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Heat Shock Protein 105 as an Immunotherapeutic Target for Patients With Cervical Cancer

野坂, 和外 名古屋大学

2022.07.26

概要

【緒言】
熱ショックタンパク質 105(Heat shock protein 105:HSP105)は大腸がん・膵がんの SEREX 法で同定された熱ショックタンパク質の一種で、精巣以外の正常組織には発現 せず、さまざまながん種において高発現している。また、がん細胞においてはアポト ーシスを抑制することが報告されていることから HSP105 はがん免疫療法の理想的な 標的と考えられる。しかしながら、これまで子宮頸がんにおける HSP105 の発現やが ん免疫療法の標的としての研究報告がなされていない。そのため、子宮頸がんに対す る HSP105 を標的としたがん免疫療法の有効性につき基礎的検討を行った。

【方法】
名古屋大学医学部附属病院産婦人科において手術療法を受けた子宮頸がん患者 20 例の組織検体と、良性腫瘍により子宮全摘出術を受けた 6 例の組織検体において HSP105 の発現を免疫染色により解析した。また、子宮頸部上皮内腫瘍(Cervical Intraepithelial Neoplasia : CIN)の組織マイクロアレイについても HSP105 の発現を免疫 染色により解析した。さらにフローサイトメトリーにより子宮頸がん細胞株の HSP105 の発現を解析した。
続いて HLA-A2 拘束性 HSP105 ペプチド特異的細胞傷害性 T 細胞(Cytotoxic T-lymphocyte : CTL)クローンを用いて子宮頸がん細胞株に対する解析を行った。本 HSP105 ペプチド 特異的 CTL クローンは国内留学先である国立がん研究センター東病院 先端医療開発 センター 免疫療法開発分野で自ら樹立したクローン株である。HSP105 ペプチドワク チン療法の第 1 相臨床試験は、国立がん研究センター東病院にて進行性食道がんおよ び大腸がんを対象として実施済みである。同臨床試験に参加し HSP105 ペプチドワク チン投与を受けた大腸がん患者のうち、治療目的に切除された転移リンパ節検体の一 部から腫瘍浸潤リンパ球を抽出し、そこから HLA-A2 拘束性 HSP105 ペプチド特異的 CTL クローンを樹立した。

