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大学・研究所にある論文を検索できる 「ヒトiPS細胞からテストステロン産生ライディッヒ細胞の分化誘導」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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ヒトiPS細胞からテストステロン産生ライディッヒ細胞の分化誘導

石田, 貴樹 神戸大学

2022.03.25

概要

LOH 症候群は男性における低テストステロン血症が精神的、肉体的に様々な症状を引き起こし生活の質を低下させる疾患である。LOH 症候群の患者は定期的な男性ホルモン補充療法を行っているが、2-4 週ごとの定期的な外来通院が必要であること、生理的なホルモン分泌と異なっていることなど多くの問題点がある。男性ではテストステロンのほとんどを精巣の Leydig 細胞が分泌しており、人工 Leydig 細胞の移植治療が男性ホルモン補充療法の代替療法となることが期待されている。本研究はヒト iPS 細胞に性腺、副腎の分化において需要な遺伝子である NR5A1 を強制発現させて Leydig 細胞の分化誘導を行った。まず、Doxycycline 依存性に NR5A1 を発現すると mCherry 陽性になるベクターを作製し、それヒト iPS 細胞に導入した。この細胞は Doxycycline添加時にのみ NR5A1 を発現することを RT-PCR と Western Blotting にて確認した。Leydig 細胞の分化誘導に関してはまず、胚様体を形成したのちに浮遊培養にて cAMP や Forskolin を添加し Leydig 細胞まで分化させた。この細胞に対して RT-PCR を行うと Leydig 細胞特異的な遺伝子である HSD17β3 の発現を確認し、Leydig 細胞のマーカーとして知られる INSL3、LHCGR の発現や様々な代謝酵素の発現も認め、免疫染色において INSL3 と NR5A1 を共発現する Leydig細胞を認めることが明らかになった。Leydig 細胞の培養上清中にテストステロンの分泌を認め、更にこのテストステロンが機能的であることをテストステロン感受性細胞を用いた増殖実験で確認した。形態学的にもヒトの精巣中の Leydig 細胞と比較して類似した核の形態を示していた。また長期培養を行いすくなくとも 49 日間は分泌可能であることを確認した。NR5A1 は性腺、副腎系のマスターレギュレーターとして知られており、NR5A1 を強制発現させることにより性腺、副腎両方とも分化誘導できることがマウスやラットを用いた実験で知られている。本研究でも培養細胞の RT-PCR でACTHR や副腎特異的代謝酵素の発現を確認し、培養上清中にコルチゾールとアルドステロンの分泌を認めた。また、女性由来のヒト iPS 細胞を用いて同様の分化誘導を行ったが Leydig 細胞は誘導できないことを RT-PCR により確認し、生殖系細胞の分化誘導における性差の重要性を確認した。

過去の報告では、ヒト iPS 細胞から Leydig 細胞の分化誘導を行った報告は 1 報認めるのみである。既報告と比較して本研究はよりシンプルな分化誘導方法で機能的なテストステロン分泌を認め、長期間培養も可能であることを示した。また複数の細胞株から分化誘導ができることも示した。

今後の課題としては細胞移植治療を念頭に考えると、より長期間の培養が可能となる培養系や分化誘導方法の確立が必要となることや、細胞単位のテストステロン産性能を向上させること、分化誘導回における産生能のばらつきを抑える工夫が重要となると考えられる。また上位ホルモンである LH に対する応答性も確認できていないため、より機能的な細胞となるためには LH 応答性の獲得も重要となる。本実験で Leydig 細胞の分化誘導に際して副腎細胞の分化誘導も確認されているため、Leydig 細胞選択的な誘導方法の確立も今後の課題となることが考えられる。様々な課題は残るものの本研究はLOH 症候群患者に対するLeydig 細胞移植の実現に向けた大きな一歩となったと考えている。

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