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大学・研究所にある論文を検索できる 「DNAによる個人識別法の強化を図る-超並列シーケンシングによるSTR型検査の実務導入に向けた検討と大規模災害に対するミトコンドリアDNA検査の重要性の喚起-」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

DNAによる個人識別法の強化を図る-超並列シーケンシングによるSTR型検査の実務導入に向けた検討と大規模災害に対するミトコンドリアDNA検査の重要性の喚起-

大内, 司 東北大学

2023.03.01

概要

博⼠論⽂

DNA による個⼈識別法の強化を図る
−超並列シーケンシングによる STR 型検査の実務導⼊に向けた検討と
⼤規模災害に対するミトコンドリア DNA 検査の重要性の喚起−

⼤内



⽬次
1.要約

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

2

2.研究背景

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

5

3.研究⽬的

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

10

4.研究⽅法

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

11

5.研究結果

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

19

6.考察

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

24

7.結論

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

38

8.謝辞

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

39

9.⽤語集

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

40

10.⽂献

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

44

11.図

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

50

12.表

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

54

13.東北⼤学機関リポジトリへの登録について ・・・・・・・・・

74

1

1.要約
【背景】DNA(deoxyribonucleic acid)が個⼈識別に適⽤可能である事が⽰されて以
来,⾝元不明遺体の⾝元確認や犯罪捜査に DNA 型鑑定が導⼊され,今⽇ではその鑑
定結果は決定的な情報の⼀つとして扱われている.DNA 型鑑定は核 DNA 内のマイ
クロサテライト(あるいは Short tandem repeat;STR)※1 を標的とした STR 型検査,
及びミトコンドリア DNA(mitochondrial DNA;mtDNA)検査の 2 つに⼤別され,
それぞれ鑑定の⼀翼を担っているが各検査とも強化すべき課題がある.STR 型検査に
ついては使⽤するキャピラリー電気泳動(Capillary Electrophoresis;CE)法※2 の性質
上,同じ塩基⻑でも異なる配列を有するアレル(イソアレル※3)を識別できないこと
である.これを克服し識別⼒の向上を図る⼿法として超並列シーケンシング
(Massively Parallel Sequencing;MPS)法※4 による STR 型検査が開発され,実務導
⼊に向けた取り組みが世界的に進み,本邦でも導⼊に向けた検討が急務となっている.
また mtDNA 検査について,2011 年の東⽇本⼤震災において国内の mtDNA 検査体
制の脆弱性が浮き彫りとなった.本邦ではこの震災で初めて DNA 型鑑定が⼤規模災
害に適⽤され,当初より警察組織のみで検査が⾏われてきたが,犯罪捜査が優先され
るため次第に震災遺体の mtDNA 検査が滞るようになった.警察に代わり宮城県では
東北⼤学法医学分野(以下,当教室)にて mtDNA 検査を実施できたが,現時点で全
都道府県の法医学教室で mtDNA 検査が可能である状態とはいえず,検査体制のない
地域で同規模の災害が⽣じた際に⽀障が⽣じる恐れがある.
2

【⽬的】本研究は DNA による個⼈識別法の強化を図るため,
STR 型検査及び mtDNA
検査にみられる各課題に対し,実務的な観点からアプローチすることで DNA 型鑑定
のさらなる発展をもたらすことを⽬的とする.まず STR 型検査について,従来の CE
法を超える識別⼒が期待される MPS 法を⽇本⼈集団に適⽤し,MPS 法による STR
型検査の実務導⼊の可能性について検討する.また mtDNA 検査について,全国的に
検査可能な施設・⼈員が限られている点に問題があるが,⼀施設のみでこれを解決す
ることは困難である.しかし,東⽇本⼤震災を経験した⽴場から法医学的使命を果た
すため,⼤規模災害における mtDNA 検査の重要性を喚起し,この現状に対し警鐘を
鳴らす.
【⽅法】MPS 法による STR 型検査では,宮城県在住⽇本⼈ボランティアの⾎液由来
の DNA 試料 280 例,及び京都⼤学法医学講座で法医解剖に処された⽇本⼈の⾎液由
来の DNA 試料 53 例の計 333 例を検査試料とした.4 種の性別マーカー及び 31 座位
の常染⾊体 STR を標的とする Precision ID GlobalFiler™ NGS STR Panel v2 と Ion S5TM
System を⽤いて解析を⾏い,各座位における遺伝⼦頻度とともに⽇本⼈集団における
個⼈識別⼒(総合同値確率)を算出し,実現可能性を考察する.また mtDNA 検査で
は,当研究室で実施した東⽇本⼤震災に関する 13 体分の遺体試料について,⾝元確
認の成否を整理し,⼤災害時における mtDNA 検査の重要性を喚起する.
【結果】MPS 法による STR 型検査では 333 例中 8 例で主に Penta_D が検出されず,
また,他 3 例の Penta_E で型判定が正確に⾏えなかったため,残る 322 例を⽤いて
3

