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大学・研究所にある論文を検索できる 「韓国楼亭から見た自然風景地の景観構成 : 16C韓国詩歌に見る物境、情境、意境概念に着目した楼亭からの景観構成」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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韓国楼亭から見た自然風景地の景観構成 : 16C韓国詩歌に見る物境、情境、意境概念に着目した楼亭からの景観構成

崔, 賢妊 東京大学 DOI:10.15083/0002001430

2021.09.08

概要

楼亭に関する詩歌を分析することとして楼亭の景観構造や詩歌の作者の景観認識を調べて、これを通じて楼亭からの景観構成や特性を導出することができると考えられる。詩歌の創作では客観的景物(物境)に作者の主観的感情及び定義(情境)を結合することによって、作者が追求する精神的な美的境界である‘意境’を成すことになる。本研究は自然風景地としての伝統観賞空間を理解するために‘物境・情境・意境’の概念に着目して、詩文に表れる作者の思想や考えなどから伝統観賞空間である楼亭の景観構成を解析した。研究方法として楼亭の観賞者が選択した「三境」の様相とその結果として ‘意境’という抽象的境地にたどり着く構造が読み取れる詩文を選んだ。具体的に朝鮮時代、楼亭の訪問者らの観賞記録である楼亭詩歌(歌辞文学と題詠漢詩)を中心に各楼亭の「三境」様相を考察し、「三境」と連携して各楼亭の景観構成を読み取って、研究の目的として既存の「三境」概念の理解と適用及びそれによる視覚的・空間覚的・観念的自然風景地としての楼亭の景観構成を解析した。これらの研究例は比較的人工的な庭園空間を対象にしたものである。しかし、「三境」の体験はより多様な空間に対して捉えられてきたものである。たとえば、韓国では自然の中に楼亭を置くだけでしつらえられた観賞空間も多く、詩歌文学でとりあげられたものも少なくない。

そして、景観認識の変化による新しい景観観賞及び体験方法を提示することに対して、

① 芸術に描かれた伝統観賞空間の自然景観を取り巻く「境」の分析を通して、‘物境・情境・意境’の相互関係を整理し、伝統観賞空間の自然景観の景観構造を「三境」の相互関係として明らかにする。

② 伝統観賞空間に関わる詩歌への読み取る方法や構成する要素や表現の特徴を通して、 ‘物境・情境・意境’の景観体験の構造的特性、特により高度の景観体験の境地である ‘意境’への導入方法について考察したうえで、伝統観賞空間である楼亭とその周辺景 観から詩文での観念的意境を通して 神仙世界、理想郷を願った観賞者らの意図を考察 し、伝統観賞空間としての楼亭の景観構成を分析することを目的にする。

「三境」の概念と相互関係に対する理解と伝統観賞空間への自然景観の景観構成を「三境」の相互関係として明らかにすることで伝統空間の理解、観賞による景観体験に新しい『ものの見方』として提示することが可能なことだと考えられる。

第一章では韓国の16C朝鮮時代における詩歌(歌辞文学・題詠漢詩)と観賞空間、意境に関する既往研究を整理し、本研究のオリジナリティーと課題を明確にして、研究の背景と目的及び研究の対象と方法について述べた。

第二章では本研究のキーワードになる三境(物境、情境、意境)、特に‘意境’の概 念の変遷を考証(定義)して、その概念が持つ意味と‘物境’と‘情境’との相互関係 について整理した。そして、研究対象になる伝統観賞空間である楼亭(俛仰亭と息影亭、風詠亭)とその楼亭に関するそれぞれの楼亭詩歌(9編)との連係性や関連性を整理し、研究範囲になる16C朝鮮時代の背景になる思想と自然観に対して概観を行った。その結 果、以下のことが明らかにした。伝統観賞空間である楼亭は周辺の景物を集約する美的 観賞の核心体として景観を眺望できる距離を形成することにより、楼亭文学(歌辞文 学・題詠漢詩)は楼亭とその周辺の景物と関連された作者の情緒を形象化することがで き、楼亭を中心に悠々自適する生活を反映して、作者らの学問、理想、生活などを包括 する文化的総合物であった。三境の概念に対する歴史は長く、その概念も様々で、その 様々な概念の中から‘物境’は物理的形態の美しさ、あるいは事実の認識を意味して、 ‘情境’は物理的形態に創作主体の想像力を加える五感の表現で、創作主体の感情、興 趣だといえ、‘意境’は創作主体の精神世界で現われる意念、理想であり、三境の関係 は‘物境’から‘情景’、‘意境’に行くほど表現の範囲はますます広くなることだと いえる。この概念の整理を踏まえ、‘物境’と‘情境’を始め、‘意境’が16C朝鮮時 代の‘思想・文学・芸術’など様々な分野の全般的にわたって現れて、伝統観賞空間に 関する詩歌文学にもその‘意境’が含まれて現れたと考えられる。

