のことから、IRI 群と比較して、IRI+DMF 群で Nrf2、HO-1、
NQO1 の mRNA 発現量が有意に増加した一方で、NF-κB、炎症性サイトカイン
(IL1b、IL6、TNF-α)の mRNA 発現量は有意に低下した。ウェスタンブロッテ
ィングにおける 核 Nrf2 のタンパク発現量は、IRI 群で 0.41±0.23、IRI+DMF 群
で 1.4±0.89 であった。細胞質 HO-1 のタンパク発現量は、 IRI 群で 0.70±0.18、
IRI+DMF 群で 1.4±0.41 であった。細胞質 NQO1 のタンパク発現量は、IRI 群で
0.65±0.16、IRI+DMF 群で 1.3±0.17 であった。以上の結果から、IRI 群と比較し
て、IRI+DMF 群で核 Nrf2、細胞質 HO-1、NQO1 のタンパク発現量は有意に増
加した。
(結論)本研究の結果から、DMF を投与することで Nrf2 シグナル伝達経路
(HO-1、NQO1 を含む)が活性化され、抗酸化作用と抗炎症作用が誘導されるこ
とで、IRI による精巣組織障害が保護した可能性がある。DMF は精巣捻転 IRI の
治療薬となりえる可能性が示唆された。

3

神戸大学大学院医学研究科(博士課程)


受付番号

文 審 査 の 結 果 の 要旨

甲 第 3323号





大西 篤 史

フマル酸ジメチルはラッ ト精巣 における虚血再灌流障害を保護する
論文題目

Ti
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lFumara
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主 査

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審査委員

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副 査

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l幻 碍

考井~ /
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-


缶賢心庫


要 旨は 1
, 000字∼ 2
, 000字程度)

論文 の要旨
(背景)精巣捻転は、たとえ捻転解除しても虚血再 灌 流 障 害 (
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chemi
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e
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oni
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j
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y;
IR
I
)
が生じることが指摘されている。 I
R
Iは活性酸素や炎症の影響でより強い組織障害を誘導し男性不

ucl
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r2 (
Nr
f
2
)シ
妊の原因になるとされる。そこで我々は、N

f
2はストレス環境下になると 、シグナル伝達経路の下流にあるヘ
グナル伝達経路に着目した。 Nr
H01
)や NAD (
P)H キノン還元酵素 1(
NQOl) といった抗酸化酵素を
ムオキシゲナーゼ 1(

f
2は核内因子,cB (
NF,
cB)が誘導する炎症を間接的
誘導し 、抗酸化作用 を発揮する。また 、Nr
f
2a
c
t
i
va
t
o
rである、フマル酸ジメチル (D
i
me
t
hyl
に抑制し、抗炎症作用も誘導する。この Nr

f
u
mar
at
e
;DMF
)は、多発性硬化症の再発予防目的で臨床使用され、動物実験では腎・ 肝臓 I
R
I
に対しても有効性が報告 されている。そこで我々はラッ トの精巣捻転 I
RIに対する DMFの有効性
を検討 した。

n
=
3
2
) を、Ct
r
l、DMF投与、 I
R
I、IRI+DMF群の 4群に無作為に分けた。精
(方法)雄ラット (
巣を 7
20度で 1
.5時間捻転させた後に 、捻転解除して mode
lを作成 した。DMFは精巣捻転解除 1
時間前から実験 7日目まで 200m
g
/
k
g
/ 日で経 口投与 し
、 実験 7日目に精巣を摘出し精巣組織を以下
項目で評価 した。組織学的評価は H&E染色 を行い John
s
en、Co
s
en
t
i
nos
c
o
r
eを用いて評価した。

MDA
)
、スーパーオキシドディスムターゼ (
SOD)、
酸化ストレスマーカ ーは、マロンジアルデヒド (
総グルタチオン (
GSH)を ELISA法で測定した。 Nr
f
2、H0
1
、NQOl、NF
-KBおよび炎症性サ
イトカイン (
ILlb、IL6、T
N
F
・ a) の mRNAを qPCR(
Ta
qman法)で測定し、 △CT法で発現

f
2、細胞質 H01
、NQOlをウェスタンブ
最を評価した。分離抽出したタンパク質を用い、核 Nr
WB)で評価 した(核を Hi
s
t
on
eH3、細胞質を/3・
a
c
t
i
nで定星化)。各結果を p<0.
05
ロッティング (
で統計学的有意と判断した。
(結果)精巣重量は I
R
I群に対して I
R
I+DMF群で明 らかな改善は認められなかったが、精巣
重量/
体重比率では I
RI
+D M
F群は I
R
I群と 比較して有意に改善を認めた。次に I
R
I群では H&E
染色で精細管構造の破綻や萎縮、精細胞の減少などの所見が認められたが、 IRI+DMF群ではそれ

s
en、Co
s
ent
i
nos
c
o
r
eいずれも I
RI
+D MF群は、 I
R
I群
らの病理所見の改善を認めた。 また John
、SOD、総 GSHいずれの酸化ストレスマーカ ーも I
R
I群
と比較して有意な改善を認めた。MDA

R
I
+D MF群で有意な改善を認めた。qPCRにおける mRNA発現量は、I
R
I群と比較
と比較して I
I+DMF群で Nr
f
2、H0-1、NQOlの有意な増加を認めた一方で、 NF-KB、炎症性サイト
して IR
カイン (
ILlb、IL6、T
N
F
・ a) は有意に低下した
。 W Bでは、I
R
I群と比較して、 I
R
I+DMF群で
核 Nr
f
2、細胞質 H0-1、NQOlの発現量の有意な増加を認めた。
f
2シグナル伝達経路 (H
0-1、NQOlを含む)が活性化され、
(結論) DMFを投与することで Nr
R
Iによる精巣組織障害が保護 した可能性があ る

抗酸化作用と抗炎症作用が誘導されることで、 I
DMFは精巣捻転 I
R
Iの治療薬となり える可能性が示唆された。

審査結果の要旨
本研究は、精巣捻転後に生じる虚血再灌流障害から精巣および造精機能を保護する新たな
治療方法について、物実験モデルを用いて研究したののであるが、その 作用機序等につい
ても詳細に検討しており 、精巣捻転による造精機能障害の治療にお いて重要な知見を得た
ものとして価値ある集積であると認める。
よって、本研究者は、博士(医学)の学位を得る資格があると認める。

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