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ダイズの混植栽培による生産性向上の試みと課題

YE, RONGLING 東北大学

2023.03.24

概要

論文内容要旨

ダイズの混植栽培による生産性向上の試みと課題

東北大学農学研究科
資源生物科学専攻
叶 戎玲

指導教員
本間香貴 教授

[第一章 背景と目的]

日本のダイズ(Glycine max (L.) Merr.)生産量は非常に低く,輸入に依存している。近年,国際情勢が厳しくなりつ
つあるため,日本ダイズの生産性を向上させ自給率をあげ,安定的な供給を保障することが極めて重要である。そのため
高収量性品種の育成が精力的に行われているが,生産技術の改善も必要とされている。
ダイズは茎の伸育型を決定する単一遺伝子によって有限伸育型と無限伸育型に分類され,有限伸育型は開花後まもなく
茎頂の成長が止まるに対して,無限伸育型は開花後でも茎頂で葉を分化し続け,茎の成長が続き,主茎節数や節間長さが
増やす。そのため,有限伸育型と無限伸育型は草丈や着莢位置などが大きく異なる。
従来の混植栽培は異種の作物を同一圃場・同一期間に栽培する方法であるが,近年は同一種の二品種あるいは多品種の
作物を混植し,生産性を向上することが注目されている。従来の混植栽培では高さの異なる作物を利用し,空間利用率を
高めることが利点の一つとされている。したがってダイズでも,有限伸育型と無限伸育型の特徴を利用し,混植栽培によ
って収量を増加できると考えられる。
そこで、本研究ではダイズの生産性向上を目的として,両伸育型の混植栽培の可能性を試した。

[第二章 供試系統の単植栽培における評価]

[材料と方法]
試験にはNIL(Near Isogenic Line)系統群 5 つ,RIL(Recombinant Inbred Line)系統群 1 つを供試した。5 つの NIL
系統群は有限伸育型である「刈系 739 号」

「刈系 740 号」

「東北 164 号」

「東北 162 号」

「東北 160 号」をそれぞれ反復
親として無限伸育型の「Y1312-02」に 3 回戻し交雑した系統群であり,それぞれ「K739 系統群」

「K740 系統群」

「T164
系統群」
, 「T162 系統群」

「T160 系統群」とした。RIL 系統群は「おおすず」と「Athow」の交雑後代系統群であり,
「OA
系統群」とした。各系統群は有限伸育型と無限伸育型を 5 系統ずつ含む。
2016-2020 年に全系統群,2021 年にK739・T164・T160 の 3 系統群を用いて各系統を単植栽培し,3 反復乱塊法で試験を
行った。3 粒ずつ播種し,間引きで 1 本立てにし,条間は2016-2019 年は 60 ㎝,2020-2021 年は 75 ㎝,株間は 15 ㎝とし
た。
2016-2020 年は成熟期(R8 ステージ)に全系統の百粒重と収量を計測した。2019-2021 年は K739・T164・T1603 系統群
の子実肥大始期(R5 ステージ)に主茎節数,主茎長を計測し,R8 ステージに地上部乾物重,収量,莢数と種子数を計測し
た。2019-2021 年はさらに週一回に LAI を計測し,実測値から積算気温に対する LAI 動態をシミュレーションし,両伸育
型の最大LAI および積算気温・最大LAI 増加速度および積算気温・LAI 減少速度を比較した(図 2.1)

[結果]
供試系統は収量と百粒重とも年次変動が大きく,伸育型間の差が小さかった。同じ系統群の伸育型間に成熟日数の大き
な違いはなかった。無限伸育型は有限伸育型より主茎節数が多く,主茎が長かった。R5 ステージの時点で無限伸育型は有
限伸育型より主茎を 3-5 節伸育し,K739 と T164 系統群の無限伸育型の主茎長は有限伸育型の二倍に近かった。
無限伸育型は有限伸育型より地上部乾物が大きかった。
莢数と種子数はK739系統群では無限伸育型が多い傾向を示し,
T164 と T160 系統群では有限伸育型が多い傾向を示した。収量も莢数と種子数と同様の傾向を示した。K739 と T164 系統
群では無限伸育型の最大 LAI が有限伸育型より有意に大きかった。
3系統群とも最大LAI時の積算気温と最大LAI増加速度時の積算気温は無限伸育型が有限伸育型より高かった
(表2.1)

