リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「前十字靱帯損傷膝における腸脛靱帯Kaplan線維合併損傷が膝前外側回旋不安定性に及ぼす影響」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

前十字靱帯損傷膝における腸脛靱帯Kaplan線維合併損傷が膝前外側回旋不安定性に及ぼす影響

渡邉, 秀 神戸大学

2023.03.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

Influence of Injury to the Kaplan Fibers of the
Iliotibial Band on Anterolateral Rotatory Knee
Laxity in Anterior Cruciate Ligament Injury: A
Retrospective Cohort Study

渡邉, 秀
(Degree)
博士(医学)

(Date of Degree)
2023-03-25

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8608号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100482356
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

(課程博士関係)

学位論文の内容要 旨

Influence of Injury to the Kaplan Fibers of the Iliotibial Band
on Anterolateral Rotatory Knee Laxity
in Anterior Cruciate Ligament Injury:
A Retrospective Cohort Study
前十字靱帯損傷膝における腸脛靱帯 Kaplan 線維合併損傷が
膝前外側回旋不安定性に及ぼす影響

神戸大学大学院医学研究科医科学専攻
整形外科学
(指導教員:黒田
渡邉

良祐教授)


【背景】
前十字靱帯(anterior cruciate ligament: ACL)損傷膝における膝前外側回旋不安定性への
潜在的な寄与に関して、膝前外側支持機構(anterolateral complex: ALC)が注目されてい
る。ALC は腸脛靱帯(iliotibial band: ITB)およびその大腿骨遠位付着部である Kaplan 線
維、前外側靱帯(anterolateral ligament: ALL)と前外側関節包から構成される。屍体膝を
用いた生体力学的研究では、ACL 損傷膝において Kaplan 線維損傷の膝前外側回旋不安定性
への寄与が示されている。一方、最近の臨床研究では、ACL 損傷膝において Kaplan 線維損
傷は前外側回旋不安定性と関連しないことが示されており、いまだ一定の見解は得られてい
ない。臨床現場で前外側回旋不安定性を評価する徒手検査は pivot-shift test である。この検
査は膝伸展位で下腿を内旋し、膝関節に外反・軸圧ストレスをかけながら屈曲することで前
方へ亜脱臼した脛骨が後方に整復される現象を 4 段階で評価するものである。Pivot-shift
test を定量化するシステムはいくつか報告されており、そのうちの一つである三次元電磁気
センサーシステム(electromagnetic measurement system: EMS)は、脛骨後方整復時の加
速度を計測し、高い診断信頼性を持つことが示されている。
【目的】
本研究の目的は、magnetic resonance imaging(MRI)を用いて ACL 損傷膝に併存する
Kaplan 線維損傷を検出し、EMS による pivot-shift test の定量的評価を用いてその膝前外
側回旋不安定性への影響を検討することである。ACL 損傷で Kaplan 線維損傷を合併した場
合、Kaplan 線維損傷がない膝に比べ pivot-shift 現象が大きい、という仮説を立てた。
【研究デザイン】
横断研究、エビデンスレベル 3
【方法】
ACL 損傷後 90 日以内に MRI を施行した 91 例(平均年齢 25±11 歳、男性 46 例/女性 45
例)を対象とした。過去に報告された方法に基づき、1.5-T または 3.0-T MRI を用いて
Kaplan 線維損傷の有無を評価し、Kaplan 線維損傷群と非損傷群の 2 群に分類した。
Kaplan 線維は、1 つの直接徴候または 2 つの間接徴候を満たす場合に損傷ありとした。直
接徴候は、(1)Kaplan 線維の不連続性、
(2)Kaplan 線維大腿骨付着部の剥離であり、間
接徴候は、(1)Kaplan 線維の肥厚および/または信号変化、(2)Kaplan 線維付着部の大
腿骨骨髄浮腫、(3)Kaplan 線維周囲軟部組織の浮腫、(4)Kaplan 線維の波状化である。
ACL 再建術前に全身麻酔下で pivot-shift test を行い、EMS を用いて脛骨後方整復時の加速
度(m/s2)を計測した。また、International Knee Documentation Committee’s guidelines
に準じた pivot-shift test の主観的 4 段階評価(グレード 0~3)も行った。グレード 0、1 を
low grade、グレード 2、3 を high grade とした。前外側回旋不安定性に影響を与えうる因
子である半月板損傷の有無は術中関節鏡所見で診断した。側副靱帯損傷は MRI および徒手
検査にて診断した。また ALL 損傷は、過去の報告に基づき MRI にて診断した。データ分布

