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大学・研究所にある論文を検索できる 「急性期脳卒中片麻痺者に対するロボットスーツHALを用いた歩行機能改善治療に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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急性期脳卒中片麻痺者に対するロボットスーツHALを用いた歩行機能改善治療に関する研究

渡邉, 大貴 筑波大学

2020.07.27

概要

【 研究背景 】
脳卒中は,死亡を免れても運動麻痺や歩行障害等の後遺症が残り,在宅・社会復帰が困難である.そのため,脳卒中は介護が必要になる原因の 15.1 %を占め,認知症の 18.7 %に続き,主要因となっている.2025 年には団塊の世代が後期高齢者となり,ますます障害者や介護を必要とする者が増えるとされ,介護者負担や医療費の増大など我が国の社会的な課題である.したがって,できる限り脳卒中による後遺症を減らし,脳卒中片麻痺者の自立度(歩行自立や日常生活動作の自立)を高め,在宅・社会復帰率を向上させる必要がある.
脳卒中片麻痺者の歩行は,歩行速度の低下,麻痺側単脚支持期の短縮,歩幅と時間因子の非対称性などが特徴とされ,生活期脳卒中片麻痺者の 33 %~55 %が時間・空間的に非対称性の歩行を呈している.そのため,脳卒中片麻痺者にとって歩行能力の回復や歩容の改善は非常に重要である.脳卒中治療ガイドライン 2015 によると脳卒中患者の歩行障害に対するリハビリテーションにおいて,歩行補助ロボットを用いた歩行訓練は発症 3 か月以内の歩行不能例に勧められているが,グレードは B であり,標準的は歩行練習と差がなかったとする報告もある.
近年,医療工学の進歩により理学療法分野に歩行支援ロボットが一部導入されている.ロボットスーツ Hybrid Assistive Limb(以下,HAL)は動作意図を反映した生体電位信号によって動作の補助を行うことができる装着型の人支援ロボットであり,理学療法士らにより一部の臨床で応用されている.しかし,HALを使用した歩行機能改善治療(HAL 治療)が脳卒中片麻痺者の歩容改善にどのように寄与するかは明らかではない.また,HAL 治療の効果については不明な点が多いとされ,先行研究においては,回復期・生活期の脳卒中患者を対象としているものが多く,急性期脳卒中患者に対する HAL の臨床試験を組むためのエビデンスが少ないのが現状である.HAL の急性期脳卒中患者への適応についてはその効果を示すことがなかなか難しく,多くの課題がある.急性期の病態は不安定であり,機能回復においては自然回復の要素が強いこと,歩行困難な症例が一定数含まれており,歩行評価自体が困難であること等があげられる.本研究では,急性期脳卒中片麻痺者に対する HAL 治療の安全性と実行可能性(研究プロトコルの完遂や評価指標の変動性の確認)について探索的な評価を行うことを目的とした.

【研究 1】

1. 目的
急性期脳卒中片麻痺者に対する HAL 治療について通常のリハビリテーション群(通常の平地歩行練習群)と比較して探索的な評価を加えること.

2. 対象と方法
・対象
2016 年 9 月以降に A 病院または関連病院(B~E 病院)に入院した急性期脳卒中片麻痺者で選択基準に該当した 24 名.

・方法
研究デザインは多施設共同非ランダム化比較試験とした.研究プロトコルは, HAL 群は HAL 治療,通常リハ群は通常の平地歩行練習,20 分間(1 単位)を 1回とし,週 3 回を合計 9 回(3 週間)実施した.主要評価項目は FAC(歩行自立度),副次的評価項目は,MMSE,NIHSS,下肢 12 Grade,下肢 BRS,下肢 FMA,快適歩行速度,歩幅,歩行率,6MD,BI,FIM,mRS,有害事象とした.各評価は,開始時,中間評価①(1 週間後),中間評価②(2 週間後),終了時(3 週間後)に理学療法士が実施した.

・分析方法
統計学的分析は,群内比較では Wilcoxon の符号付順位検定,変化量の群間比較では Mann-Whitney の U 検定を使用した.

3. 結果
解析対象となった患者は,HAL 群で 12 名,通常リハ群で 10 名であった.開始時のベースライン評価では,両群間で有意差は認められなかったものの背景因子の偏り(年齢,発症後期間,FAC 以外の歩行能力)が認められた.安全性や実行可能性において特に問題が無く,HAL 治療による評価指標の変動を確認することができた.HAL 群の歩行自立度は通常リハ群と比べて有意に改善した.実際に歩行した距離は HAL 群で有意に長く,治療後の自覚的運動強度は通常リハ群と同程度であった.群内比較では,両群ともに身体機能,歩行能力,ADL能力が有意に改善した.

4. 考察
急性期脳卒中片麻痺者に対するHAL 治療は,麻痺側下肢の随意性の向上,ADL能力の向上に加え早期に歩行自立度を改善させる可能性があり,介助歩行が必要な急性期患者への適応が考えられる.歩行治療として HAL を利用することで自覚的な疲労が少ない状態で,連続した歩行が可能であり,歩行量の確保につながったと考える.革新的な技術や動作支援を利用することで,質の高い歩行治療を提供でき,歩行改善が得られると考える.

5. 結論
適切な動作を効率良く反復できるロボット技術の特性は,介助歩行が必要な急性期脳卒中片麻痺者においても活用でき,更なる歩行機能の改善が得られる可能性がある.

【研究 2】

1. 目的
急性期脳卒中片麻痺者に対する HAL 治療の歩容改善効果を運動学的に分析し,歩行時の時間・空間的変数への影響から HAL 治療のメカニズムについて検討す ること.

2. 対象と方法
・対象
2016 年 9 月以降にA 病院に入院した急性期脳卒中片麻痺者で選択基準に該当した 12 名とした.(研究 1 の HAL 群のデータのみを抽出した)

・方法
研究デザインは単群前後比較試験とした.研究プロトコルは,HAL 治療を 1回 20 分間(1 単位)とし,週 3 回合計 9 回(3 週間)実施した.アウトカムとしては,研究 1 の主要・副次的評価項目に加え,3 次元動作分析装置を用いた歩容解析(歩行時の時間・空間的変数と対称性)とした.
各評価は,開始時(HAL 治療前)と終了時(HAL 治療後)に理学療法士が実施した.

・分析方法
統計学的分析は,Wilcoxon の符号付順位検定を使用し,各評価の効果量を算出した.対称性は,麻痺側/非麻痺側で算出した.

3. 結果
運動学的分析では,特に麻痺側の単脚支持期と非麻痺側歩幅が有意に増大し,単脚支持期の対称性が有意に改善した.その他,股関節伸展角度,歩幅の対称性においては改善する傾向を認めたが,有意差は認められなかった.

4. 考察
HAL 治療の実施により麻痺側下肢のアシストが可能であり,HAL 着脱後の麻痺側単脚支持期の増大,非麻痺側歩幅の増大,単脚支持期の対称性の獲得に寄与したと考える.HAL の利用による麻痺側下肢の機能改善が歩行能力の向上に寄与していると考えられた.HAL 治療は,運動意図に応じて麻痺側下肢がアシストされ,歩行時の時間・空間的変数を変動させることが可能であり,理想的な歩容での動作反復(運動学習)が実現できる可能性が示唆された.

5. 結論
急性期脳卒中片麻痺者に対する HAL 治療は,早期より麻痺側下肢を活用した歩容で歩行動作の反復(運動学習)が可能であり,脳卒中患者の対称性歩容の獲得に寄与する可能性がある.

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