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大学・研究所にある論文を検索できる 「レチノイン酸レセプターγの活性化はヒトiPS細胞から食道上皮への分化を促進する」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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レチノイン酸レセプターγの活性化はヒトiPS細胞から食道上皮への分化を促進する

Koterazawa, Yasufumi 神戸大学

2020.09.25

概要

【背景】
食道は前腸由来の臓器である。しかし、この前腸から食道の分化に関わる分子メカニズムは不明な点が多い。これまで食道の発生に関する多くの研究はマウスを用いて行われてきた が、マウスとヒトでは、扁平-円柱上皮境界の位置が違うこと、またマウスの食道上皮の表層は角化しているが、ヒトでは非角化であるなど解剖学的に異なる点も多く、マウスで得られた知見がヒトに外挿できるかは不明である。

近年、ヒトのInduced pluripotent stem cell(ヒト iPS 細胞)から特定の細胞へ分化誘導を行い、その発生や疾患のメカニズムを解明する研究が盛んに行われている。ヒト iPS 細胞を用いて食道への分化誘導方法を確立することは、そのメカニズムに関わる因子を解明する上でも有効であると考えられる。

これまでのヒト iPS 細胞を用いた研究でレチノイン酸(RA)シグナルが前腸から肺や胃への分化を促進することが報告されている。一方で、前腸から食道の分化における ATRA の効果は明らかではない。

【目的】
ヒト iPS 細胞を用いて食道上皮への分化誘導のプロトコールを確立し、ATRA がその分化を促進するか明らかにする。

【方法】
食道上皮への分化誘導を内胚葉(Day3)、前腸(Day6)、背側化前方前腸(Day13)、食道上皮(Day21)の 4 つのステップに分けて、ヒト iPS 細胞株を用いて分化誘導方法を構築し た。つぎに、レチノイン酸レセプター(RAR)α、β、γのアゴニストである All-trans-レチノイン酸(all-trans-retinoic acid: ATRA)を前腸(Day6)に投与することによって食道上皮への分化誘導が促進するか、RNA シークエンスにて評価を行った。最後に、ATRA は RARα、β、γにおいて、どのレセプターを介して分化を促進するか、それぞれのアゴニスト、アンタゴニストを用いて RT-PCR で評価を行った。

【結果】
まず、食道上皮への分化プロトコールを確立した。各分化ステップにおいてマーカー遺伝子の発現(内胚葉:FOXA2、前腸:SOX2、FOXA2、背側化前方前腸:SOX2、P63、食道上皮:SOX2、PAX9、CK13、P63、CK5)を RT-PCR と免疫染色にて確認した。この iPS 細胞由来の食道上皮は、ルゴール染色で陽性であった。また、ヘマトキシリン・エオジン染色で重層化していることが確認され、免疫染色にて細胞接着分子である E-cadherin や Claudin4 の発現も認めた。これらの結果から、重層扁平上皮によって構成される食道上皮への分化が確認できた。

次に、ATRA の有無によって食道上皮への分化が促進するか検討を行った。まず、前腸(Day6)から背側化前方前腸(Day13)まで、ATRA の投与によって背側化前方前腸への分化が促進するか RT-PCR にて検討したところ、ATRA の投与によって背側化前方前腸のマーカーである SOX2、P63 の発現が有意に上昇した。次に、前腸(Day6)から食道上皮(Day21)まで ATRA の投与におって食道上皮への分化が促進するか、RNA シークエンスで評価をしたところ、ATRA によって、食道の特異的マーカーの発現(MAL、DSG3、 ERO1A、CK13、SPRR1B、CK4、HMGN4 など)が上昇した。これらの結果によって ATRA は、食道の分化を促進することが明らかになった。

最後に、前腸(Day6)以降に RARα、β、γのアゴニストを投与し食道上皮(Day21)の分化が促進するか RT-PCR にて評価した。RARγアゴニストを用いたところ、ATRA と同様に食道マーカー(CK13、S100A14)の発現が有意に上昇した。一方で、RARαとβアゴニストを用いてもこれらの上昇は認めなかった。さらに、ATRA と RARγアンタゴニストを同時に投与すると、ATRA によって得られていたこれらのマーカーの発現は上昇しなかった。これらの結果によって、ATRA は RARγを介して食道分化を促進することが明らかになった。

【考察】
本研究によって、ヒト食道上皮モデルの確立が可能となった。現時点での iPS 由来の食道は未熟であり、食道前駆細胞の採取や培養期間の検討など、成熟化のためにさらなる検討が必要である。また、食道上皮への分化に ATRA が重要な役割をもっており、さらにその作用は RARγを介して行われることが明らかとなった。このモデルを用いてさらなる分化や疾患のメカニズムの解明につながることが期待される。

【結語】
RARγの活性化はヒト iPS 細胞由来の前腸から食道への分化誘導を促進する。

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