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大学・研究所にある論文を検索できる 「CYP1A1は軟部血管線維腫の診断に有用なマーカーである」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

CYP1A1は軟部血管線維腫の診断に有用なマーカーである

植村, 光太郎 神戸大学

2023.09.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

CYP1A1 Is a Useful Diagnostic Marker for
Angiofibroma of Soft Tissue

植村, 光太郎
(Degree)
博士(医学)

(Date of Degree)
2023-09-25

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8699号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100485883
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

(課程博士関係)

学位論文の内容要旨

CYP1A1 Is a Useful Diagnostic Marker for
Angiofibroma of Soft Tissue
CYP1A1 は軟部血管線維腫の診断に有用なマーカーである

神戸大学大学院医学研究科医科学専攻
小児外科学
(指導教員:尾藤 祐子 教授)

Kotaro Uemura
植村 光太郎

【はじめに】
軟部血管線維腫 angiofibroma of soft tissue (AFST)は Marino-Enriquez と Fletcher らに
よって 2012 年に報告された良性の軟部組織腫瘍である。AFST の分子遺伝学的特徴として、
t(5;8)(p15;q13)の染色体転座を認め、その結果 AHRR (aryl hydrocarbon receptor repressor)-

NCOA2 (nuclear receptor coactivator 2)、もしくは NCOA2 -AHRR の相互転座による遺伝
子融合が見られる。稀な融合遺伝子として GTF2I (general transcription factor 2-I)-NCOA2
あ る い は GAB1 (GRB2-associated-binding protein 1)-ABL1 (tyrosine receptor kinase
ABL1)がそれぞれ 1 例ずつに報告されている。AFST の病理組織像は異型のない均質な紡錘
形細胞の腫瘍性増殖と、その間隙を縫うように壁の薄い細かい血管の増生が特徴的である。背
景は粘液性、線維性の間質が混在し、部位によって様々な組織学的スペクトラムを示す。
【研究の背景】
前述のように AFST は特徴的な病理組織像を認めるものの、幅広い組織形態学的スペクト
ラムを示すため、粘液線維肉腫、孤在線維性腫瘍、粘液型脂肪肉腫などの悪性のものを含むさ
まざまな軟部組織腫瘍との鑑別が、病理組織学的に困難であることが知られている。AFST の
診 断 に お い て は Fluorescence in-situ hybridization (FISH) や reverse transcription
polymerase chain reaction (RT-PCR)によって変異遺伝子を同定する方法などの報告はある
が、臨床病理の場において簡易に高精度で適応できる診断マーカーは存在しない。融合遺伝子
により転写調節を受けるマーカーを用いた免疫染色 (immunohistochemistry: IHC)は、臨床
病理において Ewing 肉腫などの診断に応用されているが、既知の軟部組織腫瘍の鑑別に用い
られる IHC マーカー (EMA, S100, SMA, Desmin, CD34, STAT6, ER など)は AFST の診断
には有用ではないと報告されている。2012 年に報告された AFST の包括的遺伝子発現解析
で、染色体転座の結果合成されたキメラ遺伝子の発現によって AhR/ARNT (aryl hydrocarbon
receptor/AhR nuclear translocator) シグナル系の標的遺伝子であるシトクロム p450 1A1
(CYP1A1)の発現が、粘液線維肉腫と比較して亢進していることが明らかにされた。このこと
から、CYP1A1 が AFST の診断に有効な簡便な IHC マーカーとなりうるのではないかとい
う仮説を立てた。
【研究の目的】
AFST と鑑別すべき類似疾患における CYP1A1 の発現を IHC によって明らかにし、AFST
の病理診断において CYP1A1 の IHC に診断的有用性があるかを調べることを目的とした。