頻度計算を⾏った.加えて,問題のあった 2 座位(Penta_D 及び Penta_E)を除き 29
座位の塩基配列に基づく値を⽤いて総合同値確率を計算したところ 7.16×10-35 と算
出された.また mtDNA 検査では 13 例中 7 例で⾝元が特定され,内 1 例は取り違え
を正した.また,3 名の候補者のいずれにも該当しない事例が 1 例あった.
【結論】STR 型検査では MPS 法を⽇本⼈集団に導⼊することで従来の CE 法に⽐べ
て⼗分に⾼い識別⼒をもって検査可能であることが⽰された⼀⽅,型判定に注意を要
する座位があることが指摘された.よって,実務導⼊は可能であるが再現性を確認す
る等慎重に型判定を⾏う必要があると考えられた.また mtDNA 検査では,⾝元の特
定の他,候補者の否定の観点からも有⽤性が⽰された.mtDNA 検査は DNA 型鑑定
の最後の砦ともなる検査であり,⼤規模災害時にも不可⽋であることから,来るべき
災害に備え各地で検査体制の強化を早期に図るべきである.

4

2.研究背景
法医実務において⾝元不明遺体の⾝元確認は重要な検査項⽬の⼀つであり,遺体の
指紋や⻭科所⾒,DNA を対象として候補者と⽭盾がないか⽐較が⾏われる

.これ

1)

らのうち指紋や⻭科所⾒による個⼈識別は⽐較的短時間で照合可能であるが,腐敗や
損傷・断裂等で指紋や⻭科所⾒が採取できない遺体も少なくない.あるいは津波によ
って本⼈試料(臍のをや⽣前の使⽤品等)や⻭科カルテが失われてしまうこともある.
その場合,DNA による検査が唯⼀の⼿段となるが,機器分析のため検査結果に時間
を要する反⾯,本⼈試料が無くとも親族との⽐較が可能という利点を有する.加えて,
DNA による個⼈識別は犯罪捜査にも活⽤されており,被疑者あるいは被害者の識別
を⽬的とし,遺留品に付着する体液等の DNA が調べられている 2,3).
今⽇実務利⽤されている DNA 型鑑定は 2 つの検査から構成される.1つは核 DNA
中に存在する数から⼗塩基の反復配列(マイクロサテライトまたは STR)のうち,主
に 4 塩基の反復配列を有する STR を標的とした STR 型検査 4)であり,もう1つが細
胞内⼩器官の⼀つである,ミトコンドリア内のミトコンドリア DNA(mtDNA)を標
的とした mtDNA 検査 5)である.STR 型検査・mtDNA 検査ともにキャピラリー電気
泳動(Capillary Electrophoresis;CE)法によって増幅した DNA を解析するが,それ
ぞれフラグメント解析・塩基配列解析と異なる⼿法を⽤いている(図1).
STR 型検査法で⾏われるフラグメント解析は,PCR で増幅した異なる⻑さの DNA
断⽚をその⻑さに応じて分離・検出する⼿法である.DNA 断⽚⻑の違いは STR の反
5