の正規性の検討には Shapiro-Wilk 検定を行い、Mann-Whitney の U 検定を用いて Kaplan
線維損傷群・非損傷群の 2 群間で脛骨加速度を比較した。主観的 4 段階評価は、Fisher の正
確確率検定を用い、併存損傷の頻度はカイ二乗検定を用いて 2 群間で比較検討した。
【結果】
Kaplan 線維は 91 例中 85 例(93.4%)で同定され、85 例中 20 例(23.5%)に Kaplan 線維
損傷を認めた。損傷群 20 例と非損傷群 65 例において、患者背景、受傷から MRI までの期
間(8.0±14.0 日 vs 8.9±12.1 日)・内側半月板損傷率(30.0% vs 32.3%)・外側半月板損傷
率(35.0% vs 40.0%)・内側側副靱帯損傷率(20.0% vs 16.9%)・外側側副靱帯損傷率
(5.0% vs 0%)・ALL 損傷率(45.0% vs 44.6%)に有意差を認めなかった。Pivot-shift test
については、脛骨加速度(1.2 m/s2 [四分位範囲, 0.5-2.1] vs 1.0 m/s2 [四分位範囲, 0.61.7])および主観的 4 段階評価ともに 2 群間で有意差を認めなかった。
【考察】
本研究の主な発見は、ACL 損傷膝において、Kaplan 線維損傷の併存は pivot-shift test 時の
脛骨後方加速度、主観的 4 段階評価に有意な影響を及ぼさなかったという点である。また、
Kaplan 線維損傷群と非損傷群では、半月板損傷、側副靱帯損傷、ALL 損傷などの合併損傷
の有無に有意差は認められなかった。以上から、ACL 損傷膝において、Kaplan 線維の膝前
外側回旋不安定性への寄与は限定的と考えられた。
屍体膝を用いた生体力学的研究では、ACL 損傷膝で膝屈曲 0°、30°、60°、90°肢位
および疑似 pivot-shift テストにおける脛骨内旋の制動には、Kaplan 線維が寄与することが
示されている。また別の研究では、ACL 損傷膝では、特に膝屈曲角度が 60°より深くなる
と、Kaplan 線維の脛骨内旋制動への寄与が ALL よりも大きくなることが示されている。し
かし、今回の臨床研究では、仮説とは異なり、Kaplan 線維損傷は前外側回旋不安定性に有
意な影響を示さなかった。近年報告された臨床研究では、ACL 損傷患者 267 名において、
Kaplan 線維損傷の合併は pivot-shift test における不安定性の増大に寄与しなかったことが
示されおり、この報告は本研究結果を支持するものである。過去の報告と比べ本研究が斬新
な点としては、過去の研究では pivot-shift test が主観的 4 段階評価のみであったのに対し
て、本研究では EMS を用いて pivot-shift test を定量評価した点である。また、ALL 等の合
併損傷は 2 群間で有意差はなく、本研究では合併損傷による交絡バイアスは少ないと思われ
た。近年、膝前外側回旋不安定性の大きい症例に対して前外側腱補強術や ALL 再建術を追
加する方法が報告されているが、その適応についてはいまだ議論の余地がある。本研究結果
から考えると、MRI で診断された Kaplan 線維損傷の併存のみでは、前外側腱補強術などの
追加処置を行う根拠とはならない可能性が考えられた。
生体力学的研究と臨床研究の結果が相違している理由としては、生体力学的研究では治癒
などの要素がない一方、臨床研究においては MRI 撮影から pivot-shift test 施行まで一定期
間が経過しており、その間に損傷軟部組織の治癒が進んだ可能性が考えられる。また、
Kaplan 線維損傷を含む ALC 損傷の屍体膝モデルでは、前外側関節包や ALL だけでなく、

