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大学・研究所にある論文を検索できる 「慢性脳低灌流がαシヌクレインの蓄積に与える影響についてモデルマウスを用いた検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

慢性脳低灌流がαシヌクレインの蓄積に与える影響についてモデルマウスを用いた検討

大友, 岳 東京大学 DOI:10.15083/0002006960

2023.03.24

概要

[課程-2]
審査の結果の要旨
氏名

大友 岳

病原タンパク質が脳内に蓄積する機序が想定されているアルツハイマー病などの神経変
性疾患においては,血管リスクを背景とした慢性脳低灌流による病態増悪への関与が示さ
れている.本研究では,パーキンソン病においても慢性脳低灌流が病態に関与している可
能性を考え,慢性脳低灌流が脳内の α シヌクレイン(αSyn)の凝集・蓄積に与える影響に
ついて解析を試みたものであり,下記の結果を得ている.
1.

シード依存性の αSyn 凝集を再現した細胞モデルに,二分子蛍光補完(BiFC)法を用
いて内因性 αSyn 凝集を可視化するための新しい細胞モデルを確立した.αSyn 凝集体
のシードを細胞に添加することで,内因性 αSyn の凝集を誘導し,凝集体とオルガネ
ラとの関係性を免疫蛍光染色と Western blot により解析した.また,シードに 3xFLAG
を標識することにより,添加した αSyn シード についても内因性 αSyn 凝集体オルガ
ネラとの関係性を検討した.その結果,αSyn シードがエンドソーム-リソソーム系に
分布している一方で,内因性 αSyn 凝集体はオートファジー-リソソーム系に分布して
おり,別々の分解経路に入ることが示唆された.

2.

上記のような αSyn の細胞内動態と慢性低灌流を結びつける可能性のあるものとし
て,低酸素誘導因子(HIF)1α 依存性オートファジーに着目した.BiFC 凝集モデルに
対して CoCl2 による chemical hypoxia を適用したところ,HIF1α 依存性オートファジー
を誘導し,αSyn シードには影響を与えず,内因性 αSyn 凝集体の分解を促進する可能
性が示唆された.

3.

細胞モデルの解析結果を動物モデルで検証すべく,慢性脳低灌流モデルとして野生型
マウス(C57BL/6J マウス)に対し両側総頸動脈狭窄(BCAS)術を施行した.慢性脳
低灌流の状態が保たれていることを,脳表血流の測定および病理学的評価により確認
した.また,BCAS が HIF1α 発現を誘導していることを病理学的および生化学的に示
した.

4.

C57BL / 6 マウスの右線条体に αSyn シードを注入し,シード依存性の内因性 αSyn 凝
集を再現した.このマウスモデルに,BCAS を適用したところ,神経細胞におけるリ
ン酸化 αSyn の蓄積を有意に減少させ,同時に,内因性 αSyn の発現量とシードの伝播
そのものには BCAS の影響は及んでいないことを確認した.また,行動実験では,
αSyn シード依存性の行動障害も BCAS によって軽減されることが確認できた.

5.

マウスに天然フラボノイドの Chrysin を経口投与することにより,HIF1α の発現が抑

制され,BCAS 術によるリン酸化 αSyn 病理と記憶障害の軽減効果が消失することが分
かった.これにより,αSyn シードに依存した神経細胞内の内因性 αSyn の凝集が,
HIF1α 依存性オートファジーにより分解・除去された可能性が示唆された.
以上,本論文は,シード依存性の αSyn 凝集を再現した細胞モデルおよび動物モデルに
対して chemical hypoxia および慢性脳低灌流モデルを適用することで,慢性脳低灌流に伴
い,HIF1α 依存性オートファジーによる αSyn 凝集の分解が促進される可能性を明らかにし
た.過去の知見においてアルツハイマー病におけるアミロイド β とタウの蓄積病理に対し
て増悪因子とされる慢性脳低灌流が,神経細胞における αSyn の蓄積病理に対しては逆に
保護的に働く可能性を示した本研究は,これまでに例がなく新たな見解を示している.神
経細胞における αSyn の凝集・蓄積機序の解明に重要な貢献をなすと考えられる.
よって本論文は博士( 医学 )の学位請求論文として合格と認められる。

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