復数に基づくため,検出された DNA 断⽚には反復数の数値が付される(例えば,反
復数が 12 回の DNA 断⽚⻑に相当する断⽚は「12 型」と型判定される).核 DNA は
⽗と⺟由来の 2 コピーの DNA から構成されるため,1 つの STR 座位につき 1 種類
あるいは 2 種類の対⽴遺伝⼦(アレル)が検出される.1 つの場合は⽗と⺟から同じ
DNA 型を,2 つの場合は⽗と⺟から異なる DNA 型を受け継いだと読み取ることが
でき,それぞれホモ接合体及びヘテロ接合体と呼ばれる.個⼈識別では特定の集団(⽇
本⼈であれば⽇本⼈集団)における各アレルの頻度が重要な情報となるが,1 座位あ
たりの識別⼒は決して⾼くない.よって,複数の STR 座位を検査し,それらアレル
頻度を掛け合わせることで⾼い識別⼒を確保している.現在,常染⾊体に点在する 21
座位を⼀度に検査するマルチプレックス STR 型検査キットが全国の警察施設(科学
捜査研究所)や複数の⼤学の法医施設にて実務利⽤され,1501 ⼈分の⽇本⼈試料か
ら同キットによる同値確率(無作為に選択された 2 ⼈が同⼀の遺伝⼦型をもつ確率)
の値は 1.84 × 10-25 と報告されている 4).また,常染⾊体 STR 型検査と同様に Y 染⾊
体 STR 型検査も実務利⽤されている 6).しかし,Y 染⾊体の STR 型は同⼀⼈物に由
来する試料に加え,同じ⽗系親族に属する⼈物は全て同⼀の STR 型となるため,男
系親族の調査が必要な事例や性犯罪の捜査等に限って適⽤されている.
⼀⽅,mtDNA 検査で⾏われる塩基配列解析では,環状の mtDNA(16,569 塩基対)
の内,⾮遺伝⼦領域(D-loop)に存在の超可変領域(Hypervariable Region;HV)と
呼ばれる多型性の⾼い領域 2 か所(HV1(16,024 番から 16,365 番の塩基)及び HV2
6

(73 番から 340 番の塩基)
)を対象とした約 600 塩基の配列が調べられる.細胞 1 つ
につき核が 1 つ存在するが,ミトコンドリアは数百存在するといわれている.
さらに,
核には⽗と⺟由来の核 DNA がそれぞれ 1 コピーずつ含まれる⼀⽅,ミトコンドリア
には⺟由来の mtDNA が数コピー存在する.結果として 1 つの細胞に核 DNA が 2 コ
ピー含まれるのに対し,mtDNA は数百から数千コピー存在する.このことから,核
DNA が分解してしまって検出できない試料でも mtDNA は検出される可能性が⾼い
ため,⾼度陳旧試料に対しては最後の砦ともなる⼿法となる.その遺伝様式から,基
本的に同⼀⼈物に由来する試料や同じ⺟系親族に属する⼈物であれば,いずれも同⼀
の塩基配列が得られる反⾯,STR 型検査ほどの識別⼒は⽰さない.
また mtDNA 検査の⽋点として,コンタミネーションのリスクが⾼く,STR 型検査
キットのようにキット化されていないこともあり,警察組織では熟練者の多い科学警
察研究所でしか実施されていない.加えて,検査可能な⼤学施設も⽇本各地(主に都
市部)に点在するのみである.そのため mtDNA 検査は,重要犯罪において STR 型
検査で不検出であった事例,あるいは⺟系親族関係の調査が必要な事例等に限って補
助的に適⽤されることが多い.特に急を要する事例については,必要に応じて各⼤学
施設が周辺の都道府県警察から検査依頼を受けて実施しているのが実状である.
上述のとおり,現在の DNA 型鑑定は CE 法による STR 型検査が主で,mtDNA 検
査が補助的に⾏われている状況にあるが,DNA による個⼈識別法を⼀層強固なもの
として発展させていくため,それぞれの検査において強化すべき課題がある.STR 型
7

検査については,従来の CE 法では STR を塩基⻑(反復数)の違いのみで判断するた
めイソアレル※3 を識別できないことである.これを克服する⼿法として近年著しい発
展を遂げた超並列シーケンシング(MPS)法による STR 型検査が開発され 8,9),イソ
アレルを識別すると同時に STR 配列に近接する SNP も検出可能となった.そのため
CE 法に⽐べて解像度の⾼い識別が可能となり,CE 法では解析困難であった複数⼈
の DNA が混在する,所謂混合試料の解析に特に有効であると期待されている.既に
海外では実務導⼊に向けた取り組みが⾏われ各集団を対象とした新たな DNA 多型デ
ータベースが構築され始めており 30-32),本邦においても⽇本⼈集団を対象とした検討
が急務である.このデータベースは捜査上の試料(例えば被疑者試料と現場試料)で
DNA 型が合致した場合に,その DNA 型を有するヒトの存在確率を算出するために
利⽤されることから,実務上重要な情報となる.本邦においても警察組織で⽇本⼈を
対象とした検討が⾏われたが 13),費⽤の⾯から 1 施設のみで⼗分な試料数を解析する
には限界がある.そこで当教室が総括施設となり他 3 ⼤学(関⻄医科⼤学医学部法医
学講座,京都⼤学⼤学院医学研究科法医学講座並びに⼭梨⼤学⼤学院医学⼯学総合研
究部法医学講座)で共同研究体制を整え,可能なかぎり⼤規模に解析を⾏い,⽇本⼈
データベースを構築すると共に,MPS 法による STR 型検査の実務導⼊を検討するこ
ととした.
また mtDNA 検査について,⼤規模災害に対する mtDNA 検査体制の拡充が求めら
れる.2011 年の東⽇本⼤震災における津波被害により多数の⾝元不明遺体が⽣じた
8

