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大学・研究所にある論文を検索できる 「Cell mechanics in the collective migration with nematic order」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Cell mechanics in the collective migration with nematic order

上道, 雅仁 東京大学 DOI:10.15083/0002006213

2023.03.24

概要

論文審査の結果の要旨
氏名 上道 雅仁
多細胞生物を構成する細胞は、その発生過程や恒常性の維持のプロセスにおいてその位
置を動的に変化させており、そうした細胞の集団運動は多細胞システムの維持に重要な働
きを持っている。近年、異方的な形状を持つ細胞の組織を観察した結果、このような組織に
おける細胞運動とそれによるパターン形成の関係は、アクティブマターの一種であるアク
ティブ・ネマティクスとの類似性を持つことが示唆されている。アクティブ・ネマティクス
における秩序形成の理論では、異方的な力の発生と要素の長軸方向への整列として表され
るネマティック秩序との相互作用によって細胞パターンのダイナミクスが説明される。一
方で、多数の細胞が相互作用しつつ運動をする多細胞実験系では、いくつかの結果からそう
したネマティック秩序と異方的な力の発生が示唆されているものの、その力の発生が直接
的に観測されているわけではない。そのため、秩序形成をもたらす力の発生が各細胞による
ものなのか、細胞間の相互作用に起因するものなのかについては、まだ解明されていないの
が現状である。上道雅仁氏による本論文は、この多細胞生物の細胞運動について、異方的な
形状を持つ 2 種類の細胞(神経前駆細胞と平滑筋肉腫由来の SK-LMS-1 細胞)を用い、個々
の細胞および細胞集団が生成する力の定量を行い、その力場と細胞集団のネマティック秩
序を比較することにより、多細胞集団における秩序形成が力発生にどのように影響するか
を検証したものである。
本論文は 5 章から構成される。第 1 章では、生物物理学の観点から細胞運動に関する基
礎知識を説明し、その後、アクティブマターの理論と実験、特にアクティブ・ネマティクス
に関する先行研究が説明され、こうした系の生物システムに対する適応例としての多細胞
シートが紹介された。さらに、アクティブ・ネマティクスの理論に基づいて、多細胞シート
におけるパターン形成と個々の細胞による力発生との関係が解説された。最後に、牽引力顕
微鏡(Traction force microscope)を用いた力発生の定量について説明された。
第 2 章では、実験方法の詳細が説明された。まず細胞培養、牽引力顕微鏡用基板の作製、
基板剛性の測定、細胞イメージングに関して、その手法の実験詳細が説明された。さらに、
ネマティックオーダーパラメータの定量化、基板剛性の推定、基板変形と牽引力の計算、細
胞核の追跡などの解析手法が紹介された。
第 3 章では、牽引力顕微鏡による神経前駆細胞の集団移動の実験結果が示された。まず、
測定された力場、ネマティックオーダーパラメータ、そして細胞運動の流速の比較が示され、
牽引力とネマティックオーダーパラメータの空間勾配、または細胞運動の流速とネマティ
ックオーダーパラメータとの間にそれぞれ強い相関があることが示された。さらに、牽引力
とネマティックオーダーの歪みを定量的に比較することで、個々の細胞からの力発生を特
徴づけるパラメータを算出することに成功した。
第 4 章では、SK-LMS-1 細胞の実験結果を示した。まず、神経前駆細胞の場合と同様に、

測定された集団力とネマティックオーダーのパラメータを定性的・定量的に比較したとこ
ろ、力とネマティックオーダーの歪みとの間には強い相関関係があることがわかった。この
比較に伴い、力の発生強度も推定した。一方、孤立した細胞が発生する牽引力場を測定し、
力発生強度を推定することに成功した。
第 5 章では、第 3 章と第 4 章で紹介した結果を比較した。まず、SK-LMS-1 細胞を孤立
させた場合と集団化した場合の力発生を定量的に比較したところ、定性的な性質はよく一
致しているものの、孤立させた場合の力発生は小さく、細胞集団において見いだされた力発
生を説明することができないことが明らかとなった。また神経前駆細胞については、先の研
究で得られた力の強さを引用し、その結果に基づいて集団的な力の発生をシミュレーショ
ンし、本研究で測定された集団的な力の発生と比較した。この比較からも、孤立した力の強
さよりも集団的な力の方が非常に強いことが明らかとなった。この結果から、細胞間の相互
作用による力発生が細胞集団における秩序形成に大きな寄与をし得ることを示唆している。
この結果は、個々の細胞が生成する力と細胞集団の秩序形成を結びつける新規な知見であ
り、アクティブマターとしての細胞集団の理解に貢献すると評価することができる。
なお、本論文は川口喬吾博士、佐野雅己博士、樋口秀男博士との共同研究であるが、論文
提出者が主体となり実験と解析を行ったものであり、論文提出者の寄与が十分であると判
断する。
したがって、博士(理学)の学位を授与できると認める。

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