リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「「持続可能な食」としての提携型食行動 ―オルタナティブフードネットワークを視角とする食べ手形成の考察―」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

「持続可能な食」としての提携型食行動 ―オルタナティブフードネットワークを視角とする食べ手形成の考察―

山本, 奈美 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k24683

2023.03.23

概要

論⽂要旨

⽒名:⼭本奈美
論⽂題⽬:「持続可能な⾷」としての提携型⾷⾏動
―オルタナティブフードネットワークを視⾓とする⾷べ⼿形成の考察―
論⽂内容の要旨:
本論⽂の研究課題は、「どのように⼈は持続可能な⾷の⾷べ⼿となるのか」を明らかにす
ることである。この課題解決に向けて本研究では、産消提携運動(以下、提携)の⾷べ⼿が
約半世紀にわたって積み重ねてきた、有機農産物を「⾷べること」を通して「持続可能な
⾷」を模索する⾷⾏動(以下、提携型⾷⾏動)に着⽬した。その⽬的は、⾷⾏動のオルタナ
ティブ性に焦点をあて、オルタナティブフードネットワーク(以下、AFNs)を分析視⾓に
捉えなおし、その特質を明らかにするにより、提携の⾷べ⼿が持続可能な⾷の⾷べ⼿として
の⾏動に⾄る、その過程を明瞭化することであった。
序章では、気候変動や⽣物多様性の喪失などひっ迫する環境問題を前に、より持続可能な
フードシステムへの転換に向けて「⾷」を「梃⼦」として活⽤することへの注⽬が⾼まる
中、近年活発化している「持続可能な⾷事」に関する国際的な議論を整理した。加えて、⽇
本社会で有機農産物等の⾷べ⼿を増加させるための議論が深まっていない現状も確認し、上
記課題を設定した。また、課題解決のために「持続可能な農業を⽀え、⽀えられる⾷」(以
下、持続可能な⾷)としての提携型⾷⾏動を事例とする意義と論点を⽰した。
第⼀章では、本論⽂全体を貫く視⾓である AFNs 研究に蓄積された議論と知⾒を整理し
た。特に、AFNs のオルタナティブ性を批判的に問い直す欧⽶の議論を参照し、「オルタナ
ティブ」の名のもとで不可視化されてきた課題を確認した。この理解を⼟台に、「どのよう
に⾷べるのか」は社会経済的構造の影響を受けて形成されるため極めて社会的かつ政治的で
あり、⾷が持続可能性への転換に向けた「梃⼦」となるような「⾷環境」の理解と実現の重
要性が増している現状を指摘した。
第⼆章では、本研究で事例として扱う使い捨て時代を考える会(1973 年設⽴)と安全農
産供給センター(1975 年設⽴)(以下、考える会と安全農産、双⽅を指す場合は同会)に
ついて、同会の歴史的経緯と現状を外観し、同会が展開してきた⾷実践と提携活動で構成さ
れる⾷⾏動の概要をデータを⽤いて明らかにした。
第三章の課題は、提携運動の根源的活動である有機農産物の共同購⼊活動を「選べない⾷
実践」を、消費者の⽇常に根差し⽇々繰り返される個々の⾷実践の集合体である社会実践と
捉え、実践理論を枠組みにその仕組みを明らかにすることであった。検討の結果、⾷実践を

構成する三要素――イメージや意義(Meaning)、材料・資材・インフラなどの物質
(Material)、知恵や技能(Competence)――のバランスが、提携の⾷実践を形成し継続さ
せることが明らかになった。同章の意義は、有機農産物を継続して⾷べるという⾷⾏動の形
成と維持、変遷を理解する上での⼿がかりを⽰したという点である。
第四章では、同会の活動における思想的体現を担ってきた「考える素材」を軸とする⾷⾏
動の埋め込みの在りようとその変遷を、ポランニーを源流とする社会的埋め込みの概念を枠
組みに考察した。その結果、1970年代から1980年代前半の興隆期には、創⽣された社会的紐
帯のもと埋め込みが集団的に⽣起していたこと、しかしながら、「考える素材」というフレ
ーミングは停滞期を経て影響⼒と役割が変容し、現在は、有機農産物の市場化の影響を受け
紐帯と埋め込みの個別化が進んでいること、それにもかかわらず埋め込まれた⾷⾏動が継続
していることが確認された。同章の意義は、社会的埋め込みが持続可能な⾷の形成と維持に
相関関係にあることを⽰し、さらには、埋め込みを維持する紐帯を形成、維持する仕組みの
重要性を⽰したことである。
第五章では、提携型⾷⾏動を「リフレクシブな⾷の正義」の枠組みから検討した。結果、
同会におけるオルタナティブな農と⾷の模索とは、到達すべきゴールに⾷の正義を据えなが
らも、現実に達成されるには複雑に絡み合う⽭盾があることを認め、不完全と不⼗分を受容
し、時には諦めの気持ちも交じる葛藤の念を抱きながら⾷⾏動を続けることであったことが
確認された。しかし、1990年後半以降の会員数減少と⾼齢化を受けてリフレクシブ性を保持
する対話の機会が減少し、ベテラン会員と新会員の間の会活動に対する齟齬を⽣みだした。
最後に、このリフレクシブ性の喪失過程は提携停滞と連動していたことを⽰した。
終章では、各章の結果を要約するとともに結果を統合し、提携型⾷⾏動とは⾷と農を社会
的諸関係に埋め戻し続ける取り組みであったこと、提携型⾷⾏動の継続には、⾷⾏動が第⼀
に⾝体化かつ慣習化されていること、第⼆が集団的かつ主体性が担保されていること、とい
う⼆点が重要であるとの結論を導いた。最後に、本研究の結論をもとにして持続可能な⾷の
推進に向けて⾷を「梃⼦」として活⽤するための展望を述べた。 ...

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る