が 16) ,DNA による⾝元確認は当初より警察組織でのみ⾏われた.この震災が我が国
で初めて DNA 型鑑定を⼤規模災害に適⽤した例となったが,時間の経過とともに確
証の低い⾝元不明遺体の割合が増えたことに加え,刑事事件が優先されるようになり
震災遺体の鑑定が滞るようになった.可能な限り多くの⾝元不明遺体を遺族に返還す
るという法医学的使命を果たすため,当教室では宮城県警察から mtDNA 検査依頼を
受け,2014 年から 2022 年度までに 13 体分の mtDNA 検査を⾏ってきた.宮城県で
は当教室にて mtDNA 検査を実施できたが,現時点で全都道府県の各法医学教室で
mtDNA 検査が可能である状態とはいえず,検査体制のない地域で今後同規模の災害
が⽣じた際に⽀障が⽣じる恐れがある.当教室は全国に先駆けて⼤規模災害に対する
mtDNA 検査を経験した法医学教室となったことから,その経験を基に⼤規模災害に
対する mtDNA 検査の重要性を⽰し,mtDNA 検査体制の拡充を促すことが責務と考
えられる.

9

3.研究⽬的
本研究は DNA による個⼈識別法の強化を図ることを⽬的に,実務の観点から MPS
法による STR 型検査の実務導⼊に向けた検討と⼤規模災害時に対する mtDNA 検査
の重要性の喚起を⾏う.
3-1.MPS 法による STR 型検査の実務導⼊に向けた検討
CE 法よりも解像度の⾼い解析が可能な MPS 法による STR 型検査法を法医実務に
導⼊する前段階として,実務で検査される⽣体や死体から採取された⾎液由来の
DNA 試料を⽤いて適正に型判定可能であるか確認すると共に,個⼈識別の際の確率
計算に必須な⽇本⼈ DNA 多型データベースの構築を試みた.

3-2.⼤規模災害に対する mtDNA 検査の重要性の喚起
我が国は地震や噴⽕等,⾃然災害の多い国であり,今後も東⽇本⼤震災に匹敵する
ような⼤規模災害の発⽣が危惧されているが 19),全国的に mtDNA 検査体制が充実し
ている状況とはいえない.
⼀施設のみでこれを解決することは困難であるが,社会的使命から我々法医学関係
者は今後発⽣し得る⼤災害に備えなければならない.よって,東⽇本⼤震災を経験し
た⽴場からその有⽤性を提⽰し,⼤規模災害に対する mtDNA 検査の重要性を喚起す
ることで,現状に対し警鐘を鳴らすこととした.

10

4.研究⽅法
4-1.MPS 法による STR 型検査の実務導⼊に向けた検討
4-1-1.材料
⾎縁関係のない⽇本⼈ 333 ⼈(男性 195 ⼈,⼥性 138 ⼈)から採取された⾎液由
来の DNA 試料を使⽤した.その内 53 試料は研究期間内に京都府内で発⾒され,死
後 1 週間以内と推定された遺体由来の⾎液である.また,残る 280 試料は宮城県内に
てゲノム解析の同意が得られた成⼈ボランティアから採取された⾎液であり,当教室
に保管中の DNA 試料である.
4-1-2.MPS 解析
4-1-2-1.ライブラリー調整と定量
陰 性 対 照 と し て No Template Control ( NTC ) を 設 置 し , 陽 性 対 照 と し て
AmpFlSTR™ DNA control 007 (Thermo Fisher Scientific;TFS)を⽤いた.ライブラ
リー調整は Precision ID GlobalFiler™ NGS STR Panel v2 (TFS)を使⽤し,プロトコ
ルに従い⼿作業により⾏った 20).なお,同キットは 31 座位の常染⾊体 STR(D12S391,
D13S317, D8S1179, D21S11, D3S1358, D5S818, D1S1656, D2S1338, vWA, D2S441,
D5S2800, D7S820, D16S539, D6S474, D12ATA63, D4S2408, D6S1043, D19S433,
D14S1434, CSF1PO, D10S1248, D18S51, D1S1677, D22S1045, D2S1776, D3S4529,
FGA, Penta D, Penta E, TH01, and TPOX)及び 4 つの性別マーカー(Amelogenin,
DYS391, SRY, and Y-InDel (rs2032678))を標的としている.1 ng 以上の DNA を鋳
11