【結果】
子宮頸がん、CIN および正常子宮頸部上皮組織における HSP105 の発現を免疫染色 により解析したところ、20 例の子宮頸がん検体中、19 例で HSP105 が発現していた。
(Figure1A)。さらに、すべての検体で HLA クラスⅠの発現が確認でき、14 例(70%)で 腫瘍浸潤 CD8 +陽性 T 細胞が確認された(Ta b l e Ⅰ 、Figure1B および 1C)。持続的なヒト パピローマウイルス感染により CIN1 から順に CIN3 へ進展し、最終的には子宮頸が んへと進行する自然史が存在するが、HSP105 の発現レベルは、正常な子宮頸部上皮組 織と比較し、より高異形成の CIN および子宮頸がん組織で有意に高くなっていた (Ta b l e 1 A )。正常な子宮頸部上皮、CIN およびがん組織における HSP105 発現データを Ta b l e Ⅱ に要約した。
次に RT-q PCR とフローサイトメトリーを使用して、子宮頸がん細胞株における HSP105 の発現を評価した。ネガティブコントロールとして正常肺組織から樹立した線維芽細胞株と肝細胞がん細胞株 HepG2 を使用した。HSP105 RNA レベルは、RT-q PC R において、子宮頸がん細胞株の SiHa および Caski で他の細胞株よりも高くなっていた (Figure2A)。さらに内因性 HSP105 タンパク質の発現は、フローサイトメトリーで子 宮頸がん細胞株である SiHa、Caski、HeLa すべてで高発現していた(Figure2B)。解析 を行った全ての細胞株は HLA クラス I を発現し(Figure2C)、その中で線維芽細胞、 HepG2 および Caski は HLA-A0201 を発現していた(Figure2D)。HSP105 および HLA ク ラス I はほぼすべての子宮頸がん組織で発現し、HSP105 が子宮頸がんの腫瘍特異的抗 原である可能性があり、がん免疫療法の標的となりうると考えられた。
子宮頸がんにおいて HSP105 が免疫療法の標的になるかを検討するため、HSP105 特 異的 CTL クローンが子宮頸がん細胞株に対し傷害性を示すか検討した。HSP105 (RLMNDMTAV)ペプチドを認識する HLA-A * 0201 拘束性 CTL クローンをエフェクタ ー細胞とし、Caski(HSP105high、HLA-A02:01)、HepG2(HSP105low、HLA-A02:01)、 および線維芽細胞(HSP105low、HLA-A02:01)を標的細胞として使用した。Caski に対 する HSP105 特異的 CTL クローンの反応を検出するため、IFN-γELISPOT assay により 評価した。 IFN-γは、HSP105 特異的 CTL と共培養した Caski の上清で検出されたが、 線維芽細胞および HepG2 との共培養後の上清では検出されなかった(Figure3A)。また その他のサイトカインを測定するため Cytometric Bead Array により TNF、グランザ イム B および IL-2 の産生を評価したところ、Caski の上清では、線維芽細胞および HepG2 の上清よりも高かった。(Figure3B)。さらに、細胞傷害性を検出するため、共 培養後の CD8 陽性細胞中の脱顆粒マーカーである CD107a 陽性細胞の割合をフローサ イトメトリーにより検出した。Caski、HepG2 および線維芽細胞と共培養した際の CTL クローンの CD107a 発現レベルの増加は Caski において高かった(Figure3C)。また細胞 傷害性試験により標的細胞に対する傷害性を直接検出したところ、Caski に対する細 胞傷害性が有意に高かった(Figure3D)。これらの結果は、HSP105 特異的 CTL クロー ンが HSP105 を発現しているがん細胞である Caski を認識して攻撃できることを示し ている。
続いてその他の子宮頸がん細胞株に対し反応性を示すかを解析するため、HLA- A0201 発現プラスミドを HeLa(HSP105high、HLA-A * 68:02)および SiHa(HSP105high) に導入し、標的細胞として使用した。これらの細胞の表面での HLA-A02 の発現は、フ ローサイトメトリーを使用して確認した(Figure4A)。H e L a / A * 0 2 :01 および SiHa / A * 02:01 に対する CTL クローンの反応性を IFN-γELISPOT assay(Figure4B)、CD107a assay(Figure 4C)および細胞傷害性試験(Figure4D)で解析し、Caski を標的細胞とした ときと同様に細胞傷害性を確認することができた。
さらにこれまでの反応が HLA 拘束性または腫瘍抗原特異的であることを確認する ための解析を行った。HSP105 ペプチド特異的 CTL クローンを抗 HLA クラス I モノク ローナル抗体または IgG2a アイソタイプコントロールが添加された Caski と共培養後 に産生された IFN-γ を ELISPOT assay で解析した。IFN-γ 産生は、抗 HLA クラス I モ ノクローナル抗体によって濃度依存的に抑制され、アイソタイプコントロールによって抑制されなかった(Figure5A)。HSP105 抗原特異的反応であることを確認するために、 HSP105 または HIV ペプチドをパルスした蛍光標識されていない T2 細胞をコールド ターゲット、蛍光標識された Caski をホットターゲットとし、コールドターゲットを 共培養することによりホットターゲットの細胞傷害の阻害を確認する Cold inhibition assay を行った。CTL クローンによる細胞傷害性は、HSP105 ペプチドパルス T2 細胞 を共培養することにより阻害された(Figure5B)。これらの結果は、Caski に対する HSP105 ペプチド特異的 CTL の効果が HSP105 ペプチドおよび HLA-A2 拘束性である ことを示している。
最後に in vivo における HSP105 ペプチド特異的 CTL クローンの抗腫瘍効果を確認 するため、SCID Beige マウスに Caski を皮下移植し、腫瘍細胞導入の 12 日後より 2 週 間間隔で 3 回 HSP105 ペプチド特異的 CTL またはサイトメガロウイルスペプチド特異 的 CTL を静脈内投与する群と未治療群に解析を行った。HSP105 ペプチド特異的 CTL で治療されたマウスは、他のグループと比較して腫瘍増殖の抑制を認めたが、有意差 は認めなかった(Figure6)。

【結語】
HSP105 ペプチド特異的 CTL は子宮頸がん細胞株に対し傷害性を示すことが確認さ れた。以上より HSP105 が子宮頸がんに対するがん免疫療法の有用な標的となりうる ことが示された。

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参考文献

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