【対象】
AFST 16 症例 (神戸大学医学部附属病院、兵庫県立がんセンター、神戸市立医療センター
中央市民病院)を対象とし、IHC (CYP1A1, EMA, S100, SMA, Desmin, CD34, STAT6, ER)、
FISH (NCOA2)、RT-PCR (forward AHRR, reverse NCOA2)を行った。AFST と鑑別すべき
類似疾患として、様々な程度で粘液性、線維性の間質を背景に血管増成を特徴とする 224 症
例 (神戸大学医学部附属病院; aggressive angiomyxoma 2 例、angioleiomyoma 15 例、
cellular angiofibroma 2 例、desmoid fibromatosis 17 例、fibroma of tendon sheath 18 例、
low-grade fibromyxoid sarcoma 11 例、myxofibrosarcoma 31 例、myxoid liposarcoma 13
例、myxoma 14 例、nodular fasciitis 9 例、hybrid nerve sheath tumor 7 例、schwannoma
29 例、neurofibroma 27 例、perineurioma 2 例、solitary fibrous tumor 22 例、superficial
angiomyxoma 2 例、deep thrombus 3 例)を対象に CYP1A1 IHC を行った。
【方法 - IHC】
4μm ホルマリン固定パラフィン包埋 (FFPE)切片を使用。
16 症例の AFST と 224 症例の鑑別すべき類似疾患に CYP1A1 に対する IHC を行った。
脱パラフィン・水和処理を行ったのち抗原賦活化 (5mM EDTA buffer (pH 8.0), 95-99℃ 60
分, 室温 30 分)、内在性ペルオキシダーゼのブロッキング (Dako REAL Peroxidase-Blocking
Solution; Agilent, 室温 5 分)を行い、一次抗体を反応させた (primary mouse monoclonal
anti-CYP1A1 antibody, clone B-4, dilution 1:50; Santa Cruz Biotechnology, 4℃, overnight
incubation)。インキュベーション後、二次抗体を反応させ(ヒストファインシンプルステイン
MAX ― PO (Multi); ニ チ レ イ , 室 温 30 分 ) 、 発 色 (DAB Peroxidase Substrate Kit
ImmPACT; VECTOR Laboratories, 室温 5 分)、ヘマトキシリンによる核の対比染色を行い
脱水・透徹・封入を行い検鏡した。
16 症例の AFST に既知の軟部組織腫瘍の鑑別に用いられる EMA, S100, SMA, Desmin,
CD34, STAT6, ER の IHC を行った。
CYP1A1 IHC の評価は既報を参照に immunoreactivity staining score (IRS)を用いた。
IHC 陽性細胞の割合を評価する proportion score (PS; score 0 = 0% positive cells, score 1 =
<10%, score 2 = 10-50%, score 3 = 51-100%)と IHC の染色強度を評価する intensity score
(IS; 0 = negative, 1 = weak, 2 = intermediate, 3 = strong)の積で IRS を求め、IRS ≧ 2 の
症例を CYP1A1 positive とした。
【方法 - FISH】
4μm FFPE 切片を使用。プローベは dual-color NCOA2 break-apart probes (CytoCell
Ltd)を使用した。判定は既報に倣い、最低 50 個の核をカウントし、オレンジとグリーンのシ
グナルが、シグナルの直径の 2 倍以上の離れていた場合に split signal 陽性とし、7%以上の
細胞に split signal が認められる場合を NCOA2 rearrangement ありとした。

【方法 - RT-PCR】
FFPE 検体から RNA を抽出 (RNAstorm FFPE RNA Isolation Kit; Cell data Sciences)、
逆転写 (SuperScript IV First-Strand Synthesis System; ThermoFisher)で得られた cDNA
を PCR にかけた (GoTaq Green Master Mix; Promega)。PCR に使用したプライマーは
forward AHRR (exon 9, NM_020731.4; 5’-AGCGGAGATGAAATGAGGAGCG-3’)と reverse