型として PloFlex™ PCR System (TFS)により PCR 増幅を⾏った.PCR 条件は,99℃,
2 分の活性化の後,99℃,15 秒の熱変性,60℃,4 分のアニーリング・増幅反応を 23
回繰り返した後,反応停⽌まで 10℃で保存した.増幅産物(アンプリコン)の末端を
部分的に切断した後,プロトコル

16)

に従ってバーコードアダプター(Ion Xpress™

Barcode Adapter または Precision ID IonCode™ Barcode Adapter, いずれも TFS)を
付加した.その後,Agencourt™ AMPure™ XP Reagent (Beckman Coulter)にて精製
し,Ion Library TaqMan™ Quantification Kit 及び QuantStudio™ 5 Real-Time PCR
System(いずれも TFS)を⽤いて定量した.プロトコル 16)に従って希釈が必要なライ
ブラリーは希釈を⾏い,1 つのライブラリープールにつき 16 から 32 試料までのライ
ブラリーをプールした.
4-1-2-2.テンプレート調整から解析
プロトコル 16)に従い,Ion Chef™ System 及び Ion 530™ Chip(いずれも TFS)を
使⽤して各ライブラリープールからシーケンシング⽤のテンプレートを作製した.本
研究では計 16 個のテンプレートを作製した.
Ion S5™ System (TFS)を⽤いてシーケンシングを⾏った後,⽣データを S5
Torrent Server v5.10.0(TFS)から Converge™ software v2.1(TFS)に転送し,リフ
ァレンスとして Homo sapiens hg19 genome を⽤いて解析を⾏った 17).解析には HID
Genotyper plugin v2.1(TFS)を使⽤し,各 STR 座位のスタター⽐率の閾値等を含む
解析パラメーターには最新の v2.1.1 を適⽤した 18).
12

4-1-3.CE 法による確認
現状 CE 法による STR 型検査がスタンダードであり,本来であれば全試料に対し
MPS 法と CE 法で得られる結果の整合性を確認する必要があるが,費⽤の⾯から本
研究では MPS 解析でシーケンスエラーの可能性を否定することができなかった 6 試
料(Penta_D と Penta_E でそれぞれ 3 試料)に絞って CE 法による確認を⾏った.
Penta_D と Penta_E を検査対象に含む PowerPlex Fusion 6C System(Promega)を
使⽤し,DNA 1 ng 相当を鋳型として PloFlex™ PCR System (TFS)を⽤いてプロトコ
ルに従って PCR 増幅を⾏った 19).増幅産物を 3500 Genetic analyzer (TFS)によっ
て分離した後,GeneMapper ID-X software, version 1.6 (TFS)を⽤いて解析した.6 試
料の内,型判定ができなかった試料は以後の統計解析から除外した.
4-1-4.統計解析
性別マーカーを含め,全座位で型判定が⾏えた試料のみを対象とした.Microsoft
Excel を使⽤し,塩基⻑に基づくアレル(塩基⻑アレル)及び塩基配列に基づくアレ
ル(塩基配列アレル)それぞれについて遺伝⼦頻度を算出した.また,Arlequin v3.520)
を使⽤し,観察されたヘテロ接合度(observed heterozygosity;Hobs)及び理論的なヘ
テロ接合度(expected heterozygosity;Hexp)を算出すると共に,同ソフトを使⽤して
ハーディ・ワインベルグ平衡(Hardy-Weinberg equilibrium;HWE)検定及び連鎖不
平衡(linkage disequilibrium;LD)検定を⾏った.なお, HWE 検定及び LD 検定共
にボンフェローニ補正後の有意⽔準を適⽤し,算出された値がこの値を下回った場合
13

に有意差ありとした.
また,ウェブ上の解析ツールである STRAF (STR Analysis for Forensics)

を使⽤

21)

し,慣例によりデータベースの多型の有⽤性を表す指標として利⽤される同値確率
(match probability;PM)※5 及び識別能(power of discrimination;PD) ※6, 多型情報
含有値(polymorphism information content;PIC) ※7, 排除能(power of exclusion;
PE) ※8,定型⽗権尤度⽐ (typical paternity index;TPI) ※9 を算出した.
4-1-5.倫理的配慮
当研究は東北⼤学⼤学院医学系研究科倫理審査委員会(No. 2020-1-902),関⻄医
科⼤学医学倫理審査委員会(No. 2016704),並びに京都⼤学⼤学院医学研究科医の倫
理委員会(No. ...

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