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大学・研究所にある論文を検索できる 「Totally endoscopic aortic valve replacement via an anterolateral approach using a standard prosthesis」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Totally endoscopic aortic valve replacement via an anterolateral approach using a standard prosthesis

所, 正佳 名古屋大学

2022.07.04

概要

【緒言】
完全内視鏡下僧帽弁手術は今日では確立された、広く施行されている手術であるが、完全内視鏡下大動脈弁置換術は前方肋間開胸アプローチでの報告がわずかにあるのみである。我々は2013年に、低侵襲大動脈弁置換術の新たなアプローチ法として右腋窩小切開大動脈弁置換術(TAX-AVR)を報告し、右腋窩アプローチの美容的メリットに加えその安全性と低侵襲性を示した。近年我々は右腋窩小切開を発展させ右前側方開胸アプローチによる完全内視鏡下大動脈弁置換術(eAVR)を施行しており、その方法と手術成績を報告する。

【対象及び方法】
<対象>対象は2012年5月から2018年12月末までに当院で大動脈弁置換術を施行した469例。内TAX-AVRは157例、eAVRは47例であった。

<手術適応と除外基準>上行大動脈や大腿動脈に著しい石灰化を認める症例、再手術症例や緊急手術症例はTAX-AVR或いはeAVRの除外基準とした。胸骨から上行大動脈までの距離や位置関係は通常前胸部小切開大動脈弁置換術では除外基準となりうるが、本法においては除外基準としなかった。

<手術法>eAVR:左半側臥位、右手挙上の体位をとり、第4肋間右中腋窩線上に11mmポートを置いてKarlStorz社製30度斜視3D内視鏡を挿入。4㎝の皮切を置き、第4肋間前側方開胸する(Figure1)。第2或いは第3肋間前腋窩線上にトロッカーを挿入し左手用ポートとする。右鼡径FFバイパスで人工心肺を確立し、その後心膜切開する。体温は32度まで下げる。大動脈遮断後順行性心筋保護で心停止とし、大動脈をC字切開する。心筋保護は20~25分毎に投与する。大動脈弁切除後弁輪に糸を掛け、従来の生体弁或いは機械弁を縫着する(Figure2)。糸の結紮にはノットプッシャーを用いる。全ての手技は完全内視鏡下に行う。

TAX-AVR:概ねeAVRと同様である。6~8cmの腋窩縦切開を置き、第3或いは第4肋間開胸する。第6肋間より2D内視鏡を挿入し補助として用いるが基本的には直視下で行う。

<術後管理>全ての患者は術後ICUに入室。抜管後病棟に移動し、おおよそ7日で自宅退院する。

<データ収集と解析>データは後方視的に収集されSPSSを用いて解析した。病院死亡或いは30日死亡、主要心血管脳血管有害事象を主要評価項目に、ICU滞在期間及び術後入院期間を低侵襲の指標として副次評価項目に設定し、eAVRとTAX-AVR両群を比較した。

【結果】
Table1は両群の患者背景を示している。両群でほとんど差はなかったがNYHAはeAVR群で低かった。Table2は両群の主要評価項目の比較である。両群で統計学的有意差はなかったが、TAX-AVR群で脳血管障害を3例、完全房室ブロックを2例、出血再開胸を2例認めた。Table3は両群の副次評価項目を比較している。手術時間はeAVR群で有意に短かったが、人工心肺時間と大動脈遮断時間は差がなかった。ICU滞在期間に差はなかったが、術後入院期間はeAVR群で有意に短かった。TAX-AVR群のうち13例(8.3%)、eAVR群のうち2例(4.3%)に僧帽弁との複合手術が施行された。Figure3のようにeAVRの視野は良好で、また僧帽弁の視野も同様に良好であった。術後心房細動の発生率はeAVR群で有意に低く、また周術期輸血量もeAVR群で有意に少なかった(Table3)。縫着された人工弁のサイズは2群間で差がなかった。

