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大学・研究所にある論文を検索できる 「ブレオマイシン誘発強皮症モデルマウスの消化管線維化に対する可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激剤の治療効果」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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ブレオマイシン誘発強皮症モデルマウスの消化管線維化に対する可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激剤の治療効果

Yamamoto, Yuzuru 神戸大学

2021.09.25

概要

【背景と目的】
全身性強皮症(SSc)は自己免疫、微小血管障害、慢性炎症や線維化を様々な臓器にもたらす膠原病である。SSc の病態解明において、ブレオマイシン(BLM)誘発の強皮症肺線維化モデルマウスが広く用いられている。BLM の投与方法は様々な報告があり、一般的に BLM の気管内投与が選択されているが肺中枢側から線維化をきたすので、肺末梢から線維化をきたす SSc 患者の肺線維化モデルマウスと類似しているかは疑問である。マウスに BLM含有の浸透圧ポンプを皮下留置し持続皮下投与する方法で発症する肺線維症は、肺末梢辺縁から線維化が出現することから、BLM の気管内投与モデルよりも、より強皮症の肺線維化モデルとして最適だと報告されている。さらに浸透圧ポンプモデルは全身の皮膚硬化もきたすので、肺と皮膚で線維化をきたす SSc 患者に類似した SScモデルマウスとして頻用されている。また、SSc 患者の 90%以上が消化管病変(便秘や偽性腸閉塞)を罹患するという報告がある。一方で SSc の消化管病変を再現したモデルマウスは今までに報告されていない。そこで、今回我々は上記の BLM 含有の浸透圧ポンプを皮下留置することで持続皮下投与を行い、SSc の消化管病変をきたすモデルマウスを確立することを目的とした。また、既に SSc の肺動脈性肺高血圧症に対して治療適応がある可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬を使用することで、SSc の消化管モデルマウスに対して治療効果をもつかどうかも検討した。sGC 刺激薬は一般的に cGMPの産生を促し、肺血管拡張作用をもつことで肺動脈性肺高血圧に対して治療効果がある。一方で、近年、SSc を始めとする線維化病態において、sGC 刺激薬は抗線維化活性をもつ可能性が指摘されている。sGC 刺激薬がSSc モデルマウスの一つである Scl-GVHD マウスの小腸で線維化を抑制したとの報告がある。
今回、我々は上記のような理由で BLM 誘導の SSc の消化管線維化モデルマウスの作成と sGC 刺激薬による消化管の抗線維化作用を評価することを研究の目的にした。

【方法】
メスの 9-10 週齢の C57BL/6J マウスに day0 で 125mg/kg に希釈した BLM もしくは生理食塩水(NS)を浸透圧ポンプに 200μl 投与して、浸透圧ポンプをマウスの背部の皮下に埋め込んだ。BLM と NS は浸透圧ポンプにより 1.0μl/h の速度で 7 日間は持続的に皮下投与が行われた。これらの NS、BLM の 2 群のマウスで消化管病変を評価した。 day28 もしくは day42 にマウスを sacrifice して食道や小腸を採取した。組織学的評価として Masson‘s Trichrome 染色を用い、染色されている線維化領域の範囲を顕微鏡下で測定した。同様に組織から線維化関連遺伝子の発現を real-time PCR で評価した。上部消化管の蠕動運動は ITR%([染色距離×(十二指腸-虫垂)] -1 ×100 (%))で評価した。ITR%は sacrifice する前夜から絶食にして、sacrifice する 30 分前に Evans blue を経口投与することで、消化管内を移動した Evans blue の染色距離を評価する指標である。
次に NS、BLM+DMSO、BLM+sGC 刺激薬の 3 群のマウスで食道と小腸の評価をおこなった。治療実験として DMSO と sGC 刺激薬は day14 から day42 まで経口投与した。day42 で sacrifice して下記の評価を行った。組織学的評価として Masson’s Trichrome 染色を行い、染色されている線維化領域の範囲を顕微鏡下で測定した。また臓器内の可溶性コラーゲン含有量を Sircol collagen assay で定量化した。同部位で実際の線維化の評価目的としてα-muscle smooth actin(αSMA)、proliferating cell nuclear antigen(PCNA)、 isotype を使用して免疫染色を行った。αSMA の免疫染色は顕微鏡下でαSMA 陽性領域の面積を測定し、PCNA の免疫染色は顕微鏡下で PCNA 陽性細胞数を測定した。