無限伸育型は有限伸育型より遅い時期まで葉面積展開が続く傾向を示した。
[まとめ]
無限型は有限型より主茎節数が多く,主茎長が長かった。早生と中生の無限型は有限型より大きい葉面積と乾物重を持

っていた。収量と百粒重は年次によって変動が大きく,伸育型間の差が小さかった。

15
LAI
増加速度

LAI

7

10

6

5

5

0

4

-5

3

-10

2

-15

1

-20

0
0

300

600

900
1200
積算気温(℃)

1500

増加速度(LAI/1000℃)

8

-25
1800

図 2.1 LAI 動態変化の曲線と LAI 増加速度の曲線の例。

表 2.1 有限伸育型(有限)と無限伸育型(無限)の LAI 動態パラメータの比較
系統群 伸育型

K739

減少速度

5.00

(℃)
1103.55

(LAI/1000℃)
7.90

(℃)
716.86

(LAI/1000℃)
-13.55

無限

5.38

1121.89

8.39

740.70

-14.70

0.0268

0.0645

0.0481

0.1290

0.2801

有限

6.59

1096.00

10.03

659.92

-15.21

無限

6.92

1132.57

10.44

687.68

-16.41

0.0181

0.0028

0.2100

0.0188

0.0026

有限

7.03

1116.16

10.18

652.68

-15.34

無限

7.05

1138.80

10.10

681.41

-16.62

0.9148

0.0294

0.8630

0.0166

0.1290

p value
T160

最大LAI積温 最大増加速度 最大増加速度積温

有限
p value
T164

最大LAI

p value

数値は 2019-2021 年の平均値。pvalue の太字は 5%水準で有意であることを示す。

[第三章 混植効果の評価]

[材料と方法]
2016-2018 年は RHL(Residual Heterozygous Line)由来の組合せ(刈交 1222)を,2018-2020 年は K740 系統群由来の
組合せ(K740)を用いて,混植効果の評価を行った。2019-2020 年はさらに第二章で用いた他の 5 系統群からもそれぞれ
組合せを選択して供試した。各組み合わせは有限伸育型と無限伸育型をそれぞれ 1 系統ずつ含む。RHL は「おおすず」×
「Athow」由来の伸育型遺伝子をヘテロにもつ系統であり,そこから分離した有限伸育型と無限伸育型を用いた。
各組合せについて両伸育型の混植栽培と単植栽培を行った。混植栽培は有限伸育型と無限伸育型一株ずつ交互配置で栽
培した。単植栽培は第二章と同様にした。
R8 ステージに収量と地上部乾物を計測した。刈交 1222 と K740 については R5 ステージに非破壊的な方法で葉面積計測

も行った。LER(Land Equivalent Ratio)を用いて混植効果を評価した。
[結果]
混植栽培は 2018 年の K740 を除き,葉面積の合計 LER に正の効果を示した。無限伸育型の葉面積は混植栽培で促進さ
れ,LER は 0.54-0.59 の範囲で安定していた(図 3.1)
。有限伸育型の葉面積は,刈交 1222 で LER が期待値通りの 0.5 を
示したが,K740 でLER が2018 年に 0.4 と 2019 年に 0.59 と大きな変動を示した。したがって,混植栽培が葉面積に正の
効果を及ぼすためには,有限伸育型の葉面積が抑制されないことが必要であると考えられた。
混植栽培は有限伸育型の収量を抑制し,無限伸育型を促進した(図 3.2)
。両組合せでも有限伸育型の LER は 0.39-0.48
の範囲で,期待値 0.5 より低くかった。無限伸育型の LER は刈交 1222(0.62–0.75)の方がK740(0.53–0.61)より高く,
その結果刈交 1222 の合計LER はK740 より高かった。
各系統群から有限伸育型と無限伸育型を1系統ずつ選び行った混植栽培は合計LERが系統群によって異なることを検証
した(図 3.3)
。T160 系統群以外は有限伸育型 LER が 0.5 より低かった。無限伸育型 LER の増加が小さく,および有限伸
育型 LER の減少が著しい系統群は LER に負の効果があった。
[まとめ]
混植効果は系統群によって異なり,無限伸育型の増加が有限伸育型の減少を上回ることが正の混植効果が出る鍵である。

図 3.1 有限伸育型(有)と無限伸育型(無)は単植栽培(単)と混植栽培(混植)での葉面積。
(a)刈交 1222,
(b)K740。
数字は LER,エラーバーは s.e.