【考察】
AVRを完全内視鏡下に行う際にポイントになる点がいくつかある。まず完全内視鏡下手術においてアクセスポートの配置は極めて重要である。完全内視鏡下僧帽弁手術では通常前側方アプローチで行うが、完全内視鏡下大動脈弁置換術は報告が限られており確立した方法はない。Volaらは右前胸部にポートを配置したが、彼らは上行大動脈が胸骨に近い場合は作業スペースが限られるため除外すべきと報告している。イタリアのグループであるHinna DanesiとSalvadorらは右前胸部にSoft tissue retractorをおいて鏡視下大動脈弁置換術を行った。我々は2つのトロッカーと1つのSoft tissue retractorを用いた。胸部手術の場合、骨性胸郭がその形態を維持し作業スペースを提供してくれるので、腹部手術と違って気腹は必要ない。従って主創にはSoft tissue retractorを用いるのが望ましいと考える。Sutureless valveを使う際にもサイザーの通貨にはある程度のサイズが必要なので、トロッカーポートのみでは手術できない。我々のポート配置は僧帽弁手術とほとんど一緒で、上行大動脈の位置に依らず十分な作業スペースを確保できる。腋窩アプローチは他のアプローチよりも美容的にも優れている。但し、大動脈や大動脈弁までの距離は長くなるので、結紮にはノットプッシャーを用いる必要がある。我々は普段僧帽弁手術も同様のアプローチで行っている。本アプローチの隠れた利点は僧帽弁と大動脈弁の複合手術が出来るということである。実際今回の我々のシリーズにも複合手術例が含まれており、その成績は満足のいくものだった。

我々は以前TAX-AVR群と正中切開AVR群を比較し、選択された患者においてはTAX-AVR群でFFバイパスにより脳血管障害が増加しないことを示した。しかし、腹部大動脈が高度に石灰化している症例やソフトプラークのある症例では脳血管障害を引き起こし得るので、我々はTAX-AVR群の4例とeAVR群の6例で中枢の順行性送血を追加した。

術中写真から判断するに、Volaらは3FEnableやPercevalをHinna DanesiとSalvadorらはIntuityや通常の生体弁をeAVRに使用していた。我々の研究期間では通常の人工弁のみが使用可能であったが、Sutureless弁やRapid-deploy弁を用いることで手術時間を短縮できるかもしれない。

eAVRに3D内視鏡を使用した報告は我々が最初かもしれない。3D内視鏡の直感的な奥行き感覚により手技が容易になった。TAX-AVR群と比較してeAVR群で遮断時間は延長しなかった。eAVRに2D内視鏡を用いることも可能だが、より難しくなると思われる。

一般に完全内視鏡下手術は直視下手術に比べて手術時間が長くなると考えられているが、我々のデータはそうはならなかった。経験の累積による影響もあるかもしれないが遮断時間や人工心肺時間は両群で差はなく、より小さな創であるeAVRで開胸閉胸時間が短くなることが影響しているかもしれない。

TAX-AVR群もeAVR群も前胸部アプローチ低侵襲手術に比べて美容的に優れていた。経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)の適応が拡大してきているが、50歳以下で機械弁AVRを受ける患者はなくならず、本法はこれらの患者に良い適応と考える。

直視下小開胸手術と比較して完全内視鏡下手術の美容的利点はそれほど変わらないが、開胸器を使わないことにより術後の疼痛を軽減できること、患者の解剖学的な差異の影響を受けにくく、より広い視野で手術できることが利点である。

制御できないような出血がある場合には正中コンバージョンが必要である。安全のためには正中コンバージョンの決定を遅らせないことが重要である。本研究は単施設の限られた症例での報告であり、eAVRを確立された低侵襲手術法とするために更なる経験の蓄積と手技の簡素化が必要であると考える。

【結語】
我々は完全内視鏡下僧帽弁手術と同様に右前側方開胸アプローチによる完全内視鏡下大動脈弁置換術が可能であることを示した。良好な美容的成果が得られると共に、我々は十分な作業スペースを確保し、また僧帽弁との二弁複合手術に大きな障壁なく移行出来るアプローチ法を得た。

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