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大学・研究所にある論文を検索できる 「培養肢芽間充織細胞の自律的凝集パターン形成過程の定量解析」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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培養肢芽間充織細胞の自律的凝集パターン形成過程の定量解析

北嶋 慶一 東北大学

2021.03.25

概要

序論
 四足動物の骨格は複雑な形態を持っている。多くの骨要素が適切な大きさと位置に形成されてはじめて、機能的に働くことが可能となる。この複雑で機能的な形態は、どのようにして作られてくるのだろうか?
 多くの先行研究で、遺伝子機能解析による四肢骨格形成への影響が調べられてきた。しかし、遺伝子機能を理解するという視点は、形態形成に対する理解の一側面でしかない。実際の生物が、どのように隣接する細胞の遺伝子発現状態を認識して、順序よく規則的な形態を形成し、最終的に、全体として機能する形態を再現よく作ることができるのか。この複雑なプロセスを理解するためには、遺伝子のみに着眼するのではなく、実際の体を構成している細胞そのものの動態に着眼し、細胞がどのようにして振る舞い、規則的なパターンを作り出せるのかを理解することが不可欠だ。
 そうした細胞間相互作用に着目した四肢軟骨パターン形成研究の例として、いくつかの数理モデルが提案されている(Raspopovic et al., 2014, Mochizuki et al., 1998, Glim et al., 2014)。しかし、現在提唱されているモデルの多くは実証研究に乏しく、実際の生物でいつどんな細胞間相互作用が生じてパターン形成を行っているのかが未解明であり、本当にこれらのモデルで説明できるのかはっきりしないのが現状だ。どんなモデルが正しいのかをより正確に推定するためには、①実際の生物の細胞の振る舞いを定量化して、②それをもとにモデルを提案し、③パターン制御因子を操作することでモデルから予想されるパターンの変更を実際の生物でも再現できるのかを確かめる必要がある。
 本研究では個々の細胞に着目し、細胞運動の定量解析をすることで、体を構成する細胞集団がどんなプロセスで相互作用して遺伝子発現を制御し、秩序立った四肢軟骨パターンを形成するのか理解することを最終目標とする。

1 章micromass cultureの基礎解析
 最終目標の達成のためには、まず、四肢を形成する細胞集団の挙動を理解するための、わかりやすいシンプルな実験系を確立する必要がある。生体よりもシンプルだと思われる培養系のひとつとして、ニワトリ肢芽間充織を高密度で培養するmicromass cultureと呼ばれる培養法が挙げられる。この培養法を特定の時期のニワトリ胚肢芽間充織の細胞集団を用いて行うと、軟骨に分化する細胞凝集塊(nodule)が形成されることが知られている(Hattori and Ide, 1984)。私は、このmicromass cultureを行った際に形成される軟骨凝集塊が規則的なパターンになることに着目して、軟骨パターン形成時の細胞挙動の調査を、この培養系からはじめることにした。すなわち、ニワトリ胚肢芽間充織のmicromass cultureにおいて形成される規則的な軟骨凝集パターンがどのような細胞動態によって形成されるのかを説明することを本研究の課題とした。
 この問題を明らかにするために、本研究ではまず、micromass cultureにおいて、いつどのようなパターンができるのか、主要な遺伝子発現はいつどのように起こるのかといった基礎解析をはじめに行った。

2 章ニワトリ細胞における光刺激による遺伝子発現誘導システムの開発
 次に、micromass culture系においてパターンを時空間特異的に操作するための実験ツールの開発を行った。今後、軟骨パターン形成モデルを提案した場合に、そのモデルが実際に生物で使われていることを実証する際にパターンの操作実験が必要になる。具体的には、モデルから予想されるパターン制御因子を操作し、モデルによる予想と一致するパターンの変更を実際に引き起こすことができるのかどうかを調べることで、提案したモデルが生物で使われているのかを確かめることができる。しかし、ニワトリ胚およびニワトリ細胞において、時空間特異的に任意の遺伝子発現を操作するツールは現時点で存在しない。そこで今回、光刺激によって時空間特異的に遺伝子発現制御を行うことができるシステムの開発を行った。

3 章micoromass cultureパターン形成時の細胞集団運動の解析
 最後に、単細胞レベルでの細胞運動の定量化を前提とした、長期間ライブイメージングを行った。私は、軟骨凝集パターンを作り出す細胞同士の振る舞いをモデル化するためには、軟骨分化に先立って各細胞がどのように動き回り凝集しているのかを定量化することが必要だと考えた。細胞培養を開始してから、細胞が凝集し、規則的な凝集パターンができるまでの全プロセスのライブイメージングを行い、解析によって見えてきた問題点について報告する。

総合議論
 1章より、micromass culture系における軟骨パターン形成過程を定量化し、詳細な理解が進んだ。さらに、3章では、長時間に渡って間充織細胞集団がパターンを形成する様子を細胞レベルで観察することに成功した。今後は、撮影したライブイメージングデータをもとに、細胞の集団運動の定量解析を進めていくことが重要だと考えられる。細胞集団運動の傾向や法則性から、細胞挙動のモデル化を目指す。細胞挙動をモデル化することができたとき、そのモデルが実際の細胞で使われているのかの検証をすることになる。2章で確立した光刺激遺伝子発現制御システムは、この検証実験に最適なシステムだと言える。
 こうした方法論で、細胞挙動をもとに新たなモデルを樹立し検討することと、既存のモデルの再検討をすることで、自律的な細胞同士の相互作用によって、規則的な軟骨パターンが形成されるメカニズムを理解することが可能になるだろう。

参考文献

Glimm, T., Bhat, R., Newman, S. A. (2014 ). Journal of theoretical biology, 346, 86 -108.

Ha t t o r i , T . a n d I d e , H. (1984 ). Ex p . Ce l l R e s . 150 , 3 3 8 – 34 6.

Mochizuki, A., Wada, N., Ide, H., Iwasa, Y. (1998). Developmental dynamics: an official publication of the American Association of Anatomists, 2 11(3), 204- 214.

Raspopovic, J., Marcon, L., Russo, L., Sharpe, J.,(2014). Science, 566, 10 –15.

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