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大学・研究所にある論文を検索できる 「大腿骨頭中心より内側の骨盤形態は寛骨臼回転骨切り術後の前方被覆と可動域を予測する」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

大腿骨頭中心より内側の骨盤形態は寛骨臼回転骨切り術後の前方被覆と可動域を予測する

Kamenaga, Tomoyuki 神戸大学

2021.03.25

概要

【目的】
 臼蓋形成不全(developmental dysplasia of thehip; DDH)の患者の多くは、前方および外側の大腿骨頭被覆不足により大腿骨頭と臼蓋の接触面積が減少し、接触面圧の上昇と不安定性を来し、最終的に変形性股関節症へと進行する。十分な大腿骨頭被覆を獲得し、変形性関節症への進行を予防するために、curved periacetabular osteotomy(CPO)に代表される寛骨臼回転骨切り術が広く行われ、良好な成績が報告されてきた。DDHへの回転骨切り術では、外側被覆だけでなく前方被覆の獲得が、接触面圧の減少に有用であることが報告されている。一方で、過度の前方被覆は、術後の屈曲可動域及び内旋可動域を減少させ、さらにはactivities of daily livingを低下させることも知られている。したがって、術者にとって外側被覆に加えて前方被覆をコントロールすることが肝要であるといえる。
近年、3次元シミュレーションによって、より正確な術前計画が可能となった。至適な外側被覆を獲得するベくlateral center-edge angle(LCEA)が30°となるように骨片を外転させた場合、約半数の症例で術後の前方骨頭被覆が健常者よりも大きくなり、術後にfemoroacetabular impingement(FAI)を生じ可動域制限を来していることが近年報告されている。したがって、術後に生じる前方被覆増加の程度を術前から予測し、術前計画に反映することが重要であるといえるが、過去に術前因子による術後骨頭被覆や可動域の予測法については過去に報告がない。
 そこで、本研究の目的はCPO術後の前方被覆と関節可動域を3次元でシミュレーションし、術前の骨盤形態により予測できるかどうかを検証することとした。我々は、術後に大腿骨頭中心の矢状面に移動してくると想定される術前の大腿骨頭中心よりも内側の骨盤形態が、術後の前方骨頭被覆と術後聞節可動域に影響する、という仮説を立てた。

【方法】
対象
 当院でCPOを予定されていた、LCEAが20°以下のDDHの患者30人30関節(男性3例、女性27例、平均年齢31.2歳(20-49).平均LCEA11.1°(-3.7°-19.7°))を対象とした。
術前骨盤形態評価
 各患者の背盤から膝関節までの術前CTデータを3次元ソフトウェア(ZedHip; Lexi, Tokyo, Japan)に転送し、多断面再構成法で3次元画像を構築した。機能的骨盤基準面を基準とし、骨頭中心を通る矢状面でのanterior center-edge angle(ACEA)とposterior center-edge angle(PCEA)に加えて、骨頭内側1/3を通る矢状面でのACEA(medial ACEA)を評価した。
Virtual CPO
 Zed Hipを用いて、回転貴切りと術後関節可動域のシミュレーションを行った。骨盤座標系は両側の上前腸骨棘および恥骨結合を基準とし、大腿骨座標系は大転子の最後方点と大腿骨後顆、大腿骨頭中心、および膝中心を参照した。股関節中間位は、骨盤と大腿骨の両座標が平行になる位置とした。回転半径は50mm、回転中心を骨頭中心とし、術後LCEAが30°となるように骨片を外転させた後、ACEAとPCEAを評価した。

関節可動域シミュレーション
 Zed Hipを用いて、Virtual CPOの前後の各患者の屈曲、伸展、外旋、および90°屈曲位での内旋の最大可動域を骨盤と大腿骨の骨性衝突をエンドポイントとして測定した。

統計解析
 術前後のACEA及びPCEAの比較を対応のあるt検定で行い、術前の骨盤パラメーターが術後ACEAならびに各関節可動域に及ぼした影響を単回帰分析で解析した。

【結果】
術前後の骨盤形態評価
 PCEAは術前94.5°(52.3°-134.2°)から術後95.2°(5.7°-117.9°)に有意な変化を認めなかったが、ACEAは術前32.1°(3.9°-49.6°)から、術後50.8°(26.4°-64.2°)と有意な上昇を認めた。術前のmedial ACEAは平均51.5°(29.4°-69.7°)であった。術後ACEAは術前ACEA(r=0.58, P=0.0008)よりもmedial ACEA(r=0.92, P<0.0001)とより強い正の相関を認めた。

関節可動域シミュレーション
 伸展及び外旋角度は術前(63.7°, 36.5°)と術後(60.0°, 38.3°)で有意な変化を認めなかったが、屈曲及び内旋角度は術前(125.6°, 67.0°)から術後(115.6°, 41.2°)にかけて有意に減少していた。

前方被覆と関節可動域の相関
 伸展角度および外旋角度はいずれの骨盤ギ態パラメーターとも有意な相関を示さなかった。術後屈曲角度は、術前ACEAと相関を認めなかったが、術後ACEA(r=-0.67 p<0.0001)及び術前medial ACEA(r=-0.62, p=0.0003)と有意な負の相関を認めた。また、術後内旋角度も、術前ACEAと相関を認めなかったが、術後ACEA(r=-0.62, P=0.0003)と術前medial ACEA(r=-0.57, P=0.001)と有意な負の相関を認めた。

【考察】
 今回の研究により、CPOにおいて骨切り骨片を外転することにより前方被覆(ACEA)有意な増大を認め、その程度は個人間でバラつきが大きいことがわかった。また、術後ACEAは、屈曲および内旋角度と有意な相関を認めていた。この結果は術後の過度の前方被覆によって術後の屈曲角度制限を来しうるという過去の報告を支持するものである。さらに、本研究では、大腿骨頭中心よりも内側の骨盤形態を反映したmedial ACEAは、術後の前方被覆量、屈曲可動域及び内旋可動域と強く関連していた。これらは我々の仮説を支持するものであり、術前の大腿骨頭中心より内側の骨盤形態を評価することで術後前方被覆を予測できることが示唆された。この結果をもとに、術中の骨片の回転量や前後方向への移動量を術前計画時に調整することで、至適な前方被覆と良好な関節可動域獲得を目指す術者の助けとなるものと考えられる。

【結語】
 術前の大腿骨頭より内側の矢状面骨盤形態は、CPO術後の前方被覆量と屈曲及び内旋可動域を予測しうる有用かつ簡便なパラメーターといえる。

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