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大学・研究所にある論文を検索できる 「発達障害児に対する就学移行支援 ―学校適応に向けた課題と支援―」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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発達障害児に対する就学移行支援 ―学校適応に向けた課題と支援―

石川, 菜津美 筑波大学

2023.09.04

概要

【博⼠論⽂概要】

発達障害児に対する就学移⾏⽀援

―学校適応に向けた課題と⽀援―

2022 年度
⽯川
筑波⼤学⼤学院

菜津美

⼈間総合科学学術院

⼈間総合科学研究群

カウンセリング科学学位プログラム

第1部

理論的検討

⾃閉スペクトラム症(ASD)などの発達障害のある⼦どもは,幼稚園や保育所,認定こ
ども園(以下, 園)から⼩学校にかけての就学移⾏期に,対⼈関係や環境の変化の影響で適
応の問題が⽣じやすい。そのため,教育的ニーズに応じた学びの場の検討や合理的配慮の
調整など,特別⽀援教育の理念に基づいた個別的な⽀援が必要不可⽋である。
先⾏研究では就学移⾏による発達障害児の学校不適応が報告されている⼀⽅で,園から
⼩学校にかけての適応の⻑期的な推移は明らかではない。また,発達障害児の保護者や,
園,⼩学校,発達⽀援が就学移⾏に果たす役割は⼤きいものの,その体験や働きかけは明
確ではない。また,応⽤⾏動分析学の理論に基づいた⼿続きによって,就学移⾏期の発達
障害児の⾏動問題の低減や,特定の授業参加⾏動の獲得を⽬指した⽀援が⾏われている
が,学校の教室場⾯に適切な⾏動を般化させるためには,多様な先⾏刺激のもとで授業参
加⾏動を強化する必要があると考えられる。また,保護者が就学移⾏のプロセスに積極的
に関与し,主体的に学校と連携を⾏うことが重要であるが,そのような⽬的で⽀援を⾏っ
た研究はない。
このような背景に基づき,本研究では以下の3点を⽬的とし,9つの研究を⾏った。
第1に,就学移⾏期の発達障害児を⽀える関係者の体験を明らかにすることを⽬的とする。
保護者や園・⼩学校の担任,児童発達⽀援の就学移⾏期の⼦どもに対する働きかけや,関係
者同⼠の協働の実態やプロセスを明らかにする。
第2に,就学移⾏期の保護者による学校や⼦どもへの働きかけが,発達障害児の⾏動や担
任との関係に与える影響を経時的に明らかにすることを⽬的とする。
第3に,質的・量的評価研究から明らかになった知⾒をふまえて介⼊プログラムを作成
し,就学移⾏期の発達障害児と保護者への介⼊を⾏い,その効果を検証することを⽬的と
する。
第2部

実証的研究

第4章では就学移⾏期の発達障害児を⽀える関係者の体験を質的分析によって検討し
た。
研究1では,年⻑時に就学移⾏に関する⽀援プログラムに参加していた⼩学2・3年の
発達障害児の保護者7名を対象にインタビューを⾏い,内容分析法によって就学移⾏期の
体験を分析した。その結果,通常の学級に就学した発達障害児の保護者は,学校で必要と
されるスキルを練習することは効果的であると認識していることや,⼦どもへの対応を調
整し,学校と連携を図っていることが⽰された。また,通級による指導や⼦どもの友⼈関
係,管理職の特別⽀援教育に対する姿勢によって⼦どもが影響されることが⽰唆された。
研究2では,⼩学2・3年の発達障害児の保護者 15 名を対象にインタビューを⾏い,複
線径路・等⾄性モデリング(TEM)を⽤いて保護者の認識や⾏動,それに影響を与えた要
因を分析した。分析の結果,⼦どもの園への適応感と学校への適応感の組み合わせで4つ
の類型が得られ,学級担任の関わりが⼦どもの適応に与える影響は⼤きいこと,⼦どもが
園で安定しなかった保護者の多くは,学校⽣活に備えて積極的に情報収集を⾏い,学校と
主体的に情報共有を⾏っていること,就学移⾏⽀援に携わる⽀援者は⼦ども本⼈への⽀援
や移⾏⽀援だけでなく,家族⽀援や地域⽀援など多様な役割を求められていることが⽰さ
れた。
研究3では,園,⼩学校,児童発達⽀援の⽀援者計 15 名を対象にインタビューを⾏い,
グラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)を援⽤して就学移⾏期の発達障害児と保
護者に対する⽀援者の働きかけの構造を検討した。その結果,就学移⾏期の発達障害児を
⽀える園や児童発達⽀援の⽀援者は,⼦どもと保護者の⾒⽴てを⾏い,個々の⼦どもの最
善の利益となるよう⼦どもに働きかけると同時に,保護者への働きかけや⼩学校との情報
共有を⾏っていることが⽰された。また,⼩学校の⽀援者は,就学前施設からの情報共有
によって得られた内容をもとに⾒⽴てを⾏い,個々の⼦どもの最善の利益と集団⽣活への
適応を⽬標に⼦どもに働きかけつつ,保護者に対してもアプローチしていることが⽰唆さ
れた。しかし,様々な⽀援への障壁に阻まれることで就学移⾏期に⽀援が思うように進ま
ない場合があることが⽰された。
第5章では,研究1〜3の質的研究によって⽰された学校との連携などの保護者による
就学準備⾏動が,発達障害児の学校適応に与える影響を明らかにするために,縦断的研究
を⾏った。
縦断的研究に先⽴ち,研究 4-1 では,保護者からみた幼児の園への適応感尺度,研究 4-2
では保護者からみた⼩学校低学年児童の学校への適応感尺度を作成し,因⼦構造の確認と
信頼性・妥当性を検証した。
研究 4-3 では,就学移⾏が発達障害児に与える影響を年⻑から⼩学1年の3時点で評価す
るとともに,保護者が⾏う就学に向けた準備⾏動が,就学後の⼦どもの学校適応感や困難
さ,担任との関係に与える影響を検討した。155 名の発達障害児の保護者を対象に実施した
縦断的調査では,年⻑時の⼦どもの適応感や⾏動問題は就学後も継続し,年⻑時に⾏動問
題が多い⼦どもは⼩学1年夏の学校適応感が低く,⼩学1年夏の学校適応感が低い⼦ども
は⼩学1年冬の⾏動問題が多いことが明らかになった。また,年⻑時の⼦どもの⾏動問題

