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大学・研究所にある論文を検索できる 「Studies on wood properties of Betula platyphylla Sukaczev naturally grown in Mongolia」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Studies on wood properties of Betula platyphylla Sukaczev naturally grown in Mongolia

Erdene-Ochir, Togtokhbayar 東京農工大学

2022.08.18

概要

第 1 章 緒言
モンゴルは,中央アジアに位置し,その国境はロシアと中国に接している。2019 年現在,モンゴルの森林総面積は,18.1 百万ヘクタールであり国土の 11.6%を占め,その多くが北部に存在している。これらの森林における優先種は,針葉樹ではシベリアカラマツ(Larix sibirica Ledeb.),広葉樹では,シラカンバ(Betula platyphylla Sukaczev)である。シラカンバの蓄積量は,74.2 百万 m3 であり,広葉樹の総蓄積量の 91.9%に相当する。従って,シラカンバは,モンゴルにおける重要な広葉樹資源であると考えられる。
カバノキ属(Betula)は,カバノキ科に属しており,ヨーロッパ,北米およびアジアに 50〜60 種が分布している。カバノキ属の樹木は,冷温帯の気候でも比較的早い速度で成長が可能である。また,その木材は,工業用途の木材資源であるだけでなく,エネルギー生産のためのバイオマス資源としても重要である。
モンゴルにおけるシラカンバの木材利用のレベルは,海外と比較して低い状態にある。そのため,モンゴルにおけるシラカンバ木材の有効利用を促進するためには,モンゴルで生育したシラカンバから得られる木材の詳細な組織学的・物理学的・機械的性質の調査が必要である。
本研究の目的は,モンゴルにおいて,シラカンバから得られる木材資源の有効活用を促進することである。本研究では,モンゴルにおいて最もシラカンバの蓄積量の多いセレンゲ県の異なる場所から採取した天然生のシラカンバを用いて,(1)成長および基礎的な木材性質,(2)組織学的特徴の地理的変異および(3)木材性質の半径方向変動を調査した。

第 2 章 モンゴルに生育するシラカンバの成長と木材性質
モンゴル・セレンゲ県の異なる 3 林地に生育していたシラカンバの成長特性(胸高直径および樹高),木材性質(年輪幅,容積密度および生材状態での縦圧縮強さ)および樹幹の応力波伝播速度を調査した。また,比較のため,栃木県日光に生育していたシラカンバについても同様に調査した。調査したモンゴルのシラカンバの胸高直径,樹高,樹幹の応力波伝播速度,平均年輪幅,容積密度,生材状態の縦圧縮強さの平均値は,それぞれ 17.6 cm,14.1 m,3.50 km/s,1.27 mm,0.51 g/cm3 および 20.4 MPa であった。容積密度および縦圧縮強さは,髄から樹皮側に向かって減少し,その後,徐々に樹皮側に向かって増加した。モンゴルで生育したシラカンバの木材性質は,日本で生育したシラカンバとほぼ同等であった。成長特性,特に胸高直径は,樹幹の応力波伝播速度および容積密度と正の相関関係が認められた。また,容積密度は,髄から 2 cm の部位の容積密度の値を用いて,早期選抜が可能であることが明らかとなった。さらに,髄から 15 年輪目までの容積密度は,サンプルを採取した 3 林地間で有意な差が認められた。本章で得られた結果から,モンゴルにおいて生育したシラカンバ材は,海外に存在する同様の樹種と同様の利用が可能であると考えられる。

第 3 章 モンゴルに生育するシラカンバの組織学的性質および木部成熟化過程
第 2 章で用いたサンプルと同じサンプルを用いて,組織学的性質(細胞長,細胞形態および構成要素率)および木部成熟化過程を調査した。組織学的性質の半径方向変動は,線形もしくは非線形混合モデルにより評価した。その結果,ほとんどの調査した組織学的性質は,髄から樹皮に向かって増加する傾向を示した。木繊維長の半径方向変動に基づき,シラカンバ材は,髄から 16〜21 年輪目を境界とし樹心材(core wood)および辺縁材(outer wood)と区別することが可能であった。また,樹木成長の初期段階の肥大成長は,モンゴルのシラカンバの樹心部および辺縁部の境界齢に影響しないことが明らかとなった。さらに,木繊維壁厚には,地理的変異が認められた。従って,将来の材質育種計画によって,より厚い細胞壁を持つ優良個体の選抜が可能であると考えられる。

第 4 章 モンゴルで生育するシラカンバの木材性質の半径方向変動のモデリング
モンゴル・セレンゲ県・マンダル村の二次林に生育するシラカンバを用いて,年輪幅,木繊維長,道管要素長,容積密度,気乾密度,動的ヤング率,曲げヤング率,曲げ強さ,衝撃曲げ吸収エネルギー,縦圧縮強さおよびせん断強さなどの木材性質を調査した。木材性質の半径方向変動は,混合モデルにより評価した。他のカンバ属種と比較した場合,いくつかの例外は存在するが,モンゴルで生育したシラカンバ材の木材性質は,ほぼ同等の値を示した。シラカンバの木材性質の半径方向変動は,いずれも非線形混合モデル(対数式)が適合し,調査したすべての形質は髄から樹皮側に向かって増加し,その後一定の値を示すことが明らかとなった。木材性質は,樹心材と辺縁材で有意に異なる傾向が認められた。また,容積密度,気乾密度および動的ヤング率は,曲げヤング率,曲げ強さおよび縦圧縮強さと有意な相関関係が認められた。得られた結果から考えると,シラカンバ材を製材製品の原料として用いる場合,樹心材と辺縁材の木材性質の違いを考慮すべきである。
また,高い強度を持つシラカンバ材の選抜は,木材密度および動的ヤング率を指標として可能であることが明らかとなった。

第 5 章 結論
本研究では,モンゴルにおける持続可能な林業および木材産業の確立に向けた木材資源の有効活用を行うために,モンゴルに生育するシラカンバの成長特性,組織学的特徴および木材性質を調査した。
組織学的特徴および木材性質の半径方向変動の調査結果から,シラカンバ材は,樹心材および辺縁材に区分することができ,その境界は髄から約 20 年輪目であることが明らかとなった。樹心材は,辺縁材と比較して木材性質の不安定な材であった。このことから,シラカンバ材を工業製品の材料として用いる場合,樹心材と辺縁材の存在に注意が必要である。また,年輪幅のロジスティク曲線から算出した肥大成長速度は,約 30 年で最大値を示し,およそ 60 年でほぼ一定の速度を示した。このことから,天然林の択伐を行う際には,肥大成長速度から考えた場合,30〜60 年生の樹木を伐採することが考えられる。また,人工林の場合には伐期を30〜60 年に設定すべきである。さらに,本研究で得られた結果から,林木育種計画の設定により,木材性質の改良が可能であることも明らかとなった。
本研究で得られた成果は,モンゴルの天然林に生育するシラカンバから得られる木材資源の有効活用を促進するものである。また,本研究で得られた結果に基づく木材資源の有効活用は,将来,モンゴルにおける持続可能な林業および木材産業を確立するために大きく役立つと考えられる。

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