リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「黄麹菌Aspergillus oryzaeにおける糖タンパク質分泌に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

黄麹菌Aspergillus oryzaeにおける糖タンパク質分泌に関する研究

李, 秋実 LI, QIUSHI リ, シュウジツ 九州大学

2020.03.23

概要

バイオ医薬品は、少ない副作用で高い薬効が得られることから、需要が拡大している。しかし、現在の哺乳動物細胞での生産系では、コストの高さや生産されたバイオ医薬品糖タンパク質の糖鎖部分が不均一であることが課題となっている。また、異なる生物種によって生産された糖タンパク質は、その宿主特有の糖鎖が修飾されることで薬効が発揮されないばかりか副作用のリスクも存在する。そのため、均一な糖鎖構造を持つ糖タンパク質の生産方法が求められている。現在、均一な糖鎖構造を持つ糖タンパク質を酵素化学学的に調製するため、エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(ENGase)を利用する方法が主に用いられている。この方法では、不均一な糖鎖を有する糖タンパク質を ENGase により N-結合型糖鎖を切断し、N-アセチルグルコサミン (GlcNAc)が 1 分子残存した GlcNAc-タンパク質を調製後、均一な糖鎖を ENGase により転移させる。そこで、直接 GlcNAc-タンパク質を大量生産する新たな手法として、異種タンパク質分泌生産の宿主によく利用されている黄麹菌 Aspergillus oryzae に着目した。黄麹菌は古くから日本において日本酒、味噌、醬油といった醸造産業に使用されてきた有用な微生物であり、安全性が確認されている。糸状菌 Hypocrea jecorina 由来の ENGase (EndoT) を黄麹菌のゴルジ体膜に発現させることで、GlcNAc-タンパク質を分泌生産することが期待できる(Fig. 1)。本研究は、黄麹菌における N 結合型糖鎖欠損糖タンパク質を分泌生産することを目的とし、その生産株(AoGlycoDelete 株)の作製および諸性質の解析を行った。

1) 黄麹菌における GlcNAc-タンパク質生産(AoGlycoDelete)株の作製
まず、黄麹菌のゴルジ体膜に局在すると推定される膜タンパク質 4 種類を選抜した。それらの膜貫通領域(TM 領域)と黄麹菌用にコドン最適化した EndoT を発現するプラスミドを構築し、4 種類の AoGlycoDelete 候補株を作製した。これらの 4 種類のAoGlycoDelete 候補株を野生株とともに DPY 液体培地で培養し、培養上清を SDS-PAGE に供した結果、野生株由来の一つの N 結合型糖鎖を持つ α-アミラーゼのバンドサイズに比べて 4 種類の AoGlycoDelete 候補株由来の α-アミラーゼの分子量が減少したことが確認された。このことから、作製した 4 種類の AoGlycoDelete 候補株は N結合型糖鎖を欠損した α-アミラーゼを分泌生産することが示された。

2) AoGlycoDelete 株の生育および EndoT の局在解析
野生株および 4 種類の AoGlycoDelete 候補株を DPY 寒天培地に植菌し、30℃と 37℃で 48 時間培養した。その結果、4 種類の AoGlycoDelete 候補株の内、分裂酵母 Omh1 オルソログである AO090102000391 の TM 領域を使用した TM391-EndoT 発現株において、野生株に比べてコロニー形態の異常が観察された。これは細胞表面の糖タンパク質糖鎖が EndoT によって切断され、正常な細胞形態の維持ができなくなったためと考えられた。また、AoGlycoDelete 株における EndoT の細胞内局在を観察するために、EndoT の EGFP 融合型発現株を作製した。蛍光顕微鏡解析により、いずれの AoGlycoDelete 候補株でも EndoT-EGFP はドッド状の蛍光として観察され、さらに、 TM391-EndoT-EGFP 発現株にゴルジ体マーカーを共発現することでEndoT がゴルジ体に局在することを確認した。そこで以降の実験には、TM391-EndoT 株を AoGlycoDelete 株として解析を行った。

3) AoGlycoDelete 株を用いた AmyB-HA、GlaA-HA の分泌生産
野生株および TM391-EndoT 株を用いて、α-アミラーゼである AmyB、グルコアミラーゼである GlaA の HA タグ融合発現株を作製し、分泌生産された AmyB-HA、GlaA-HA を精製した後、Intact MSおよび N-glycan 解析に供した。その結果、AoGlycoDelete 株由来の AmyB-HA、GlaA-HA では GlcNAcが 1 分子残存し、さらに N-結合型糖鎖が検出されなかった。以上の結果から AoGlycoDelete 株は N-結合型糖鎖を欠損した GlcNAc-AmyB、GlcNAc-GlaA を生産することが示された。

以上の結果から、AoGlycoDelete 株を用いた GlcNAc アミラーゼの分泌生産が確認され、今後様々な有用糖タンパク質由来の GlcNAc タンパク質を分泌生産する宿主としての利用が期待される。

この論文で使われている画像

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る