図 3.2 有限伸育型(有)と無限伸育型(無)は単植栽培(単)と混植栽培(混植)での収量。
(a)刈交1222,
(b)K740。
数字は LER,エラーバーは s.e.

図 3.3 各系統群の有限伸育型 1 系統と無限伸育型 1 系統の混植栽培での収量(2019-2020 年平均)
。数字はLER。

[第四章 節位別に見た葉面積と子実重に基づく混植栽培評価]

[材料と方法]
第3 章で混植栽培は収量に正の効果があった刈交1222 と負の効果があったK740 を用いて第三章と同じ栽培方法で行っ
た。R5 ステージに非破壊的な方法で各処理の節位ごとの葉面積を計測し,R8 ステージに節位ごとの子実重を計測した。
結果を評価するために有限伸育型の節位を 2 等分にし,茎頂に近い半分は上位節,子葉節に近い半分を下位節,無限伸育
型が有限伸育型より伸育した節を伸育節とした。
[結果]
単植栽培で刈交 1222 は R5 ステージに伸育節由来の葉面積が総葉面積の 30.6%を占めた(表 4.1)
。K740 は R5 ステー
ジに伸育節由来の葉面積が総葉面積の 5.8%で,下位節由来の葉面積は上位節の 2 倍以上だった。
混植栽培によって両組合せとも有限伸育型の上位節由来の葉面積が減少し,下位節由来の葉面積が増加した(表 4.2)

上位節の減少率は下位節の増加率より大きかった。刈交 1222 は上位節由来の葉面積の減少が下位節の増加より大きかっ
たため総葉面積は減少した。一方,K740 の有限伸育型は下位節由来の葉面積の増加が上位節の減少より大きく,総葉面積
は増加した。
無限伸育型は両組合せともに下位節と上位節由来の葉面積が増加し,
伸育節由来の葉面積が刈交 1222 と K740
がそれぞれ 0.2%と 1.5%を減少し,減少幅の違いにより総葉面積の増加が異なった。
刈交 1222 の節位数は有限伸育型が 16 節,無限伸育型が 25 節,伸育節は 9 節だった。単植栽培で伸育節由来の子実重
は総子実重の 15.2%を占めた(表4.1)
。K740 の節位数は有限伸育型が21 節,無限伸育型が 27 節,伸育節は 6 節だった。
単植栽培で伸育節由来の子実重は総子実重の 4.9%を占めた。両伸育型はともに下位節の子実重が高く,有限伸育型と無
限伸育型の下位節由来の子実重がそれぞれ総子実重の 73.4%と 61.7%を占めた。
混植栽培によって両組合せの有限伸育型とも全株子実重が減少し,上位節の減少率が下位節より大きかった(表 4.2)

無限伸育型は両伸育型ともに上位節と下位節由来の子実重が増加した。伸育節由来の子実重は刈交 1222 が 60.2%を増加
したのに対して,K740 が 27.6%を減少した。その結果刈交 1222 の無限伸育型は K740 より総子実重が高い増加幅を示し
た。

[まとめ]
有限伸育型の子実重の減少は生育後期の遮光による発生したと考えられ,遮光に強い有限伸育型と伸育節が多く結実性
が良い無限伸育型が混植栽培に適する。

表 4.1 単植栽培での有限伸育型と無限伸育型の葉面積と子実重
組合せ

部位

有限伸育型

伸育節

無限伸育型
1715.35

30.6%

上位節

1761.92

39.0%

2093.30

37.3%

刈交1222 下位節

葉面積(㎠)

2750.62

61.0%

1800.35

32.1%

主茎

1816.04

40.2%

3657.93

65.2%

分枝

2696.50

59.8%

1951.07

34.8%

297.96

5.8%

伸育節
K740

上位節

1283.41

27.7%

1439.91

28.1%

下位節

3355.57

72.3%

3387.30

66.1%

主茎

1353.72

29.2%

1759.28

34.3%

分枝

3285.26

70.8%

3365.89

65.7%

4.49

15.2%

伸育節
上位節

8.56

33.2%

12.95

43.8%

刈交1222 下位節

17.23

66.8%

12.14

41.0%

主茎

10.36

40.1%

17.44

59.0%

分枝

15.44

59.9%

12.14

41.0%

1.10

4.9%

子実重(g)