NCOA2 (exon 16, NM_006540.4; 5’-ACTCAGCTGCAGGATGTGGACA-3’)。PCR 産物を精
製し、サンガー法で junctional point を含む塩基配列のシーケンスを行なった。
【結果 - AFST の臨床病理学的、組織学的特徴】
AFST 16 症例の内訳は、女性 9 例、男性 7 例、年齢の中央値は 56 歳(17-78 歳)であっ
た。75%の症例 (12/16)が四肢に発生しており、臀部、会陰、体幹、骨盤腔の発生例がそれぞ
れ 1 例ずつであった。最大腫瘍径の中央値は 4.9cm (1.7-11cm)であった。7例が辺縁切除、4
例が拡大切除で摘出されており、残りの 5 例の切除方法については情報が得られなかった。
全症例において豊富な小型血管網を介在させ、異型に乏しい紡錘形細胞が増生する AFST に
特徴的な病理組織学像を認めた。血管周皮腫パターンを示す腫瘍もあり、稀な変化として
amianthoid fiber の沈着や泡沫組織球が集簇する例もみられた。既知の軟部組織腫瘍の鑑別
に用いられる IHC マーカーに対する染色性は EMA 63%, S100 0%, SMA 0%, Desmin 50%,
CD34 13%, STAT6 0%, ER 80%であり、既報の如く特徴的な所見は認めなかった。
【結果 - AFST の分子遺伝学的分析】
AFST 16 症例のうち、FISH 法で NCOA2 rearrangement が認められた症例は 8 症例
(50%)あり、5症例 (31%)は陰性、3症例 (19%)は蛍光プローブの発光を認めず判定不能であ
った。Split signal 陽性細胞の割合は平均 14.9% (9-22%)であった。RT-PCR 法では 3 症例
(19%)で AHRR (exon 9)と NCOA2 (exon 16)の融合遺伝子が認められた。既報告の AFST の
融合遺伝子である AHRR (exon 10)-NCOA2 (exon 14)、AHRR (exon 9) -NCOA2 (exon 14)、

AHRR (exon 8) -NCOA2 (exon 14)、NCOA2 (exon 15)- AHRR (exon 10)、NCOA2 (exon 13)AHRR (exon 11)、稀な遺伝子融合である GTF2I (exon 14)-NCOA2 (econ 15)、GAB1 (exon
6)-ABL1 (exon 2)に関しても RT-PCR で検索を行ったが、これらの融合遺伝子は認めなかっ
た。
【結果 - AFST と鑑別疾患群における CYP1A1 の発現】
AFST 16 症例に対する抗 CYP1A1 抗体を用いた IHC では、13 症例で IRS≧2 であり感度
は 81.2%であった。AFST における CYP1A1 IHC の染色性は、細胞質に中から強度の反応を
示し (IS 2-3)、IHC 陽性細胞の割合は全症例で平均 39% (10-70%、PS 1-3)であった。IHC は
紡錘形細胞のみに陽性反応がみられ、増生血管を構成する細胞には認められなかった。

