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大学・研究所にある論文を検索できる 「Hypoxia-induced thyroid hormone receptor expression regulates cell-cycle progression in renal tubule epithelial cells」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Hypoxia-induced thyroid hormone receptor expression regulates cell-cycle progression in renal tubule epithelial cells

花井 俊一朗 山梨大学

2022.03.18

概要

【背景】
腎代替療法を要する末期腎不全の原因となる慢性腎臓病(CKD)の患者数の増加は、本邦に限らず世界的な社会問題である。尿細管間質の線維化は、CKDの原因疾患によらず腎予後を規定する因子であると報告され、CKD悪化と尿細管間質障害は強く関連していると考えられる。尿細管上皮細胞は、酸素消費が多いが、細動静脈シャントがあり酸素取り込み効率が悪く低酸素状態に陥りやすい。さらにCKDでみられる尿細管間質の線維化は、慢性低酸素を悪化させる。低酸素誘導因子(HIF)は、低酸素に対する防御機構としてエリスロポエチンや血管内皮増殖因子の発現を誘導することに加えて、糖代謝や鉄代謝、細胞分化増殖などホメオスタシス維持に関与する転写因子である。

腎障害時の尿細管上皮細胞の過剰な細胞増殖は「不適切な組織修復」と「線維化の悪化」につながることが知られている。私たちは、甲状腺ホルモン受容体β(TRβ)が、T3存在下で細胞周期抑制因子p21を介して甲状腺癌細胞増殖を抑制することを報告してきた。TRβ蛋白は哺乳類の腎臓で高用量発現し、甲状腺ホルモンシグナルと腎機能の臨床的関連が検討されているが、そのメカニズムについては明らかになっていない。

【目的】
慢性的な低酸素状態にあるCKDにおけるHIFと尿細管上皮細胞の細胞周期とに着目し、尿細管上皮細胞におけるTRβの発現制御と細胞周期調節との関連を明らかにすることを目的とした。

【方法】
2019年度に腎生検を行ったCKD患者全38名(糖尿病性腎症:11、腎硬化症:10、IgA腎症:13、微小変化群:4)とコントロール6名(移植腎)の腎生検組織を用いて、シリウスレッド染色により線維化を、免疫組織染色によりHIF1α、TRβ、p21蛋白の発現を検討した。ヒト腎近位尿細管由来培養細胞(HK-2細胞)を通常酸素と低酸素(1%)条件下で培養し、HIF1α、TRβの発現をリアルタイムPCRとウェスタンブロッティングにより解析した。さらに、このHK-2細胞を用い、クロマチン免疫沈降法(ChIP)により低酸素下でのHIF1αのTRβプロモーターの作用について検討し、ヒトTRβプロモーターDNAを用いレポーターアッセイを行い、低酸素、HIF1αによるTRβ転写調節を解析した。フローサイトメトリーを用いて、低酸素下の尿細管上皮細胞の内因性TRβの細胞周期調節を解析した。

【結果】
腎生検組織において、CKD群ではコントロール群と比較して尿細管上皮細胞におけるHIF1α蛋白が増加し、HIF1α発現量と尿細管間質の線維化は相関した。TRβ蛋白は主に近位尿細管上皮細胞に発現し、CKD群で発現量は増加していた。また、p21蛋白は、コントロール群ではほとんど発現がみられなかったが、糖尿病性腎症では近位尿細管上皮細胞で発現が増加し、TRβ蛋白陽性細胞で特に発現が増加していた。

In vitroの解析において、ヒトTRβプロモーター領域には、低酸素応答性領域(HRE)が存在し、ChIPアッセイで、低酸素曝露HK-2細胞ではHIF1α蛋白のTRβプロモーターのHREへの直接的結合の増加が明らかになった。レポーターアッセイでは、低酸素によるTRβの転写活性化がみられたが、HRE領域を変異させたTRβプロモーター導入では、低酸素曝露によるルシフェラーゼ活性の増加はみられなかった。低酸素曝露HK-2細胞ではHIF1αおよびTRβのmRNAと蛋白発現が増加した。HIF1αcDNAの遺伝子導入によりHK-2細胞ではTRβ、p21蛋白の発現が増加した。siRNAを用いてTRβをノックダウンさせると、低酸素曝露によるp21蛋白増加はみられなかった。低酸素曝露したHK-2細胞はG0/G1期の細胞が増加するが、TRβノックダウンHK-2細胞ではG0/G1期の増加はみられなかった。

【考察】
低酸素環境にある尿細管上皮細胞ではHIF1α蛋白の発現の増加は、TRβの増加を介してp21発現を誘導する。このp21発現誘導は、G0/G1期細胞割合を増加させ、細胞周期を制御している。尿細管上皮細胞におけるG1期での生理的な細胞周期停止は、虚血による細胞障害に対して速やかに修復を開始するための準備機構であり、TRβはその調節因子と考えられる。ヒト腎組織の検討でも、CKD腎組織では尿細管上皮細胞ではTRβおよびp21蛋白の発現が増加しており、in vitroの結果を支持するものであった。

【結論】
TRβはHIF1αによって発現制御をうけ、慢性的な低酸素下にあるCKDの尿細管上皮細胞で保護的に作用しており、CKD進展抑制の新たな治療標的になりうる可能性がある。

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