【結果】
NS や BLM の投与を行った(NS 群、BLM+DMSO 群、BLM+sGC 刺激薬群の治療実験を含めた)マウスはいずれの群でも死亡例は認めなかった。BLM 群は NS 群と比較して Masson Trichrome 染色で食道・小腸の染色された線維化領域が増加していた。day42で sacrifice したマウスは day28 で sacrifice したマウスと比較して Masson Trichrome 染色で染色された線維化領域が有意に増加していた。これは組織からの線維化関連遺伝子の発現に関しても同様で、day28 でsacrifice したマウスと比較して day42 で sacrifice したマウスの食道では NS 群と比較して BLM 群で Col3a1、CCN2、MMP-2、MMP-9、 TIMP-1、TIMP-2 の増加、MMP-2/TIMP-2 比の低下を認めており、mRNA レベルでの発現も亢進しており、食道の線維化を示唆していた。また上部消化管の蠕動機能を評価すると、day42 で sacrifice したマウスで BLM 群は NS 群と比較して有意に蠕動機能が低下していた。
次に、NS、BLM+DMSO、BLM+sGC 刺激薬の 3 群で治療実験を行った。BLM+sGC 刺激薬群は BLM+DMSO 群と比較して Masson Trichrome 染色で食道・小腸の線維化領域が改善していた。また、Sircol collagen assay で食道・小腸の可溶性コラーゲン量を測定すると、BLM+DMSO 群と比較して BLM+sGC 刺激薬群で有意に低下していた。 sGC 刺激薬は消化管の線維化に対して治療効果を認めた。また、食道・小腸の組織でα SMA や PCNA の免疫染色を行うと、BLM+sGC 刺激薬群は BLM+DMSO 群と比較してαSMA 陽性領域の面積は減少しており、PCNA 陽性細胞数も低下していた。これら結果から sGC 刺激薬は、線維化と細胞増殖を抑制し、消化管の線維化を改善したと示された。

【考察】
本研究において、我々は BLM 含有の浸透圧ポンプをマウスに皮下留置して持続皮下投与すると、マウスの食道・小腸の線維化をきたしたことを明らかにした。具体的には BLM群は NS 群と比較して病理学的に有意な消化管の線維化をきたし、さらに消化管の線維化をきたしたことで腸管蠕動機能が低下したことを証明した。BLM は TGFβや p53 を活性化することで炎症を起こし、線維芽細胞の増殖や上皮細胞のアポトーシスを誘導することで最終的には線維化を起こす。本研究のマウス食道では Col3a1、CCN2 などの線維化関連遺伝子で BLM 群が有意差をもって増加していた。また、αSMA、Col1a1、PLOD2 などの線維化関連遺伝子に有意差はないものの BLM 群で増加傾向を示した。。これらから BLM は腸管線維化を起こしたものの、SSc 患者の腸管病変の完全な再現とまでは言えない。今後はより SSc 患者の消化管線維症を表現するような工夫が必要になると考慮する。
また、強皮症の消化管線維化モデルマウスに対して sGC 刺激薬が消化管の線維化を改善させたことを我々は初めて証明した。sGC 刺激薬が抗線維化活性をもつ機序は以下の3つ報告されている。sGC 刺激薬は cGMP を産生する。産生された cGMP が TGFβにより誘導された細胞外基質の形成を直接阻害すること、TGFβによる線維芽細胞から筋線維芽細胞への脱分化を阻害すること、TGFβによる線維芽細胞の増殖を阻害することである。これら複数の機序が重なることで sGC 刺激薬が抗線維化作用をきたすとの理論が提唱されている。今回我々が示した sGC 刺激薬の抗線維化活性はこれらの機序により作用したと推察される。

【結論】我々は BLM 含有の浸透圧ポンプを使用することで、強皮症の消化管線維化モデルマウスを確立し、さらに sGC 刺激薬が消化管の線維化を改善することを示した。

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