リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「SIRPα陽性樹状細胞はマウス末梢リンパ節細網線維芽細胞の発達を促進する」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

SIRPα陽性樹状細胞はマウス末梢リンパ節細網線維芽細胞の発達を促進する

Komori, Satomi 神戸大学

2021.03.25

概要

(目的)
脾臓やリンパ節などの二次リンパ組織では抗原提示細胞である樹状細胞(DC)がナイーブ T 細胞や B 細胞と相互作用し、効率的な免疫応答が促進され、また末梢における免疫寛容が維持されている。これらの免疫細胞は二次リンパ組織において多種の細網細胞や内皮細胞に富むリンパ組織ストローマ細胞のネットワーク内に集積している。リンパ組織ストローマ細胞の中でも特にポドプラニン陽性の細網線維芽細胞(FRC)はリンパ節の傍皮質領域や脾臓白脾髄の動脈周囲リンパ鞘を形成する。FRC はコラーゲンに富む繊維質の細網構造を形成し、さらにリンホトキシン β 受容体(LTβR)からのシグナルを介して CCL19 や CCL21 などのケモカインや接着因子を産生することによって T 細胞と DC の相互作用を促進することが知られている。FRC の形成や機能制御には DC が重要であることが報告されている一方でどのような分子機構を介して制御されているのか、その詳細は十分には明らかになっていない。

Signal regulatory protein alpha(SIRPα)は、大部分の DC に発現する 1 回膜貫通型タンパク質であり、細胞内領域で細胞質型チロシンホスファターゼである Shp1 や Shp2と結合し下流へとシグナルを伝達する。これまでに我々は定常状態下において SIRPα陽性の DC が Tumor necrosis factor alpha(TNF-α)などの TNF 受容体リガンドを介して脾臓 FRC の増殖と生存を制御することを見出してきた。一方で DC 特異的に SIRPαを欠損させたマウスではリンパ節の形成並びにリンパ節 FRC の細胞数が正常であることから、FRC の増殖や生存の制御機構が脾臓とリンパ節で異なる可能性が示唆されている。定常状態下でのリンパ節形成には DC 上の SIRPα は大きく寄与していないことが示唆される一方で、炎症後などに見られるリンパ節の再形成時に SIRPα 陽性のDC がリンパ節 FRC の増殖と成熟に寄与しているのかについては明らかになっていない。本研究ではリンパ節ストローマ細胞の初代培養系及び腎臓皮膜下移植系を用いることによって、炎症後に起こるリンパ節再形成過程でのストローマ細胞、特に FRC の増殖と成熟における SIRPα 陽性 DC の役割について検討を行なった。

(方法と結果)
リンパ節ストローマ細胞の初代培養では、野生型マウスより末梢リンパ節を摘出し、コラゲナーゼにより組織を消化したのちに得られた細胞を培養ディッシュへと播種した。5 日間の培養ののち、底面に張り付いた細胞を回収し CD45 陰性細胞を磁気ビーズにより単離し、リンパ節ストローマ細胞(LNSC)として以降の実験に使用した。この方法により得られた LNSC では、リンパ節 FRC と同じくポドプラニン陽性、内皮細胞マーカーである CD31 が陰性の分画が大部分を占めており、線維芽細胞様の形態を示していた。二次リンパ組織ストローマ細胞の増殖や成熟には TNF-α の刺激やLTβR からのシグナルが重要であることがこれまでに報告されている。そこで、今回得られた LNSC がこれらの刺激に応答できるのか、LNSC の機能評価を行なった。初代培養 LNSC に対して TNF-α や LTβR アゴニスト抗体による刺激を行なった結果、どちらの刺激においても LNSC の増殖は促進され、さらに両方の刺激による相加的な増殖が認められた。また LTβR アゴニスト抗体による刺激によって、LNSC では接着因子である Vcam-1 や Icam-1 の遺伝子発現が上昇していた。以上から、初代培養によって得られたストローマ細胞はリンパ節 FRC の特徴を有している細胞であることが示された。

