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大学・研究所にある論文を検索できる 「Gut permeability and its clinical relevance in schizophrenia」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Gut permeability and its clinical relevance in schizophrenia

石田 一希 山梨大学

2021.03.23

概要

(研究の目的)
脳と腸は迷走神経を通した神経活動やホルモンを介して互いに影響を与え合っている(脳-腸相関)が、これには腸内細菌が強く影響を与えているとされる。現在、腸内細菌と様々な疾患との関連が研究さ れており、精神科疾患においても気分障害、自閉症スペクトラム障害や統合失調症をはじめとして研 究が行われている。腸は異物を体内に取り込まないよう何重もの防御機構を備えているが、腸内細菌 の構成の変化により異常をきたし、いわゆる「leaky gut(漏れる腸)」と呼ばれる防御機構が機能不 全をきたした (腸管透過性が上昇した) 状態になることが知られている。これは腸の炎症から脳-腸相 関を通じて脳の機能障害につながる可能性が指摘されている。腸内細菌と統合失調症との関連につい て調べた研究に比べ、腸管透過性と統合失調症との関連について注目した研究は我々が調べた限り非 常に少なく、また統合失調症患者の腸管透過性を調べた研究において、現在一般的に用いられるラク ツロース・マンニトール負荷試験(LMT)を実施した研究は我々が知る限りない。そこで統合失調症患 者の腸管透過性を LMT によって測定し、統合失調症患者の腸管透過性と症状、服薬、認知機能や血 液中の免疫指標との関係に着目し研究を行った。

(方法)
本研究では、22 名の統合失調症患者(平均 37.9 ± 10.5 歳、男性 9 名、女性 13 名)と 86 名の健常者(平均 43.5 ± 11.0 歳、男性 41 名、女性 45 名)を対象とした。被験者は全員日本人で血縁関係はなかった。統合失調症の重症度測定には陽性・陰性症状評価尺度(PANSS) 、認知機能の測定には統合失調症認知機能簡易評価尺度(BACS)を用いた。小腸の腸管透過性の評価には LMT を用いた。LMT の手順は以下の通りである。被験者は起床予定時刻の 8 時間前から絶食し、起床時にベースラインの尿を採取後、ラクツロースとマンニトールを経口摂取しその後 6 時間の間に排出された尿を採取した。尿中に排出されたラクツロースとマンニトールの投与量に対する回収率を測定し、それらの比[ラクツロース/マンニトール比(LMR)]を腸管透過性の指標とした。免疫指標として血液中の高感度 C 反応たんぱく (hsCRP)とナチュラルキラー(NK)細胞活性を用いた。

(結果)
いわゆる「leaky gut」(LMR ≥ 0.1)の割合が統合失調症患者群で 22.7%、健常者群で 5.8%と統合失調症患者群の方が健常者群に比べて腸管透過性が異常に高くなっている人の割合が有意に高くなっていた[オッズ比=4.8 (95%信頼区間=1.2-18.3)、Fischer の直説法 p=0.03]。LMR と PANSS の得点および 1 日あたりの抗精神病薬の服用量との間には有意な相関は見られなかったが、統合失調症患者群において LMR と BACS の合計 Z 得点(ρ=-0.52, p=0.02)、および NK 細胞活性(ρ=-0.43, p=0.04)とそれぞれ有意な負の相関がみられた。

(考察)
本研究は我々の知る限りにおいて、LMT を用いて統合失調症患者群と健常者群の腸管透過性の比較を行った世界で初めての研究である。さらに統合失調症患者群においては LMT と症状の重症度、服薬量、認知機能、免疫指標との関係も検討をした。

結果として、統合失調症患者群は健常者群に比べ、いわゆる「leaky gut」と呼ばれる腸管透過性が異常に高くなっている人が多くいることが示唆された。この結果に関して LMR と服薬量の間には有意な相関関係がみられなかったことから、この「leaky gut」になっている人の割合が統合失調症患者群で多くなっていることは抗精神病薬の服用が原因ではないと考えられる。LMR と認知機能検査の結果との関連において、BACS の合計Z 得点との間に有意な負の相関がみられたことから、腸管透過性が統合失調症の認知効能の低下と関係していることが示唆され、腸管透過性を改善することで統合失調症の認知機能の低下を改善できる可能性が示唆された。LMR と免疫指標との関連において NK 細胞活性との間に有意な負の相関がみられ、腸管透過性の変化が統合失調症患者の NK 細胞活性低下と関連していることが示唆された。

ただし、今回の研究においては特に統合失調症の被検者数が少なかったことにより第 2 種の過誤が起きている可能性があること、年齢と LMR との間に有意な相関がみられなかったため、今回の統合失調症患者群と健常者群との間に観察された LMR の差は年齢に起因するものではないと考えられるものの、統合失調症患者群と健常者群との間でわずかではあるが有意な年齢分布の差が認められたこと、統合失調症患者群の参加者のほとんどはすでに薬物治療を受けており、加えて PANSS の平均値が 55.4 と比較的症状が軽かったため、もっと症状が重い患者群であれば腸管透過性がより高くなっていた可能性があることが今回の研究の課題点としてあげられる。これらの問題を克服するためには多くの服薬治療を受けていない状態の患者を対象とし、より大きなサンプルサイズでのさらなる研究が必要である。

(結論)
統合失調症では健常者に比べて LMR が異常に高くなっている割合が多くなっており、加えて腸管透過性と統合失調症患者の認知機能やNK 細胞活性との関連が示唆された。

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