CYP1A1 IHC が陰性であった3症例では、FISH と RT-PCR のいずれにおいても融合遺伝子
は同定されなかったが、全症例とも典型的な AFST に特徴的な組織学的特徴を認めた。
AFST 16 症例のうち、摘出検体とは別に生検検体が得られた 5 症例についても CYP1A1
IHC を行い、全症例とも陽性の結果であった。
AFST と鑑別すべき類似疾患に対する CYP1A1 IHC の結果は myxofibrosarcoma 3/31 例
(1症例 IRS 3、2症例 IRS 6; 9.6%)、solitary fibrous tumor 2/22 例 (IRS 3、IRS6; 9.1%)、
neurofibroma 1/27 例 (IRS 2; 3.7%)のみに認め、特異度は 97.3%であった。
【考察】
AFST が 2012 年にはじめて報告されて以降、AFST の様々な形態学的、分子遺伝学的特徴
が明らかになってきている。しかし、AFST は幅広い組織形態学的スペクトラムを示すため病
理組織学的診断に難渋することが多く、特に小さな検体における診断は疾患特異的な診断マ
ーカーがないこともあり、困難であるといえる。AFST では 60-80%の症例で AHRR -NCOA2
遺伝子変異を認めることが知られており、その遺伝子変異の結果発現が増幅する AhR/ARNT
シグナル系の CYP1A1 に着目した。AFST と鑑別すべき類似疾患に対し抗 CYP1A1 抗体を
用いた IHC を行い、感度 81.2%、特異度 97.3%の結果を得た。
我々の研究では、
FISH もしくは RT-PCR による分子遺伝学的検索で 50%の症例に NCOA2
rearrangement を認めた。
FISH における Split signal 陽性細胞の割合は平均 14.9%であり、
比較的低いものであったが、既報においても 7-36%程度であり、増殖した紡錘形細胞のうち
腫瘍細胞の割合は比較的低い可能性が考えられた。このことは、CYP1A1 IHC 陽性細胞の割
合の平均が 39% (10-70%)であった結果と相反するものであり、全ての CYP1A1 IHC 陽性細
胞が腫瘍細胞であるかについては議論の余地があると考えられる。ただし、CYP1A1 IHC と
FISH については異なる検査法であるため、真に腫瘍細胞であるか否かについての判定や比較
はできないが、CYP1A1 IHC 陽性細胞の一部が非腫瘍細胞である可能性も否定することはで
きない。この結果については、腫瘍細胞における増幅した CYP1A1 によるリガンドの代謝物
が傍分泌によって非腫瘍細胞の内因性 AhR/ARNT シグナル系を活性化させ、非腫瘍細胞にお
いても CYP1A1 の過剰発現をきたしている可能性を推察した。
AHRR は AhR と ARNT へのヘテロ二量体化の競合をし、C 末端に転写抑制ドメインを有
すると考えられている。AHRR-ARNT ヘテロ二量体は AHRR を含む標的遺伝子へ結合し遺
伝子の発現を抑制することが知られている。我々の RT-PCR の結果得られた AHRR (exon 9)
と NCOA2 (exon 16)によるキメラ蛋白には AHRR の C 末端に見られる転写抑制ドメインの
欠損がみられた。一方、AhR と高い相同性をもつ AHRR の N 末端側のドメインと、NCOA2
の C 末端に存在する転写活性ドメインが AHRR/NCOA2 キメラ蛋白には残っているため、
AHRR/NCOA2 キメラ蛋白は内在性の ARNT と二量体を形成し、AhR/ARNT シグナル系の
活性化を惹起し、最終的に CYP1A1 をはじめとする下流遺伝子の転写活性が起こっているも
のと考えられた。

CYP1A1 陽性であった AFST の症例のうち、3 例を除いて詳細な融合遺伝子の証明をする
ことはできなかったが、CYP1A1 の過剰発現という結果から AHRR 、NCOA2 を含む既報以
外の融合パターンも考えられた。
また、
CYP1A1 陽性であったにもかかわらず NCOA2 の split
signal を認めなかった 1 例と CYP1A1 陰性かつ NCOA2 rearrangement を認めなかった3
症例はいずれも典型的な AFST の病理所見を認めることから、AFST の病因となる融合遺伝
子は NCOA2 以外にも存在する可能性が考えられた。一方、AHRR-NCOA2 融合遺伝子が検
出されたものにも関わらず FISH で偽陰性だった症例が 1 例あり、NCOA2 の複雑な分離メ
カニズムが存在する可能性も示唆された。
最後に、AFST の対象症例、遺伝子変異が同定できた症例の少なさという制約はあるもの
の、CYP1A1 IHC は AFST において感度、特異度ともに高く、診断的有用性があるものと考
える。

神戸大学大学院医学研究科 (博士課程)

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

論文題目

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甲第3
3
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1号





受付番号

植村光太郎

CYPlAlI
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CYPlAlは軟部血管線維腫の診断に有用なマーカーである