第三章から第五章までは本研究の対象である伝統観賞空間である各楼亭(俛仰亭と息影亭、風詠亭)とそれに関わる各詩文(9編)で現れる景観構成要素の分析を通じて、そこに描かれた各楼亭を取り巻く「境」の分析による各楼亭の景観構成を分析した。そして、三境の相互関係を整理し、各境を構成する要素や表現の特徴を分析した。その結果、以下のことを明らかにした。各楼亭に関わる詩文から読み取った景観要素の名詞(構成要素)と形容詞(性格づけ)の分類及び組み合わせの分析を行った結果、各「境」を構成する構成要素として詩文に記載されている‘名詞’とその名詞を修飾する‘形容 詞’を抽出すると、ある傾向が読み取れることを分かった。基本的な景観の構成を示す ‘骨格要素’として、「地物」と「天文」要素が用いられ、各楼亭の全体的な景観を表 現する‘演出要素’として使用される「気象」や「生物」、「時間」、「季節」要素は、季節ごとの景観の移り変わりや風詠亭での多様な姿の表現に用いられていることと、そ の中で「境」における人の営為や活動などを現わす‘営み・もの要素’では「人工物」、「生活」、「地名」、「人物,他」要素の表現に用いられていると理解される。そして、三境(物境、情境、意境)については複数の文献による定義にもとづき、‘物境’を、 目に見える事物や景観をありのまま表現したものと理解すると、「境」を構成する自然 構成要素(骨格・演出要素)と属性形容詞との組み合わせで表現される「形容詞+名詞」という直接形容形式で表現される組み合わせが中心になり、一方、‘情境’を、作者の 感情やその場の雰囲気を構成要素に投影・反映させたものと理解すると、‘自然構成要 素(骨格・演出要素)’と状態形容詞・心理形容詞の組み合わせと「境」における人の 営為や活動を示す‘営み・もの要素’と属性形容詞・状態形容詞・心理形容詞との組み 合わせで表現される間接形容形式が中心になると理解される。そして‘意境’について は、作者の知識や思想にもとづき、‘物境’や‘情境’に重ねられたものと理解され、「思想」要素と属性形容詞・状態形容詞・心理形容詞とによる間接形容形式の方が多く表現された「境」であることが考察される。

‘物境’では周辺景観の要素をありのまま描写したり、数え上げる段階なので、‘序詞’での景観要素である名詞と形容詞との組み合わせが最も多く表れ、‘本詞(春詞、夏詞、秋詞、冬詞)’を踏まえながら、詩文の後半部の‘結詞’でその組み合わせが最も少なくなる。‘情境’では詩文で作者の周辺景観に関する感情に対する表現が現れることになり、主に景観のありのままを現わした‘序詞’や詩文で作者が表せる思想・考えなどを現わした‘結詞’ではその組み合わせが少なくなることに対し、‘本詞’の季節を現わす‘春詞、夏詞、秋詞、冬詞’では景観に関して感じた感情表現の組み合わせが多く表している。‘意境’では作者の思想や考え、体験などを基にして作者が意図する理想郷に関する表現で詩文の後半部にいくほどその表現が強く表れて、それによる景観要素の名詞と形容詞の組み合わせも多く表れることになる。したがって、詩文の‘結詞’部分にその組み合わせが集中して多く表れるといえる。各楼亭に関連する9つの詩文の分析を総合してみると次のような傾向が読み取れる。‘物境’では‘序詞’で最も多い組み合わせが現れて、‘結詞’にいくほど組み合わせの数が少なくなって詩文の中で最も少ない組み合わせを現れている。‘情境’では‘序詞’と‘結詞’でその組み合わせが少なくなって、季節を現わす‘本詞(春詞、夏詞、秋詞、冬詞)’から総じてその組み合わせが多く表れて、特に‘秋詞’でその組み合わせが最も多く表れることが分かる。‘意境’では詩文の前半部(序詞、春詞)にその組み合わせが少なく、詩文の後半部(冬詞、結詞)にいくほどその組み合わせが多くなり、作者の意図をまとめて表現する‘結詞’からその組み合わせが最も多いことが読み取れる。特に、9つの全体詩文から読み取れる‘意境’に関する組み合わせの半分近くの数が現れることから‘意境’に対する組み合わせは‘結詞’に集中して現れることだといえる。こうした表現手順をみると各楼亭に関わる詩文には‘物境’、‘情境’を順次の表現してゆき、その過程を通して‘意境’に導くという手順が踏まれていると考察された。

第六章では、16C韓国詩歌(歌辞文学・題詠漢詩)から‘物境、情境、意境’の概念に着目して伝統観賞空間としての楼亭から見た自然風景地の景観構成をまとめ、景観構成要素と形容の対応関係を認められる上で、伝統観賞空間の景観構成の特性と‘物境、情境、意境’の相互関係を整理し、伝統空間の理解・観賞による景観体験に新しい作法としての意味を記述した。

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