真核生物の細胞内共生後のアミノアシルtRNA合成酵素の進化
概要
令和 4 年度
京都大学化学研究所 スーパーコンピュータシステム 利用報告書
真核生物の細胞内共生後のアミノアシル tRNA 合成酵素の進化
Eukaryote aminoacyl-tRNA synthetase evolution after endosymbiont
東京大学大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻 岩崎研究室
浜口 悠貴
研究成果概要
本研究では、京都大学化学研究所スーパーコンピュータシステムを利用し、様々な真核生
物のミトコンドリアアミノアシル tRNA 合成酵素(mt-ARS) 20 種の包括的な系統学的解析を行
った。対象とした生物群を以下に列挙する。
オピストコンタ:後生動物などから成る Metazoa、Choanoflagellate、真菌類の担子菌門や子嚢
菌門、ツボカビ類や接合菌類などから成る Basal Fungi linage、単細胞ホロゾア Capsaspora
owczarzaki、 アプソゾア Thecamonas trahens、ヌクレアリア類 Fonticula alba
アメーボゾア: Dictyostelium discoideum などの粘菌や Acanthamoeba castellanii
アーケプラスチダ:緑藻類・紅藻類・灰色藻類
SAR スーパーグループ:珪藻類、偽菌類、Bigyra、繊毛虫類、アピコンプレクサ類、クロメラ類、
褐虫藻、ネコブカビ類 Plasmodiophora brassicae、クロララクニオン藻類 Bigelowiella natans
ハプト藻類: Emiliania huxleyi や Chrysochromulina parva などの円石藻類
クリプト藻類:Guillardia theta、Cryptophyceae sp. CCMP2293
Discoba: Naegleria gruberi や Andalucia godoyi などの盤状クリステ類
Metamonoda : Streblomastix strix、Monocercomonoides exilis などのミトコンドリアが退化、も
しくは消失した生物種
20 種の ARS の最尤樹は、ミトコンドリア共生成立後に真核生物の mt-ARS が複数回 水平
伝播(HGT)されたことを強く示唆するものであった。その結果、複数の最近が HGT ドナーであ
ると推定された。また、真核生物 27 クレード間で、HGT の頻度も HGT ドナーも大きく異なって
おり、特に光合成真核生物クレードの mt-ARS は多くの細菌から HGT をうけていることが明ら
かになった。これらのデータは、ほぼ 全ての mt-ARS が複数の起源を持ち、いくつかの真核生
物クレードで細菌性 ARS に置き換えられたこと、mt-ARS の起源と進化の道
筋が従来予想されていたよりも多様であることを示すものであった。 ...