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大学・研究所にある論文を検索できる 「polished rice遺伝子を介したエクジソン依存的なショウジョウバエ胚発生の制御」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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polished rice遺伝子を介したエクジソン依存的なショウジョウバエ胚発生の制御

平, 雄樹 神戸大学

2021.03.25

概要

胚発生は、単一の受精卵から細胞分裂を繰り返し、細胞運動や分化などを経て個体の体 を形作っていく現象である。時空間特異的な遺伝子発現制御は正しい場所・正しい時期に 組織や器官を形成するために、非常に重要である。空間的制御はモルフォゲンの濃度勾配や誘導などの細胞種特異的な情報伝達によって行われている。一方、時期特異的制御は、 ホルモンなどによって担われる全身へと伝播する情報伝達である。全身性の時期特異的な 情報伝達は、個体を取り巻く環境に応じて発生段階の転換(甲状腺ホルモンによるカエル の変態や脱皮ホルモンによる昆虫の脱皮など)の引き金となっていることから、特に後胚 発生においてその重要性が議論されてきた。節足動物では、エクジステロイドが脱皮ホル モンとして発生段階の転換を制御している。モデル生物であるショウジョウバエにおける、脱皮ホルモンは 20-ヒドロキシエクジソン(以下エクジソンとする)が知られている。エクジソン力価は、個体の外部環境と内部環境に応じて、幼虫期から変態期にかけて複数回の ピークを形成し、それぞれのピークは幼虫期の脱皮や囲蛹殻形成など発生段階の転換点と 対応している。また、エクジソンのピークは胚発生中期にも存在することが明らかにされ ている。ショウジョウバエ胚発生における、エクジソンによる情報伝達経路の欠損あるい は異常は、昆虫の呼吸器である気管や表皮の形成など、様々な器官形成に異常をもたらす ことが報告されている。この事実は、全身性の時期特異的な情報伝達が胚発生においても 重大な意味を持つことを強く示唆している。しかし、安定した内部環境で発生が進行する ため、外部環境へ応答する必要性が乏しいと思われる胚発生において、時期特異的制御機 構がどのような機能を持っているかはいまだに不明なまま残されている。

胚発生期のエクジソンによる情報伝達経路の欠損によって重篤な異常を示す器官に、昆虫の呼吸器である気管が存在する。気管は上皮細胞からなる管状器官であり、それぞれの 細胞へと効率よく酸素を運搬しガス交換を行うために、複雑なネットワーク構造を形成し、大きな表面積を獲得している。胚発生期のショウジョウバエ気管形成は、胚発生中期に気 管原基が左右に 10 対陥入することではじまる。それぞれの原基からは FGF の誘引に従って 5 方向に分枝が出芽・伸長する。背側へ伸びる dorsal branch は背側正中線で体の反対側から伸びてくるdorsal branch と融合し、また dorsal branch 先端には二次分岐であるterminal branchと呼ばれる微細な気管支が形成されることが知られている。dorsal branch 先端には、分枝の融合に必要な fusion cell と二次分枝である terminal branch を形成する terminal cell が分化す ることが知られている。

dorsal branch の融合の前提条件として、背部閉塞の完了が挙げられる。背部閉塞は、胚帯の退縮後、表皮細胞が腹側から背側へと進展することにより胚全体が表皮で覆われる現象である。背部閉塞はエクジソンによって制御されている発生現象の一つであり、気管形成と背部閉塞は同期的に進行していると考えられるが、どのような制御が行われているのかは不明である。

ショウジョウバエ polished rice(pri)遺伝子は、その発現がエクジソンに一義的に依存しているエクジソン誘導性遺伝子である。pri は気管形成や歯状突起細胞分化など、様々な器官形成に関与していることが示されている。胚発生期の気管形成において、pri は dorsal branch の融合や気管内腔の拡張などに必要な因子であることが示されている。

本研究では、胚発生期における時期特異的制御機構の機能を明らかにするために、胚発生期の気管形成と pri に注目した。pri 変異体における気管の詳細な表現型解析の結果、dorsal branch の異所的な接合や terminal branch が出芽・形成されないことを明らかにした。気管分枝の融合に必要な fusion cell および terminal branch の形成に必要な terminal cell の分化マーカーについて発現解析を行ったところ、pri 変異体では、fusion cell が増加し、terminal cellが消失することを見出した。また気管細胞特異的な pri 過剰発現は fusion cell の減少と terminal cell の増加を引き起こした。さらに、エクジソン生合成に必要なシトクロム P450 酵素群のうちの一つをコードする spook 遺伝子の変異体では、気管内腔裏打ちタンパク質の欠失や terminal cell マーカーが発現しないなど、気管に重篤な表現型が見られる。spook 変異体における pri 過剰発現は、これらの spook 変異体で見られた表現型を回復させた。以上の結果は、pri を介したエクジソンによる情報伝達は胚発生期の気管形成に不可欠な要素であり、発生段階に応じて気管細胞の分化を制御していることを強く示唆するものである。

また、気管形成の解析過程で、表皮の形成過程である背部閉塞にも pri が関与していることを見出した。背部閉塞は胚帯の退縮後、表皮が腹側から背側へと進展し、胚全体が表皮で包まれる発生現象である。背部閉塞の完了は dorsal branch の融合の前提条件であることも知られている。タイムラプスイメージング解析の結果、pri 変異体では背部閉塞の完了までが著しく遅延することを見出した。また、pri 変異体では背側開口部の形状にも顕著な異常が生じることが明らかとなった。

以上の結果は、pri を介したエクジソンによる制御が、胚発生期の細胞分化や細胞運動といった器官形成に重要な現象を制御していることを示している。また、背部閉塞の完了が 気管 dorsal branch の融合の前提であることから、エクジソンが複数の器官を制御することで、同調した器官形成が行われている可能性が示された。

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