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大学・研究所にある論文を検索できる 「Molecular Epidemiological Studies on Animal Papillomaviruses」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Molecular Epidemiological Studies on Animal Papillomaviruses

川西(山下), 奈那子 東京大学 DOI:10.15083/0002006918

2023.03.24

概要





















川西(山下)奈那子

パピローマウイルス(PV)は、脊椎動物の皮膚や粘膜に感染し、腫瘍を誘発
するウイルスである。ゲノムは、後期遺伝子、初期遺伝子、非構造領域で構成さ
れる。PV はカプシドをコードする L1 塩基配列の相同性に基づき分類され、組
織・種特異性が高い特徴を持つ。ヒトではヒト PV16 型 (HPV16)や HPV18 感染
と子宮頸癌の関連性が明らかにされ、予防ワクチンが存在する。動物の中ではウ
シが乳頭腫の発生が多く、Bos taurus PV (BPV) の型も多く知られる。そのうち、
1 型と 2 型(BPV1/2)は、ウマへの感染性も有しサルコイドとよばれる難治性の
皮膚腫瘍を誘発するが、種を越えた感染機序は不明である。ネコでは Felis catus
PV (FcaPV)の感染が扁平上皮癌(SCC)などの悪性腫瘍の原因の一つとして指摘
されている。悪性腫瘍や侵襲性の強い腫瘍は臨床学的に問題となるが、動物では
PV 遺伝子型と病態の関連性は不明点が多く、ワクチンなどの予防法はない。本
研究は、臨床現場で問題となり得るウシ、ウマ、ネコの腫瘍性疾患に対する PV
の関与を分子疫学的手法により明らかにすることで、ワクチンなどの予防法開
発に貢献することを目的とした。
第1章では、ウシの肛門・外生殖器に由来するウシパピローマウイルスの遺伝
学的解析を行った。ウシでは集団発生を含む肛門や生殖器腫瘍の発生報告があ
り、繁殖業務に支障をきたす可能性がある一方、病態に対する PV の関与は不明
である。そこで乳牛の肛門・生殖器に生じた疣状病変を対象として、病理学的特
徴、および関与する PV の遺伝学的特徴を解析した。病理組織学的診断、PCR お
よびシーケンス解析の結果、肛門および外陰部の線維性乳頭腫より BPV1、BPV2
が検出された。さらに外陰部の乳頭腫より新型の BPV28、BPV29 が検出された。
また RT-PCR により BPV 初期遺伝子の発現が認められたことから、ウイルス感
染が病態に関与することが示唆された。本章より、ウシの肛門・生殖器乳頭腫に
対する BPV の関与が示唆されたことから、疾病予防のためにウイルス感染制御
が必要であると論じている。
第2章では、国内のウシおよびウマ由来 BPV1、BPV2 遺伝子の分子系統学解析
を行った。ウマのサルコイド由来 BPV1/2 ゲノムには、動物種もしくは地域に特
異的な遺伝子配列が示唆されているが、海外の報告に限られている。本章は、日

本のウシ・ウマ由来 BPV1/2 の遺伝学的解析を通じて、動物種・地域性の因子と
遺伝子配列の関連性を明らかにした。ウシの乳頭腫、ウマのサルコイド各 10 検
体の BPV 遺伝子配列を PCR とシーケンス解析により調べた結果、サルコイド 7
検体より BPV1、3 検体より BPV2 が検出された。さらに系統樹と動物種・地域
性の関連性を Bayesian tip-association significance testing (BaTS)ソフトにより明ら
かにした結果、系統樹における各株の距離は、地理的な要因との相関性が高かっ
た。本章より、ウマの近隣に飼養されているウシが BPV の感染源となる可能性
があると論じている。
第3章では、日本のネコ SCC に由来する FcaPV3 および FcaPV4 の遺伝学的解
析を行った。海外では FcaPV2 感染がネコ SCC の一因として指摘されているが、
日本のネコの SCC に関与する遺伝子型は不明である。そこで日本でネコの SCC
と病理診断された 21 検体を解析した。PCR とシーケンス解析により FcaPV 遺
伝子の検出と配列を調べた結果、1 検体より FcaPV3、2 検体より FcaPV4 が検出
された。さらに RT-PCR により腫瘍遺伝子(E6, E7)の mRNA が検出され、免疫組
織化学染色により P V 関連腫瘍のマーカーである p16 の発現も陽性であったこ
とから、SCC がこれらのウイルス感染に起因する病態であることが示された。
本章より、ネコの SCC を誘発する FcaPV 型の分布に地理的な違いが示されたと
論じている。
本研究は、動物の PV ワクチン開発を視野に入れ、獣医領域に関わりの深い動
物種の PV の分子疫学的解析を行った。BPV1/2 がウシの肛門・生殖器の乳頭腫
に関与すること、さらにウシ由来 BPV1/2 が近隣のウマに感染する可能性も示さ
れたことより、BPV1/2 ワクチンは、ウシとウマに対して有用であると論じてい
る。またネコの PV ワクチン開発を行う場合、FcaPV2 に加え、FcaPV3 と FcaPV4
も組み込む必要性を論じている。本研究で明らかとなった動物の PV の分子疫学
的知見は、予防法開発に重要な基礎研究として位置付けられると考察している。
これらの研究成果は、学術上応用上寄与するところが少なくない。よって、審
査委員一同は本論文が博士(獣医学)の学位論文として価値あるものと認めた。

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