Oligosaccharide-dependent anti-inflammatory role of galectin-1 for macrophages in ulcerative colitis

概要

〔目的(Purpose)]
　炎症性腸疾患(IBD)患者では血清ガラクトース欠損IgGが増加しているが、IBD患者と同様のIgG糖鎖構造を持つβ1, 4-ガラクトース欠損マウスのマクロファージにgalectin-1を添加すると、抗炎症サイトカインであるinterleukin(IL)-10産生が増加し、腸炎の改善に寄与している可能性が報告されている。Galectin-1はT細胞を介して腸炎を抑制することが報告されているが、マクロファージの腸炎における詳細な機能については明らかでない。そこで今回、潰瘍性大腸炎(UC)におけるgalectin-1のマクロファージを介した抗炎症作用について検討を行った。

〔方法ならびに成績(Methods/Results)〕
　UC患者の血清におけるgalectin-1の発現をELISA法で、また大腸粘膜組織におけるgalectin-1の発現をqRT-PCRおよび免疫組織化学染色法を用いて検討した。野生型マウスの骨髄由来マクロファージ(BMDM)にrecombinant mouse galectin-1を添加し、各種サイトカイン発現をqRT-PCRおよびELISA法にて測定した。マウス脾細胞をリポ多糖(LPS)で刺激し、マクロファージとgalectin-1の結合およびポリラクトサミン構造の発現につきflow cytometryで評価した。BMDMのgalectin-1の結合における糖鎖の関与について、ラクトースを用いた阻害実験を行った。Galectin-1を添加培養したBMDMをRag2(recombination activating gene2)⁻/⁻マウスに移入し、dextran sodium sulfate(DSS)腸炎モデルを作成し、galectin-1の抗炎症効果を検討した。さらにgalectin-1を添加したBMDMを用いてRNAシーケンスを行い、galectin-1刺激によるマクロファージの表現型変化について検討した。
　UC患者の血清では健常者と比べてgalectin-1の発現に有意な差は認めなかったが、UC患者の大腸粘膜組織の炎症部では非炎症部に比べてgalectin-1の発現が有意に低下していた。マウスBMDMをgalectin-1で刺激すると非刺激時と比べてIL-10産生は有意に増加し、ラクトースの存在下でその差は消失した。また、galectin-1のマクロファージへの結合はLPS非刺激時と比して刺激時に有意に増加し、ボリラクトサミン構造の増加を伴っていた。さらに、galectin-1を添加したBMDMを移入したRag2⁻/⁻マウスではコントロール群と比べて体重減少、腸管長の変化、生存率や腸管の組織学的炎症スコアでDSS腸炎モデルの改善を認め、腸管粘膜固有層由来のCD11b陽性マクロファージにおけるIL-10産生が有意に増加していた。RNAシーケンスの結果から、galectin-l刺激時のBMDMのIL-10産生に関与する因子としてCCAAT/enhancer binding protein β(C/ΕΒΡ β)に着目した。BMDMにgalectin-1を添加したところC/EBP βの発現が有意に増加し、CD163の発現の増加、CD80の発現の低下を伴っていた。

〔総　括(Conclusion))
　UC患者の炎症粘膜ではgalectin-1の発現は低下しているが、マクロファージに発現した糖鎖構造を介して抗炎症作用を発揮し、マウスの腸炎を改善しうることが示唆された。