Kaplan 線維を含む ITB も広範囲に切離し、臨床現場では考えがたいような重度の損傷を作
成し実験が行われていた点も一因であると思われた。
MRI における Kaplan 線維の同定については、3.0-T MRI の矢状断で ACL 正常膝の 96%
で Kaplan 線維を同定できたと報告されており、これは本研究の同定率(93.4%)とほぼ同
様であった。また、Kaplan 線維の損傷率は 17.4%~53.8%と文献により様々であるが、こ
れは診断基準の違い、対象基準の違い、または MRI プロトコルの違いに起因している可能
性があると考えられた。
【結論】
ACL 損傷膝で Kaplan 線維損傷を合併しても pivot-shift 現象の有意な増大は認めなかっ
た。屍体膝での研究結果とは異なり、実際の ACL 損傷患者では Kaplan 線維損傷の前外側
回旋不安定性への寄与は少ない可能性が示唆された。

神 戸 大 学 大 学 院 医 学(
系)
研 究 科 (博 士課程)



甲第

3273 号



受付番号

文 審 査 の 結 果 の 要 旨


渡邊秀

I
n
f
l
u
e
n
c
eo
fI
n
j
u
r
yt
ot
h
eKaplanF
i
b
e
r
so
fth
eI
l
i
o
t
i
b
i
a
lBand

論文題目

T
i
t
l
eo
f
D
i
s
s
e
r
t
a
t
i
o
n

onA
n
t
e
r
o
l
a
t
er
a
lR
o
t
a
t
o
r
yKneeLaxity
i
nA
n
t
e
r
i
o
rC
r
u
c
i
at
eLigamentI
n
j
u
r
y
:
AR
e
t
r
o
s
p
e
c
t
i
v
eCohortStudy
前十字靱帯損傷膝における腸腔靱帯 Kaplan線維合併損傷が
膝 前外側 回 旋不安定性に及ぼす影需

主 査
審査委員

Examiner

ChiefExamin
er
副 査

v
1
c
e
e
x
a
m
1
n
er
副 査

v
1
c
e
e
x
a
m
1
n
e
r

灯上 身 這
ぐ叶ダこ

r
ぇ仇扉t

(要旨は 1, 000字 ∼ 2, 000字程度)


背景】
前十字靱帯 (
a
n
t
e
r
i
o
rc
r
u
c
i
a
t
el
i
g
a
m
e
n
t
:ACL) 損傷膝における膝前外側回旋不安定性へ
の潜在的な寄与に関して 、膝前外側支持機構 (
a
n
t
e
r
o
l
a
t
e
r
a
lc
o
m
p
l
e
x
:ALC) が注目され
ALCは腸腔靱帯 (
i
l
i
o
t
i
b
i
a
lband:ITB)お よびその大腿骨遠位付着部である Kaplan
ている 。
線維、前外側靱帯 (
a
n
t
e
r
o
l
a
t
e
r
a
ll
i
g
a
m
e
n
t
:ALL
) と前外側 関節包から構成される 。屍 体
膝を用いた生体力学的研究では、 ACL損傷膝において Kaplan線維損傷の膝前外側回旋不
安定性への寄与が示されている。一方、最近の臨床研究では、 ACL損傷膝において Kaplan
線維損傷は前外側回旋不安定性と関連しないことが示されており、いまだ一定の見解は得
られていない。臨床現場で前外側回旋不安定性を評価する徒手検査は p
i
v
o
t
s
h
i
f
tt
e
s
tであ
る。この検査は膝伸展位で下腿を 内旋し 、膝関節に外反 ・軸圧ストレスをかけながら屈曲
することで前方へ亜脱臼した腔骨が後方に整復される現象を 4 段階で評価するものであ

。 P
i
v
o
t
s
h
i
f
tt
e
s
tを定量化するシステムはいくつか報告されており、そのうちの一つで
el
e
c
t
r
o
m
a
g
n
e
t
i
cmeasur
e
me
ntsystem:
EMS)は

ある三次元電磁気センサーシステム (
腔骨後方整復時の加速度を計測し、高い診断信頼性を持つことが示されている。
【目的 】
本研究の目的は、 m
agneticr
e
s
o
n
a
n
c
eimaging (
MRI) を用いて ACL損傷膝に併存する