主 査 尋 砂 沼 人
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審査委員


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(要旨は 1
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軟部血管線維腫 an
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)、もしくは NCOA2-AHRRの相互転座による
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遺伝子礁合が見られる。 AFSTの病理組織像は異型のない均質な紡錘形細胞の腫瘍性増殖と、そ
の間隙を縫うように壁の薄い細かい血管の増生が特徴的である。背景は粘液性、線維性の間質が混
在し、部位によって様々な組織学的スペクトラムを示すため、粘液線維肉腫、孤在線維性腫瘍、粘
液型脂肪肉腫などの悪性のものを含むさまざまな軟部組織腫瘍との鑑別が、病理組織学的に困難で
あることが知られている。 AFSTの診断においては F
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T-PCR)によって変異遺伝子を同定する方法な
どの報告はあるが、臨床病理の場において簡易に高精度で適応できる診断マーカーは存在しない。
2012年に報告された AFSTの包括的遺伝子発現解析で、染色体転座の結果合成されたキメラ遺伝
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) シグナル系
子の発現によって AhR/ARNT(
の標的遺伝子であるシトクロムp450lAl(CYPlAl)の発現が、粘液線維肉腫と比較して冗進して
いることが明らかにされた。このことから、 CYPlAlが AFSTの診断に有効な簡便な IHCマーカ
ーとなりうるのではないかという仮説を立てた。
AFST1
6症例を対象とし、 IHC(CYPlAl,EMA,S
1
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,CD34,STAT6,ER)、
FISH(NCOA2
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2)を行った。 AFSTと鑑別すべき類似
疾患として、様々な程度で粘液性、線維性の間質を背景に血管増成を特徴とする 224 症例
(
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を行った。 CYPlAlIHC の評価は既報を参照にimmunoreac
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rong)の積で IRSを求め、 IRS ;
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; 2の症例を CYPlAl
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シグナルが、シグナルの直径の 2倍以上の離れていた場合に s
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l陽性とし、 7%以上の細胞
にs
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lが認められる場合を NCOA2rearrangemen
tありとした。 RT-PCR産物を精製した
ものをサンガー法でjunc
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a
lpo
i
ntを含む塩基配列のシーケンスを行なった。
AFST 16症例の内訳は、女性 9例、男性 7例、年齢の中央値は 56歳 (
1
7
7
8歳)であった。
75%の症例( 1
2
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1
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)が四肢に発生していた。最大腫瘍径の中央値は 4.9cm(
1
.7
l
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)であった。 7
例が辺縁切除、 4例が拡大切除で摘出されており、残りの 5例の切除方法については情報が得られ
なかった。全症例において豊富な小型血管網をさせ、異型に乏しい紡錘形細胞が増生する AFSTに
特徴的な病理組織学像を認めた。既知の軟部組織腫瘍の鑑別に用いられる IHCマーカーに対する
染色性は既報の如く特徴的な所見は認めなかった。

AFST1
6症例のうち、 FISH法で NCOA2r
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tが認められた症例は 8症例 (
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)は陰性、 3症例 (
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)は蛍光プローブの発光を認めず判定不能であった。 Spl
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a
l陽性細胞の割合は平均 14.9%(
9
2
2
%
)であった。 RT-PCR法では 3症例 (
1
9
%
)で AHRR
6
)の融合遺伝子が認められた。 AFST1
6症例に対する抗 CYPlAl抗体
(
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x
o
n9
)と NCOA2(exon1
を用いた IHC では、 13 症例で IRS~2 であり感度は 8 1. 2%であった。 AFST における CYPlAl

IHC

の染色性は、細胞質に中から強度の反応を示し (
I
S2
3
)、IHC陽性細胞の割合は全症例で平均 39%

3
)であった。 IHCは紡錘形細胞のみに陽性反応がみられ、増生血管を構成する細
(
1
0
,
7
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%、PS1
胞には認められなかった。 CYPlAlIHCが陰性であった 3症例では、 FISHと RT-PCRのいずれ
においても融合遺伝子は同定されなかったが、全症例とも典型的な AFSTに特徴的な組織学的特徴
を認めた。 AFST1
6症例のうち、摘出検体とは別に生検検体が得られた 5症例についても CYPlAl

IHCを行い、全症例とも陽性の結果であった。 AFSTと鑑別すべき類似疾患に対する CYPlAlIHC
の結果は my
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1例(1症例 IRS3、 2症例 IRS6
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7
%
)のみに認め、特異度は 97.3%
2
/
2
2例(IRS3、I
であった。
本研究は AFSTの分子遺伝学的知見から CYPlAlの異常発現を免疫染色によって明らかにしたも
のであるが、 FISHや RT-PCRといった AFSTに対する従来の分子遺伝学的検索よりも感度が高く、
また、鑑別疾患群との比較においても特異度が高いという結果から CYPlAlが AFSTの IHCマー
カーとして有用であるという重要な知見を得たものとして価値ある集積であると認める。よって本
研究は博士(医学)の学位を得る資格があると認める。

全国の大学の
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