Corneal Opacity Induced by Light in a Mouse Model of Gelatinous Drop-Like Corneal Dystrophy
概要
〔目的(Purpose)〕
膠様滴状角膜ジストロフィ(GDLD)の病態解析のため、原因遺伝子であるtacstd2遺伝子欠損マウスを作製し、その表現型を解析した。また妥当性を確認するため角膜上皮の脆弱性の検討、tight-junctionの有無を解析した。新たな知見として創傷治癒の差異の検討、光照射による角膜病変の有無につき検討した。
〔方法(Methods)〕
マウスtacstd2遺伝子を欠失させたKOマウスを作製した。生後1年半以上経過したマウス全34眼(ホモ接合型16眼、野生型18眼)の角膜病変の有無を横断的に確認し、遺伝子型、混濁率の関係を調べた。また病理組織像についても検討した。角膜上皮の脆弱性の確認のためフルオレセイン染色を用いて、生後6週間の混濁のないマウス全48眼(ホモ接合型24眼、野生型24眼)のdelayed stainの染色面積を測定した。またtight-junctionの有無も検討した。さらに、生後6-16週間の混濁のないマウスを用いて(ホモ接合型8眼、野生型7眼)角膜創傷治癒過程の違いを検討した。光と角膜混濁との関係を調べるために、開瞼後1ヵ月間、光照射(150luxまたは630lux)したマウス全96眼(ホモ接合型48眼、野生型48眼)の角膜病変の有無を確認し、遺伝子型、混濁率の関係を調べ検討した。
〔成績(Results)〕
ホモ接合型マウスの組織を用いてRT-PCRによりマウスtacstd2遺伝子が発現していないことを確認した。角膜中央部に血管新生を伴う隆起状の混濁または帯状の混濁が観察され、全混濁発症数はホモ接合型10眼、野生型11眼であった。なかでも重度の混濁発症数はホモ接合型10眼、野生型4眼であった。重度の混濁の混濁率は遺伝子型(ホモ接合型)と強く相関していた。ヒトGDLDと同様に、KOマウスは有意に角膜上皮のdelayed stainを認め、また8割においてtight-junctionの喪失を認めた。創傷治癒では24時間時に有意な遅延を認めた。光照射実験では開瞼後630lux光照射したマウスのみ混濁を認め、そのなかでもKOマウスが有意に混濁を発症していた。
〔総括(Conclusion)〕
マウスtacstd2遺伝子を欠失させたKOマウスでは重度の混濁が有意に発症した。また角膜上皮の脆弱性を認め、tight-junctionの消失も示した。さらに創傷治癒の遅延や光による混濁誘発などの新しい知見も認められ、このマウスは、GDLDのさらなる病態解明、新しい治療法開発のための強力なツールとなると考えられた。