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枝打ちと芽かきによるセンダンの高品質材生産に関する研究

横尾, 謙一郎 YOKOO, Kenichiro ヨコオ, ケンイチロウ 九州大学

2022.03.23

概要

早生広葉樹としてセンダンの利用が注目されるようになり,熊本県だけでなく,全国でセンダンが植栽されるようになってきた。同時に幹曲りを抑制する施業である「芽かき」広く実施されるようになった。芽かきの実施に伴い,芽かきのタイミング,系統別の木材性質の解明および正確な幹材積の推定手法の確立が必要となった。
そこで,芽が枝になった時に実施する枝打ちが材に与える影響として枝径と変色の関係を明らかにした。次に,芽かきしたセンダンの芽の発生数と最大矢高の情報から適切な芽かきのタイミングの検討と幹曲りの定量的な評価を行った。さらに,これまで枝打ちされたセンダンでしか報告例がなかった木材性質について,芽かきした複数クローンの樹幹内変動を調べ,クローン間差について検討し,選抜育種の重要性について提言した。最後に,芽かきを実施したセンダン林分の幹材積について,これまで使われてきた「立木幹材積表-西日本編-」の広葉樹Ⅰ類の材積式に代わり,幹の通直部分だけでなく,芽かきを実施した部分に限定した材積式の整備を行った。主要な結論を以下に要約する。

(1)センダン幼齢林における枝の形態および枝打ちが材への巻込みと変色に与える影響
1.材に節や変色がなく長さ4mの通直材を生産目標としたセンダンの管理手法を提示するために,適切な植栽密度および枝打ちの実施時期について検討した。植栽密度3,000本/haのセンダン人工林において植栽3年後に枝打ちを行い,その4年後に枝打ちした枝基部の巻込みおよび変色の状況を調査した。
2.枝径2cm未満では,1年で巻込みが完了し変色は生じなかった。一方,枝径2cm以上では,巻込みに2年以上を要し,78~100%で変色が確認された。次に,枝打ちを実施しない3段階の植栽密度区(3,000,5,000および7,000本/ha)を設定し,植栽3年後の地上高0.2~5.2mにおける枝の着生状況を調べた。いずれの密度区とも1個体当たりの総枝数(生枝+枯枝)は概ね10本であり,着生部位は各年の梢端部付近に集中した。
3.低密度区では,変色の原因となる枝径2cm以上の割合が高かった。センダンは低密度で植栽すると幹曲りの可能性が高まることからも,目的とする材の生産には,植栽密度を5,000本/ha程度とし,樹高が4.5mを超えかつ枝径が2cm未満である植栽後2年以内に枝打ちを完了することが重要であると考えられた。

(2)芽かきがセンダン幼齢木の成長と幹曲りに与える影響および芽かきの時期
1.芽かきによるセンダンの幹曲がりの矯正効果を検討するために,1,100本/haで植栽された3クローン(1型,18型,M型)のセンダン幼齢林において,地上高4.5mまで芽かきを行い,芽の発生数,着生高および2年生時における長さ4m当たりの幹曲り(最大矢高)を調査した。
2.M型は他の2クローンに比べ芽の発生数が少なく,特に地上高が高い範囲の発生数が少なかったため,芽かきを軽減できるクローンであると考えられた。
3.最大矢高の平均値は,芽かき区で2.1~2.6cm,対照区で11.2~15.3cmと芽かきによる幹曲がりの矯正効果が認められた。最大矢高は対照区ではクローン間差が認められたが,芽かき区では認められず,芽かきによってばらつきが少ない通直な形状の丸太の生産ができることが明らかとなった

(3)芽かきしたセンダンにおける木材性質の樹幹内変動
1.芽かきしたセンダンにおける木材性質を調べるために,3クローンにおける10年生および16年生の樹幹内変動を検討した。
2.直径成長は良好で,樹幹内の木材性質は,10年生は気乾密度,MOEおよびMORで,16年生は気乾密度でクローン間差が認められた。気乾密度,MOEおよびMORは地上高に関わらず,髄から樹皮側に向かって高くなる傾向がみられたが,地上高別の平均値では大きな変化は認められなかった。成長初期は地上高が低い部分では気乾比重,MOEおよびMORが低かったが,地上高が低いほど直径成長量が大きかったため,成長に伴い地上高による差が小さくなったと考えられた。センダンの生産目標は末口径30cm以上,長さ4mとしており,生産目標のサイズに仕立てることによって,地上高による差が小さい木材性質の材が収穫できる可能性が高いことが示唆された。

(4)芽かきしたセンダン林分における現存量および材の利用を考慮した幹材積の推定
1.芽かきを実施し,長さ4m以上の通直な幹に仕立てたセンダン林の現存量の推定精度を高めるために,16年生林分において層別刈り取りによる幹,枝および葉の分布を調べ,相対成長関係を検討した。
2.用材生産に不可欠である通直な幹が長く,枝下高が高い個体は胸高直径が小さい傾向であった。ただし,枝下高が低い個体でも一次枝に着生している二次枝が枯れ上がったため,葉は上層の狭い範囲に集中して分布しており,10年生以降の幹の直径成長抑制の要因になったと考えられた。
3.相対成長関係では,これまでセンダンの幹材積の算出に利用されてきた「立木幹材積表-西日本編-」の広葉樹Ⅰ類の幹材積式は幹の曲り部分を含んでいるため,幹の通直部分および用材として効率的に利用できる芽かきによって仕立てた無節部分(地上高0.2~4.2m)の幹材積の相対成長式を求めた。これらの相対成長式は芽かきによる用材生産を目的とした時の幹材積を高い精度で推定するのに有効であると考えられた。

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参考文献

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