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重症心不全に対する心臓移植後の術後経過と予後予測因子に関する臨床的研究

武城, 千恵 東京大学 DOI:10.15083/0002007026

2023.03.24

概要

[課程−2]
審査の結果の要旨
⽒名 武城 千恵
重症⼼不全患者の 1 年死亡率は 50-60%と⾮常に⾼値であり、⼼臓移植の治療適応が検
討され、本邦における⼼臓移植後の成績は欧⽶に⽐較して良好である。⼼臓移植後の合併
症の⼀つである悪性腫瘍や抗 HLA(human leukocyte antigen)抗体による抗体関連拒絶に関
しては予後が不良であることが知られているが、本邦においては臓器移植法の改正ととも
に⼼臓移植後⻑期⽣存症例が増えてきている段階であり、まだ⼗分に検討がなされていな
い。そこで当院における⼼臓移植後の悪性腫瘍(研究Ⅰ)と抗 HLA 抗体(研究Ⅱ)に着⽬して
研究を⾏い、下記の結果を得た。
Ⅰ. 2006 年 6 ⽉~2018 年 5 ⽉までに東京⼤学病院もしくはアメリカで渡航移植を受け当院
でフォローしている 102 名を対象とした。対象患者を悪性腫瘍発症の有無で分け、更に悪
性腫瘍発症群は固形癌群と移植後リンパ増殖性疾患(post-transplant lymphoproliferative
disorder:PTLD)群に分けた。それぞれの群において患者背景、移植後経過からリスク因
⼦と予後を評価した。研究期間で発症した新規悪性腫瘍の分布としては⽪膚癌が 1 名
(0.98%)、固形癌が 4 名(3.92%)、PTLD が 6 名(5.88%)であった。固形癌の分布としては
膀胱癌、膵臓癌、肺癌、乳癌であった。PTLD はいずれも発熱などの症状精査で診断さ
れ、固形癌においては、乳癌と肺癌はスクリーニング検査、他の⽪膚癌・膀胱癌・膵臓癌
は⽪膚腫瘤・⾎尿・肝機能障害出現後の精査で診断された。悪性腫瘍発症群では移植後の
感染症イベントを多く認め[log-rank p<0.0001]、移植後 3 年以降での細胞性拒絶を多く認
めた[p=0.0049]。PTLD と固形癌に分け、それぞれのリスク因⼦を検討すると PTLD で
は Epstein-Barr ウイルス(EBV)未感染に加え[p=0.0022]、移植後 1 年以内のウイルス感染
症[p=0.014]、特にサイトメガロウイルス(Cytomegalovirus:CMV)感染症[p=0.003]が有
意に多かった⼀⽅、癌では移植後経過年数や晩期の細胞性拒絶の関与が⽰唆された。研究
期間中に PTLD による死亡はいなかったが、固形癌発症後の⽣存率は癌を発症していない
症例に⽐較して有意に低下した[log-rank p<0.001]。
Ⅱ. 2018 年 5 ⽉までに⼼臓移植を受け、移植後 2 年以上⽣存し当院でフォローされている
109 例(渡航移植 13 例を含む)を対象とし、後⽅視的に抗 HLA 抗体の発症率、リスク因⼦、
予後を検討した。抗 HLA 抗体はその発症時期、持続陽性期間(1.5 年未満か以上)に応じて
分類し、今回は最も予後が不良と⾔われている移植後新規に発症し持続的に陽性となる de
novo (dn) persistent 抗 HLA 抗体に対象として検討した。平均観察期間は 6.6±3.8 年で、

dn 抗 HLA 抗体陽性は 13 名(11.9%)、
そのうち 1.5 年以上持続して検出された dn persistent
抗 HLA 抗体陽性は 7 名(6.4%)であった。7 名のうち抗体関連拒絶発症例は 3 例、そのうち
死亡例は 2 例であった。
Dn persistent 抗 HLA 抗体陽性群は移植後経過年数が⻑く[p=0.012]、
妊娠・出産率が⾼く[p=0.0003]、移植後 3 年以降の細胞性拒絶の発症を有意に多く認めた
[p<0.0001]。そこで移植後 3 年以降⽣存している 77 名を対象とし、移植後 3 年の⼼筋⽣検
で細胞性拒絶を認めた症例において、その後の抗 HLA 抗体出現について Kaplan-Meier 曲
線を作成すると、細胞性拒絶を認めなかった症例と⽐較して有意に抗 HLA 抗体の出現を認
めた[log-rank p<0.0001]。また Dn persistent 抗 HLA 抗体陽性群は移植⼼冠動脈病変の発
症は増加させなかったが、⼼不全は有意に増加させ、⽣存率も有意に低下させた。dn
persistent 抗 HLA 抗体発症例での⾎⾏動態の推移を抗体関連拒絶の有無に分けて⽐較する
と、抗体関連拒絶発症例では右⼼機能がより早期に低下する可能性が⽰唆された。
以上、⼼臓移植後の悪性腫瘍、抗 HLA 抗体の発症に関して予後予測因⼦を検討した結
果、新規悪性腫瘍、dn persistent 抗 HLA 抗体発症は予後を有意に増悪させることが明ら
かになった。PTLD のリスク因⼦としてはレシピエントが EBV 未感染であることに加え
CMV 感染症が重要であり、また晩期に細胞性拒絶を発症する症例では癌や dn persistent
抗 HLA 抗体の発⽣率が⾼くなることが予想されることが明らかになった。
本邦における⼼臓移植後の⻑期予後を改善するために悪性腫瘍や抗体関連拒絶の予防・
早期治療は必須であり、CMV 感染症や晩期の細胞性拒絶との関係を報告した点について
は新規性を有した研究と⾔え、重要な意味を成すものと考えられる。よって本論⽂は博⼠
( 医

学 )の学位請求論⽂として合格と認められる。

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