伸育節
K740

上位節

7.19

26.6%

7.59

33.5%

下位節

19.88

73.4%

14.00

61.7%

主茎

8.59

31.7%

7.61

33.5%

分枝

18.48

68.3%

15.08

66.5%

パーセンテージは各項目が全株に示す割合。

表 4.2 葉面積と子実重が混植栽培による変化
組合せ

部位

変化率

単植に対する割合

有限伸育型 無限伸育型

有限伸育型 無限伸育型

伸育節

-

-0.5%

-

-0.2%

刈交1222 上位節

-7.6%

13.5%

-3.0%

5.0%

下位節

2.3%

14.7%

1.4%

4.7%

伸育節

-

-25.5%

-

-1.5%

上位節

-16.8%

7.6%

-4.7%

2.2%

下位節

9.2%

11.6%

6.6%

7.3%

葉面積
K740

伸育節

-

60.2%

-

9.1%

刈交1222 上位節

-15.1%

14.8%

-5.0%

6.5%

下位節

-8.7%

14.9%

-5.8%

6.1%

伸育節

-

-27.6%

-

-1.3%

上位節

-14.3%

17.0%

-3.8%

5.7%

下位節

-12.7%

5.8%

-9.3%

3.6%

子実重
K740

「変化率」と「単植に対する割合」はそれぞれ各部位の変化が単植栽培での同じ部位の葉面積・子実重と総葉面積・子実
重に対する割合を示す。

[第五章 実際の栽培を想定した混植栽培の評価]

[材料と方法]
2018-2020 年に全系統群を用いて,2021 年に K739・T164・T160 三系統群を用いて各系統群のランダム混植栽培を行っ
た。ランダム混植栽培は一系統群の 10 系統を同数量で混ぜ合わせ後単植栽培と同じ方法で栽培し,2018-2020 年に 6 行
×20 株で,2021 年に 9 行×50 株で行った。R8 ステージに収量を計測した。2021 年はさらに各処理区で 2 列×3 株枠で無
限伸育型の比率と収量を算出した。
[結果]
6 つの系統群における,2018-2020 年の平均でランダム混植栽培は T164 系統群と T160 系統群を除き単植栽培より収量
が高かった(図5.1)

混植効果は無限伸育型の比率が高いほど高くなる傾向を示し,K739 と T164 系統群は無限伸育型が 60%以上になると,
合計 LER が正の効果を示した(図 5.2)。株あたりの子実重は無限伸育型の比率が高いほど増加し,混植栽培の変動係数
は単植栽培より小さかった(図 5.3)

[まとめ]
ダイズの伸育型の混植栽培は実際の栽培で収量を向上できる。

400

収量(g/㎡)

300

200

100

0
K739

K740

T164

T162
単植

T160

OA

ランダム混植

図 5.1 単植栽培とランダム混植栽培の収量の比較(2018-2020 年)
。単植栽培の収量は同系統群の 10 系統が単植栽培で
の平均収量。

K739
1.2
1

LER

0.8
0.6
0.4
0.2
0
0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

T164

1.2
1

LER

0.8
0.6
0.4

0.2
0
0

0.2

0.4

(次頁に続く)

0.6

0.8

1

T160

1.2
1

LER

0.8
0.6
0.4

0.2
0

0

0.2
0.4
0.6
無限伸育型の比率

無限型LER

有限型LER

0.8

1

合計LER

図 5.2 無限伸育型の比率が LER に与える影響。点は収量から算出した LER,同色の実線は各伸育型および合計 LER の期
待値。

70

(a)

子実重(g)

60
50
40
30
20
10
0

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

0.4

0.6

0.8

1

70

(b)

子実重(g)

60
50
40
30
20
10
0
0

0.2

(次頁に続く)

70

(c)

子実重(g)

60
50
40
30
20
10
0
0

0.2

0.4
0.6
無限伸育型の比率

0.8

1

図 5.3 (a)K739,
(b)T164 と(c)T160 系統群の一株当たり子実重。エラーバーは変動係数の 10 倍を示す。

[第六章 総合考察]

ダイズは伸育型の混植栽培によって生産性が向上できる。混植効果を向上させるために品種選抜が必要であり,伸育節
の節数が多く結実性が良い無限伸育型は混植栽培に適する。無限伸育型の割合が 65-85%で比較的に安定的高い収量が得
られる。
今後の研究で混植栽培による病害虫の抑制効果と倒伏の改善効果の検証が必要である。 ...

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