続いて SIRPα 陽性 DC が LNSC の増殖に寄与しているのかを調べるために、in vitroでの活性化 DC と LNSC との共培養実験を行い LNSC の増殖を評価した。コントロールマウスである Sirpaf/fマウスと DC 特異的 SIRPα 欠損マウス(SirpaΔDCマウス)それぞれのマウスから骨髄細胞を単離し、GM-CSF 刺激下で 7 日間培養した後に LPS 刺激により活性化させた細胞を DC として使用した。LNSC 単独で培養したものと比較して Sirpaf/f 由来の活性化 DC と共培養したものでは LNSC の増殖がより促進されていた。一方で Sirpaf/fマウス由来の DC と共培養したものと比較して SirpaΔDCマウス由来の DC と共培養したものでは LNSC の増殖が減少していた。さらに、SirpaΔDC マウス骨髄由来の DC では Sirpaf/f マウス骨髄由来 DC と比較して LPS 刺激による TNF-α の遺伝子発現の上昇の程度が低いことが明らかとなった。以上から DC 上の SIRPα は in vitro での DC の活性化による TNF-α の発現上昇に重要であり、初代培養リンパ節ストローマ細胞の増殖に寄与していることが明らかとなった。

次に生体内での LNSC の増殖や成熟における DC 上の SIRPα の重要性について調べるために、LNSC と活性化 DC を混合して腎皮膜下へ移植し評価を行なった。腎皮膜下は血流が豊富であり、異所性のリンパ節形成に適している。初代培養した LNSC と骨髄由来 DC をコラーゲンスポンジへ染み込ませた後、野生型マウスの腎皮膜下へと移植した。移植 3 週間後にコラーゲンスポンジを回収し、含まれている細胞数と細胞分画について解析を行なった。まず活性化DC の有無による影響を調べるためにLNSC単独で移植したものと LNSC と活性化 DC を混合して移植したものを比較した。それぞれの移植片を免疫染色した結果、LNSC 単独移植と比較して LNSC と活性化 DC を混合した移植片では細網繊維構造の形成が認められた。さらに移植片に含まれる細胞の解析を行ったところ、LNSC 単独移植と比較して LNSC と活性化 DC を混合した移植片では CD45 陽性の血球細胞数、特に T 細胞数の増加が認められた。一方で B 細胞や顆粒球など T 細胞以外の細胞では増加は見られなかった。この現象と一致して、LNSC と活性化 DC を混合した移植片では T 細胞を誘引するケモカインである Ccl19の遺伝子発現が上昇していることが明らかとなった。続いて活性化 DC 上の SIRPα が生体内における LNSC の増殖や成熟に重要であるのかを調べるために LNSC と Sirpaf/f または SirpaΔDC マウス由来の活性化 DC を混合して野生型マウスの腎皮膜下へ移植した。その結果、Sirpaf/f マウス由来の活性化 DC と LNSC を混合した移植片と比較してSirpaΔDC マウス由来の DC と LNSC を混合した移植片ではスポンジ内に占める LNSC の面積の減少とともに血球細胞数の減少が認められた。以上の結果から、活性化 DC は生体内において SIRPα 依存的に FRC の増殖や成熟を制御していることが明らかとなった。

(考察)
今回の研究によって、SirpαΔDC マウス由来の DC は Sirpαf/f マウス由来の DC と比較して LPS 刺激による TNF-α の発現上昇の程度が低いこと、共培養した LNSC の増殖促進の程度が低くなることが明らかとなり、SIRPα 陽性の DC が LNSC の増殖や成熟に TNF-α の産生を介して寄与していることが示唆された。さらに腎皮膜下移植によって DC 上の SIRPα は生体内においても LNSC の増殖や成熟に重要であることが確認された。今回の研究で使用した DC は活性化させたものであり、腎皮膜下移植は炎症反応やウイルス感染後のリンパ節再形成を模した系である。また今回の研究で使用したLNSC には FRC の特徴を持つ細胞が多く含まれていたことから、SIRPα 陽性 DC は特に炎症反応後などに見られるリンパ節再形成過程での FRC の増殖や成熟に重要である可能性が示唆された。

(結論)
SIRPα 陽性樹状細胞は in vitro でのリンパ節 FRC の増殖や成熟に重要であり、さらに生体内における FRC の形成に寄与する

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る