Kaplan線維損傷を検出し、 EMSによる p
i
v
o
ts
h
i
f
tt
e
s
tの定量的評価を用いてその膝前外
側回旋不安定性への影響を検討することである 。ACL損傷で Kaplan線維損傷を合併した
場合、 Kaplan線維損傷がない膝に比べ p
i
v
o
t

s
h
i
f
t現象が大きい、という仮説を立てた。

方 法】

ACL損傷後 90日以内に MRIを施行した 91例(平均年齢 25土 1
1歳、男性 46例/女性
45例
) を対象とした。過去に報告された方法に基づき、 1
.
5
Tまたは 3.0-TMRIを用いて
Kaplan線維損傷の有無を評価 し
、 Kaplan線維損傷群と非損傷群の 2 群に分類した。
Kaplan線維は、 1つの直接徴候または 2つの間接徴候を満たす場合に損傷ありとした。直
1
)Kaplan線維の不連続性、 (
2)Kaplan線維大腿骨付着部の剥離であり、間
接徴候は、 (
接徴候は、 (
1
)Kaplan線維の肥厚および/または信号変化、 (
2
)Kaplan線維付着部の大
腿骨骨髄浮腫、 (
3
) Kaplan線維周囲軟部組織の浮腫、 (
4
) Kapl
an線維の波状化である 。
ACL再建術前に全身麻酔下で p
i
v
o
ts
h
i
f
tt
e
s
tを行い、 EMSを用いて腔骨後方整復時の加
m/
s
2
) を計測した。 ま た 、 I
n
t
e
r
n
a
t
i
o
nalKnee Docum
e
n
t
a
t
i
o
n Committee's
速度 (
i
v
o
t
s
h
i
f
tt
e
s
tの主観的 4段階評価(グレード 0 3) も行った。グ
g
u
i
d
el
i
ne
sに準じた p
レード 0、 1を lowg
rade、グレード 2、3を highg
r
adeとした。前外側回旋不安定性に影
響を与えうる因子である半月板損傷の有無は術中関節鏡所見で診断した。側副靱帯損傷は

MRIおよび徒手検査にて診断した。また ALL損傷は、過去の報告に基づき MRIにて診断

生体力学的研究と臨床研究の結果が相違している理由としては、生体力学的研 究では治癒
などの要素がない一方、臨床研究においては MRI撮影から p
i
v
o
ts
h
i
f
tt
e
s
t施行まで一定
期間が経過しており 、その間に損傷軟部組織の治癒が進んだ可能性が考えられる 。 また、

Kaplan線維損傷を含む ALC損傷の屍体膝モデルでは、前外側関節包や ALLだけでなく、
Kaplan線維 を含む ITBも広範囲に切離し 、臨床現場では考えがたいような重度の損傷を
作成 し実験が行われていた点も一因であると思われた。

MRIにおける Kaplan線維の同定については、 3.0・TMRIの矢状断で ACL正常膝の 96%
で Kap
l
an線維を同定できたと報告されており、これは本研究の同定率 (
9
3
.
4
%
) とほぼ
同様であった。また、 Kap
l
an線維の損傷率は 1
7
.
4%
,
,
.
.
.
_
,
53
.
8%と文献により様々であるが、
これは診断基準の違い 、対象基準の違い 、または MRIプロ トコルの違いに起因している可
能性があると考えられた。

結論 】

ACL損傷膝で Kaplan線維損傷を合併しても p
i
v
o
ts
h
i
f
t現象の有意な増大は認めなかっ
た。屍体膝での研究結果とは異なり、実際の ACL損傷患者では Ka
plan線維損傷の前外側
回旋不安定性への寄与は少ない可能性が示唆された。
本研究は,ACL損傷膝における膝前外側回旋不安定性への潜在的な寄与について 、その原
因としての ALCの関与を研究したものであるが、従来ほとんど行われなかった Kaplan線
維損傷の前外側回旋不安定性への寄与について重要な知見を得たものと して価値ある集積
であると認める 。 よって,

本研究者は,

博士( 医学)の学位を得る資格があると認める。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る