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大学・研究所にある論文を検索できる 「Studies on wood properties of common four conifers naturally grown in Mongolia」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Studies on wood properties of common four conifers naturally grown in Mongolia

Sarkhad, Murzabyek 東京農工大学

2022.08.18

概要

第 1 章 緒言
モンゴルにおける天然林は,大きく二つに分類することができ,一つは北部に存在する亜寒帯林であり,他方は南部に存在するサクソール林である。このうち亜寒帯林は,モンゴルの森林面積の約 85%を占めている。亜寒帯林には,Larix sibirica Ledeb.,Pinus sibiria Du Tour,Pinus sylvestris L.および Picea obovata Ledeb.などの針葉樹種が分布している。 Larix sibirica,Pinus sylvestris,Pinus sibirica および Picea obovata の総森林面積に占める割合は,それぞれ,63.0,5.3,4.3 および 0.2%である。そのため,これら 4 種がモンゴルの木材生産において重要な針葉樹種であると言える。
モンゴルの針葉樹材の有効利用を行う上で,木材の組織学的特徴,物理的・機械的・化学的性質などの木材性質を明らかにするべきである。加えて,製材品質についても,生産効率や品質を改善するために評価するべきである。しかしながら,モンゴルにおける重要樹種である,これらの針葉樹種についての木材性質や製材品質に関する知見は未だ限られている。
本研究の目的は,モンゴルにおける木質資源の有効活用を通じた,持続可能な林業・木材産業を確立することである。この目的のために,モンゴルの主要針葉樹 4 種(Pinus sylvestris,Pinus sibirica,Picea obovata および Larix sibirica)をモンゴル・セレンゲ県・マンダル村の天然林から採取し,その木材の組織学的特徴,物理的・機械的・化学的性質などの木材性質および製材品質を調査した。

第 2 章 モンゴルの主要針葉樹 4 種の組織学的特徴
本章では,モンゴルの主要針葉樹 4 種(Pinus sylvestris,Pinus sibirica,Picea obovataおよび Larix sibirica)の組織学的特徴を調査した。また,仮道管形態,構成要素率,年輪幅および晩材率についても調査した。光学顕微鏡を用いた観察の結果,4 種の組織学的特徴は,これまでに報告されている同種もしくは同属の種の組織学的特徴と一致していた。4 種の間で仮道管形態を比較すると,Larix sibirica の仮道管はより大きい直径と厚い細胞壁を持ち,Pinus sibirica の仮道管は,直径が小さく壁厚も薄いことが明らかとなった。また,構成要素率は,仮道管率,放射組織率および細胞間道(樹脂道)率が,それぞれ,83.6〜 90.6%,8.8〜15.9%および 0.3〜0.8%であった。平均年輪幅は,Pinus sylvestris,Pinus sibirica,Picea obovata および Larix sibirica でそれぞれ,1.44,1.85,2.06 および 2.04 mmであった。個体を変量効果としたロジスティック曲線を樹種ごとに年輪幅に当てはめた場合のパラメータから算出した肥大成長速度の最大値を示す髄からの年輪数から考えると,本研究で使用した4種の針葉樹の最適伐期は,60〜80 年であると考えられる。晩材率の平均値は,Pinus sylvestris,Pinus sibirica,Picea obovata および Larix sibirica でそれぞれ,25.9,14.2,15.9 および 30.3%であった。また,晩材率の半径方向変動は,Pinus sylvestrisおよび Larix sibirica では対数式が,一方 Pinus sibirica および Picea obovata では一次式の当てはまりが良いことが明らかとなった。

第 3 章 モンゴルの主要針葉樹 4 種の丸太特性および容積密度の軸方向変動
第 3 章では,モンゴルの主要針葉樹 4 種(Pinus sylvestris,Pinus sibirica,Picea obovata および Larix sibirica)の丸太特性(テーパー比,未成熟材率および動的ヤング率)および 容積密度の軸方向変動を調査した。軸方向変動は,線形もしくは非線形混合モデルにより 評価した。その結果,Pinus sylvestris の丸太テーパー比を除いたすべての樹種の丸太テー パー比および未成熟材率は,基部から頂端に向かって増加する傾向が認められた。丸太テ ーパー比の平均値は,Pinus sibirica では 1.9 cm/m であり,その他の 3 樹種ではいずれも 約 1.3 cm/m であった。未成熟材率は,最も低い値が Pinus sylvestris において認められ,一方,最も高い値は Larix sibirica において認められた。丸太の動的ヤング率は,基部から 頂端に向かって増加する傾向を示し,平均値は,Pinus sylvestris,Pinus sibirica,Picea obovata および Larix sibirica でそれぞれ,7.81,5.74,7.12 および 8.78 GPa であった。 容積密度は,すべての高さにおいて,髄から樹皮に向かって増加(Pinus sylvestris および Larix sibirica)もしくは減少(Pinus sibirica および Picea obovata)し,その後ほぼ一定 の値を示した。得られたモデル式から算出した樹幹全体の容積密度の値は,Pinus sylvestris, Pinus sibirica,Picea obovata および Larix sibirica でそれぞれ,0.374,0.371,0.357 お よび 0.515 g/cm3 であった。また,容積密度の未成熟材の推定値は,成熟材のそれと比較し て有意に低い値を示した。得られた結果から,Pinus sylvestris は,製材歩留と材質の点に おいて製材生産に適した樹種であり,Larix sibirica は高い強度特性を持つ点において構造 用材の生産に適した樹種であると考えられる。