が多い保護者ほど学校・⽀援者との連携や学校体験を⾏い,学校・⽀援者との連携を⾏っ
た保護者ほど,⼩学1年夏時点の担任の指導に対する信頼性を認知していることが⽰され
た。さらに,⼩学校への⾒通しを持たせる働きかけを⼦どもに⾏っていた保護者ほど,⼩
学1年夏の⼦どもの⾏動問題が減少していることが⽰唆された。
第6章では,就学移⾏期の発達障害児と保護者に対する介⼊研究を実施した。
研究5では,通常の学級に就学予定の発達障害児を対象に,模擬授業場⾯における応⽤
⾏動分析学に基づいた介⼊を実施し,授業に関連した適切な⾏動や発⾔が促進され,不適
切な⾏動や発⾔が減少するか検討した。介⼊の結果,介⼊期には授業参加⾏動が持続的に
⽣起し,それに伴い授業逸脱⾏動が減少した。⾔語⾏動も同様の変化がみられたことか
ら,就学移⾏期に多様な授業参加⾏動を強化する⼿続きが⾏動問題の減少に効果的である
ことが⽰された。
研究6では,⼩学校⽣活で必要とされるルールをタブレット端末で学習するアプリケー
ションを作成し,通常の学級に就学予定の発達障害児の保護者が家庭で介⼊することによ
る効果を探索的に検証した。介⼊の結果,学校ルールの獲得が⾏われ,就学後も維持され
ることが⽰唆された。
研究7では,就学移⾏期の発達障害児の保護者を対象に,⼩学校との連携を主体的に進
められるようエンパワメントすることを⽬的とした⼼理教育プログラムを実施し,効果を
検証した。その結果,介⼊によって保護者が⼩学校⽣活を具体的にイメージすることに繋
がり,不安が軽減される可能性が⽰唆された。また,就学後は連絡帳等を介した担任との
連携や,⾏動⾯および学習⾯の配慮を学校と調整していたことが⽰されたことから,介⼊
によって保護者と学校の連携が促進されたことが⽰唆された。
第3部

総括

第3部では,本研究で得られた研究成果について総合的に考察し,得られた知⾒を整理
するとともに,本研究の意義および課題について論じた。
第1に,授業参加⾏動のような⼩学校で必要とされるスキルを⼦どもに指導するなどの
⼩学校への⾒通しを持たせる働きかけは,就学直後の発達障害児の⾏動問題を減少させる
ことが⽰唆された。その結果をふまえた介⼊研究の結果では,ASD 児の模擬授業場⾯にお
ける⼩学校で必要とされる⾏動が増加し,授業場⾯で不適切な⾏動が減少したことが⽰さ
れた。保護者によるアプリケーションを⽤いた介⼊でも学校で必要とされるルールの習得
が促進され,就学後も⼀定程度維持されたことから,⼩学校で必要とされるスキルを学習
することは,発達障害児に対する就学移⾏⽀援として妥当性が⾼いと考えられる。
第2に,保護者に関しては,学級担任による積極的なアプローチを受けることで,学級
担任と協働しながら⽀援を進めることができ,学びの場の調整など次の⽀援の展開につな
がることが⽰唆された。加えて,年⻑時に⾏動問題があった⼦どもや園で不安定だった⼦
どもの保護者は,学校や⽀援者との連携を積極的に⾏っており,連携を図った保護者ほ
ど,⼩学1年の1学期に⼦どもに合わせた指導を担任から受けていると認識していること
が明らかになった。以上の知⾒に基づいて,就学移⾏期の発達障害児の保護者が,主体的

に⼩学校と連携することを⽬的とした介⼊研究では,⼩学1年の1学期に⽀援の導⼊に向
けた話し合いを⾏い,具体的な配慮を提案していたことが⽰された。
第3に,園・学校・発達⽀援の⽀援者間の協働は,情報共有とアウトリーチ活動によっ
て進められているものの,形式的な情報共有では⽀援がつながらず,⼩学校との⽀援ニー
ズの共通理解を図ることが不可⽋であることが⽰された。しかし,発達⽀援が柔軟に⼩学
校と連携するためには,組織・制度の要因,保護者の要因,⼩学校の要因など様々な障壁
があることが⽰された。
本研究の意義について,就学移⾏期の本⼈・保護者・⽀援者の体験を可視化したことで,発
達障害児の就学移⾏の全体像を把握することに繋がり,保護者への情報提供や機関同⼠の情
報共有に本研究の知⾒が役⽴つことが期待される。また,保護者の就学移⾏⽀援に対する主
体的な参加を⽬的とした研究は他になく,保護者⽀援の発展に向けて本研究が基礎的知⾒と
なると考えられる。また,少ない⼈的コストと時間で⼩学校⽣活に関連したルールの習得が
促進されたことは,今後の ICT 技術を活⽤した介⼊研究の発展に向けた⼀助になると考えら
れる。 ...

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