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大学・研究所にある論文を検索できる 「Long P-wave duration immediately after pulmonary vein isolation on radiofrequency catheter ablation for atrial fibrillation predicts clinical recurrence: correlation with atrial remodeling in persistent atrial fibrillation」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Long P-wave duration immediately after pulmonary vein isolation on radiofrequency catheter ablation for atrial fibrillation predicts clinical recurrence: correlation with atrial remodeling in persistent atrial fibrillation

大口, 志央 名古屋大学

2023.01.24

概要

【緒言】
心房細動患者において、体表心電図の p 波の形態は心房の電気的・解剖学的な性格やリモデリングの程度を反映し、心房細動に対するカテーテルアブレーション後の予後や成績を予測するとされている。しかしながら、肺静脈隔離術(PVI)直後は p 波の形態が変化する事が報告されており、その影響についてはよく知られていない。我々は PVI により肺静脈の電気的基質を除去した後では残された左房基質がより純粋に p波に反映されると仮説を立て、PVI 直後の p 波の形態とアブレーション術後成績の関連性について検討を行った。

【対象および方法】
2017 年 2 月から 2018 年 5 月までに、春日井市民病院で初回心房細動アブレーションを実施した連続する 84 名(発作性心房細動 47 名、持続性心房細動 37 名)を後ろ向きに検討した。PVI 直後の 12 誘導心電図を 100mm/s、32mm/mV 以上に拡大し、洞調律時の全誘導の p 波長(PWD)と p 波高を計測した。V1 誘導においては p 波を陽性成分と陰性成分に分けて計測した。これらの項目と術後 1 年間の心房細動再発について最も良好な再発予測因子を特定し、そのカットオフ値で分類した 1 年間の心房細動再発率を比較した。また左房のリモデリングを反映する指標との相関性を調査し、その指標を造影 CT 検査での左房容量、左房電位マップにおける低電位(0.5mV 以下)領域の比率、左房内局所伝導時間とした。左房内局所伝導時間は冠静脈洞内に留置した同一の電極カテーテルにおいて、電位の極性が一致する連続する 4 電極を選択し、近位側から遠位側までの電位の時相差を計算した。この検討はさらに心房細動の種類、PVI後の追加治療の有無にも分類してそれぞれ実施した。尚、追加治療は PVI 後のイソプロテレノール負荷による心房性不整脈の誘発の有無でその適応を決定した。

【結果】
フォローアップ期間中、20 例において心房細動の術後再発を認めた。背景因子の比較では経胸壁心臓超音波検査での左房径(39.3±5.5mm vs. 42.9±6.1mm, p=0.013)、本研究の評価項目である造影 CT での左房容量(129.8±32.6mL vs. 162.1±38.7mL, p<0.001)、左房内局所伝導時間(62.8±8.2ms vs. 71.3±6.9ms, p<0.001)で、再発群が非再発群と比較して有意に高値を示した。左房低電位領域の比率は再発群で高い傾向にあるものの有意差は示さなかった(9.6±13.2% vs. 15.8±12.5%, p=0.089)。全誘導のパラメータの中でI 誘導、II 誘導、III 誘導、aVR 誘導、aVF 誘導の PWD が、非再発群と比較して再発群で有意な延長を認め、I 誘導の PWD(PWD-I)がカットオフ値>120ms で感度 75%、特異度 69%と最も信頼性の高い再発予測因子となった。カプランマイヤー法を用いた生存分析では、PWD-I>120ms の群は PWD-I≤120ms の群と比較して心房細動の術後再発率が有意に上昇した(p<0.001)。この傾向は持続性心房細動群でより顕著に見られ、PVI後の追加治療の有無に関係なく認められた。また PWD-I は左房容量(r=0.394, p<0.001)、低電位領域の比率(r=0.273, p=0.017)、左房内局所伝導時間(r=0.451, p<0.001)とも有意な相関を示した。多変量比例ハザード分析では、全症例において PWD-I>120ms(ハザード比 2.00; 95%信頼区間 1.27-3.22; p=0.003)と左房径(ハザード比 1.08; 95%信頼区間 1.00-1.16; p=0.049)が心房細動の独立した再発予測因子であった。発作性心房細動群では心不全の既往(ハザード比 2.65; 95%信頼区間 1.24-6.05; p=0.013)が、持続性心房細動群では PWD-I>120ms(ハザード比 3.35; 95%信頼区間 1.70-8.57; p<0.001)が、それぞれ独立した再発予測因子となった。

【考察】
心電図上の p 波の形態と心房細動カテーテルアブレーション後の治療成績との関連性については過去に複数報告されており、本研究と同様、多くは各誘導における PWDと術後再発との因果関係を示している。パラメータの具体的な値はまちまちであるが、各研究別の比較は必ずしも容易ではない。なぜなら母集団、背景因子、心房細動の種類、アブレーション治療の具体的な内容、p 波の解析手法、治療成功の定義など、様々な因子を考慮する必要があるからである。ただしこれらの報告の多くが術前の p 波の解析である。その理由として、臨床的に術後成績の予測をするには術前のパラメータの計測が望ましい点、持続性心房細動の場合には治療前に洞調律に戻す必要がある点、などが考えられる。しかしながら、PVI 後は隔離された肺静脈の電気的成分が排除される事で p 波の形態が変化し、PWD が短縮する事が報告されていて、本研究のように術後の p 波を解析しその特徴や予後への影響を検証する事は臨床的に意義があると考えられる。本研究では、PWD-I が、左房リモデリングの各指標である左房容量、低電位領域の比率、左房内局所伝導時間と有意に相関した。PWD が心房の解剖学的要因と電気的要因のどちらに関連しているのかは議論の余地があるが、今回の結果を見る限りどちらも何らかの形で影響し合っていると思われる。左房内局所伝導時間は左房の一定距離における伝導時間であるため、その領域の伝導速度を示唆するが、我々の知る限り伝導速度と PWD との相関を示した報告はまだ無い。しかし本研究におけるパラメータはあくまで局所的な伝導速度を簡略化しただけであり、その関連性を明確に証明するには至っておらず、今後の新たな研究結果の報告が待たれる。またこの PWD-I は発作性心房細動より持続性心房細動で再発予測精度が高い結果であった。持続性心房細動の症例では、心房の器質化やリモデリングが進行していると考えられ、PVI 後の PWD 計測ではその程度をより鋭敏に評価する事が可能であったと推察される。さらに PVI 後の追加治療の有無に関係なく PWD-I は術後の重要な再発予測因子となっていた。イソプロテレノール負荷による追加治療の適応の判断は広く行われている手法であるが、その精度に関しては限界がある。この PWD-I の計測を評価に加える事で適応決定の精度を上げられる可能性があり、特に持続性心房細動において PVI 後の治療戦略を決定する上でより有用で効果的な手法となり得ると考えられる。

【結語】
PVI 直後の PWD 延長は I 誘導で最も信頼性の高い術後の心房細動の再発予測因子であり、左房基質の状態とも相関性を認めた。特に持続性心房細動において PWD 延長と再発の関連性が強く、PWD の計測が PVI 後の治療戦略を決定する上で有用である可能性がある。

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