第 4 章 モンゴルの主要針葉樹 4 種の木材性質の半径方向変動
本章では,モンゴルの主要針葉樹 4 種の晩材仮道管長,晩材仮道管 S2 層ミクロフィブリル傾角,容積密度,含水率 1%あたりの平均収縮率,曲げヤング率,曲げ強さ,曲げ仕事量,衝撃曲げ吸収エネルギー,縦圧縮強さおよびせん断強さの半径方向変動を調査し,線形もしくは非線形混合モデルにより評価した。ほとんどの木材性質は,髄から樹皮に向かって増加もしくは減少し,その後安定する傾向を示した。また,成熟材の木材性質を得られた混合モデルにより推定したところ,成熟材の木材性質の観点から,1)Pinus sylvestris および Larix sibirica は構造用材生産に適しており,2)Pinus sibirica は家具・内装材などに利用可能であり,3)Picea obovata は,構造用材生産および家具・内装材の生産の両方に適していることが明らかとなった。

第 5 章 モンゴルの主要針葉樹 4 種の木材化学成分量および耐朽性
モンゴルの主要針葉樹 4 種の木材化学成分(温水抽出物,アルカリ抽出物,有機溶媒抽出物,ホロセルロース,α−・β−・γ−セルロース,クラーソンリグニンおよび灰分)を定量した。また,各樹種の心材における白色腐朽菌(カワラタケ,Trametes versicolor)および褐色腐朽菌(オオウズラタケ,Formitopsis palustris)に対する耐朽性を評価した。 Larix sibirica の心材は,高い温水抽出物およびアルカリ抽出物量,そして低いホロセルロースおよびクラーソンリグニン量であり,他の樹種と特徴が異なっていた。この特徴は,冷水で容易に抽出が可能なアラビノガラクタンが豊富に存在することに由来すると考えられる。すべての樹種における質量減少率は,カワラタケで 6.9〜28.1%であり,オオウズラタケで 24.8〜48.3%であった。4 種を比較すると,Pinus sibirica が両菌に対して最も高い耐朽性を示した。線形混合モデルによる解析では,質量減少率と心材中の抽出物量との間に負の相関関係が認められた。このことから,抽出物を多く含む心材は高い耐朽性を持つと考えられる。

第 6 章 モンゴルの主要針葉樹 4 種の 204 材の品質に関する予備的評価
本章では,モンゴルの主要針葉樹 4 種から構造用 204 材を生産するために,得られた 204材の材質の予備的評価を行なった。Pinus sylvestris,Pinus sibirica,Picea obovata および Larix sibirica で,それぞれ 61,39,67 および 37 本の 204 材を得た。204 材は,枠組壁工法構造用製材及び枠組壁工法構造用たて継ぎ材の日本農林規格に準じて目視等級区分した後,静的曲げ試験を行い,曲げヤング率および曲げ強さの基準値(信頼水準 75%の 5%下限値)を求めた。また,曲げ性能に及ぼす木取りの影響も評価した。曲げヤング率および曲げ強さの基準値は,Pinus sylvestris,Pinus sibirica,Picea obovata および Larix sibirica においてそれぞれ,4.75 GPa および 15.6 MPa,3.39 GPa および 11.0 MPa,3.78 GPa および 11.7 MPa,6.07 GPa および 22.3 MPa であった。幾つかの例外を除いて,モンゴルの主要針葉樹 4 種から得られた 204 材の曲げ強さの基準値は,類似した他の樹種のそれと比較してほぼ同等であった。目視等級区分の結果,Pinus sylvestris および Pinus sibirica では,全板数の 80%を超える 204 材において1級以上に区分されたが,Larixsibirica においては,約 40%が 3 級および等外に分類された。製材時の木取りは,Pinus sylvestris および Larix sibirica の曲げ性能に影響を与えたが,Pinus sibirica および Picea obovata においては認められなかった。また,すべての種の 204 材において,動的ヤング率は曲げ性能と有意な相関関係が認められた。得られた結果から,モンゴルの主要 4 種の針葉樹から構造用 204 材が生産可能であることが明らかとなった。

第 7 章 結論
本研究では,モンゴルにおける木材資源の有効活用を通じた持続可能な林業および木材産業の確立のために,主要な針葉樹 4 種,Pinus sylvestris,Pinus sibirica,Picea obovataおよび Larix sibirica の木材性質および製材材質を調査した。得られた結果より,各樹種の木材の特徴を明らかにした。
Pinus sylvestris 材は高い強度特性を示し,また,この材から欠点の少ない製材が得られた。このことから,Pinus sylvestris は,品質の高い構造用製材を生産することが可能であると考えられる。Pinus sibirica においては,木材は高い耐朽性を示したが,強度性能は低い値を示した。一方,木材性質の未成熟材と成熟材の差異は小さい傾向が認められた。このことから,本樹種の木材は,主に家具や内装材に利用することが推奨される。Picea obovata 材は,調査した 4 種の中では,中庸の強度特性を示したが,耐朽性が最も低い傾向が認められた。このことから,本種の木材は,構造用製材の生産と家具や内装材の両方に利用が可能であると考えられる。Larix sibirica 材は,木材性質の未成熟材と成熟材の差異が大きいが,調査した 4 種の中で最も高い強度特性を有していた。このことから,未成熟材の存在に留意すれば,高い強度特性を持つ構造用製材の生産が可能であると考えられる。
本研究で得られた結果は,モンゴルにおける木材資源の効率的な利用に貢献するものである。将来的には,本研究で得られた結果に基づいて木材資源の効率的な利用を行うことにより,モンゴルにおける持続可能な林業・木材産業の確立が可能となると考えられる。

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