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大学・研究所にある論文を検索できる 「加工食品の食物アレルゲン遺伝子検査の高感度化に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

加工食品の食物アレルゲン遺伝子検査の高感度化に関する研究

宮﨑, 悦子 MIYAZAKI, Etsuko ミヤザキ, エツコ 九州大学

2023.09.25

概要

九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository

加工食品の食物アレルゲン遺伝子検査の高感度化に
関する研究
宮﨑, 悦子

https://hdl.handle.net/2324/7157397
出版情報:Kyushu University, 2023, 博士(農学), 課程博士
バージョン:
権利関係:





:宮﨑

悦子

論文題名

:加工食品の食物アレルゲン遺伝子検査の高感度化に関する研究























食物アレルギーの患者数は年々増加している.食物アレルゲン表示制度の対象である特定原材料
は,2002 年の表示制度開始当初は,
「卵,乳,小麦,そば及び落花生」の5品目であったが,
「えび・
かに」の追加に続いて,2023 年に「くるみ」が追加され 8 品目となった.特定原材料の表示は,患
者にとっては命にかかわる必要な情報であり,科学的な根拠に基づく表示とその確認のための検査
の信頼性の確保が重要である.福岡市では,2003 年から市販食品における特定原材料の検査を実施
してきた.その中でも,食品の原材料として広く使用されていること,比較的アレルギー患者数が
多く,難治性であり,食物依存性運動誘発アナフィラキシー,経皮感作によるアレルギー,セリア
ック病等,関連の疾病が多いことから,本論文では食品表示の重要性の高い「小麦」に注目して研
究を行った.
まず,2003 年から 2022 年までの 20 年間の特定原材料(小麦)の検査結果をまとめた.その中で,
スクリーニング検査である ELISA 法で 10mg/kg 以上の小麦タンパク検出(陽性)にも関わらず,確
認検査の PCR 法(以下,
「通知法」とする.)において小麦遺伝子が不検出(陰性)となり,行政上
問題となった事例を経験したことから,小麦遺伝子検査法の高感度化について検討を行った.
リアルタイム PCR 法(以下,「qPCR 法」とする.)による小麦遺伝子の高感度な検出法の開発の
ため,小麦遺伝子の検出には Triticin 前駆体の配列の一部を増幅するプライマー対及び蛍光プロー
ブを設計した.陽性対照としては,植物の葉緑体に共通な配列を増幅する植物遺伝子検知用プライ
マー対及び蛍光プローブを用いた.内部に植物遺伝子及び小麦遺伝子の配列を含むプラスミド及び
小麦粉から抽出した DNA 溶液を段階希釈したものを鋳型として,qPCR 法の検量線及び検出下限を
確認した.その結果,植物遺伝子及び小麦遺伝子の検量線は直線性が良好であり,qPCR 法の検出
下限は通知法の 1/400〜1/4 と低かったことから,通知法より少なくとも 4 倍高感度であることが示
された.次に,加熱加工食品のモデル試料である米粉クッキーを作製して,通知法及び qPCR 法に
よる検査を行った.その結果,qPCR 法では通知法より高感度に小麦遺伝子を検出することが可能
であった.また,試料の米粉クッキーの焼成温度が 180℃,200℃及び 220℃と高くなると qPCR 法
による小麦遺伝子の検出率が低下し,qPCR 法による遺伝子検査における試料加熱履歴の影響が示
された.そこで,前述の ELISA 法で小麦陽性となったが通知法では小麦遺伝子陰性となった実試料
(焼菓子)2 検体を用いて,qPCR 法の実用性を調べた.その結果,qPCR 法ではいずれも小麦遺伝
子陽性となり,通知法よりも感度が高く,ELISA 法と同じ結果が得られることが示された.
さらに,開発した qPCR 法の実用性評価を目的として,入手可能な小麦 12 銘柄を対象に,qPCR
法による小麦遺伝子の検出下限を通知法と比較したところ,いずれの銘柄においても通知法と同等
以上の感度が得られた.次に,市販の容器包装入りチルド惣菜等 50 検体を対象として,qPCR 法に
よる小麦の混入実態調査を行った.小麦表示のあった 40 検体中,原材料として小麦は不使用である
が,しょう油が使用された 26 検体では,いずれの検体からも小麦タンパク及び小麦遺伝子は検出さ

れず小麦陰性となった.一方,原材料として小麦を含有し,ELISA 法で小麦タンパクが 10mg/kg 以
上検出されたビーフシチュー及びビーフカレー合計 8 試料は,いずれも qPCR 法で小麦遺伝子を検
出することが困難であった.微量の小麦粉を混入させた牛ミンチ肉をモデル試料として中心温度
95℃加熱後に調べた結果,加熱時間の増加に従い,試料からの DNA 抽出量は減少し,加熱時間が 3
時間を超えると小麦遺伝子は不検出となった.また,植物遺伝子は増幅されたが,加熱時間の増加
に従って Ct 値が増加した.つまり,常圧で 100℃以下の加熱条件であっても,長時間の加熱工程に
よって遺伝子は断片化等のダメージを受け,遺伝子検出に影響を与えることが示された.
以上,本研究では,加工食品からの高感度小麦遺伝子検出法として qPCR 法を開発し,検査試料
の加熱履歴が遺伝子検出に与える影響を明らかにした.本研究の成果は,食物アレルゲンの表示制
度の科学的根拠となるものであり,食品の正しいリスク評価及び食物アレルゲン表示制度の適正な
運用に繋がるものと期待される.

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