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大学・研究所にある論文を検索できる 「加齢に伴って生じる染色体不安定性の実態及び出現要因の解明」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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加齢に伴って生じる染色体不安定性の実態及び出現要因の解明

陳 冠 東北大学

2022.03.25

概要

染色体の数や構造を一定に保つことは、細胞の恒常性を維持する上で必須の機構である。細胞分裂の際に染色体の不均等な分配が高頻度に起こる染色体不安定性は、がん細胞の重要な表現型の一つとして古くから認識されている。近年、このような現象は、個体の老化に伴って正常な体細胞においてもその発生頻度が増加することが報告されているが、その実態はまだ解明されていないことが多い。

本研究では、異なる月齢の野生型 C57BL/6j マウスから初代皮膚線維芽細胞を単離し、生体の組織内に近い 3%酸素の条件で細胞を培養し、染色体不安定性の実態について解析を行った。染色体不安定性の指標の一つである微小核を持つ細胞の割合については、加齢に伴って in vivo と in vitro 両方でその頻度が増加した。さらに、生体の組織内に近い 3%酸素濃度と、軽度な酸化ストレス環境と見なされる大気中の 20%酸素濃度の条件下で、長時間の生細胞観察を行い、染色体分配の詳細な解析を進めた。その結果、老齢マウスより単離した細胞では、核膜崩壊から姉妹染色分体解離の開始までの時間をはじめ、分裂期の時間が延長し、ラギング染色体を代表とする染色体分配異常の割合が増加することがわかった。以上の結果から、加齢に伴って染色体不安定性が出現することが強く示唆された。

染色体の異常分配を惹起する要因として、分裂期における動原体微小管の結合異常と間期における染色体の構造異常が知られているため、加齢に伴うそれらの変化について解析を行った。その結果、分裂期における染色体の分配異常を誘発する動原体微小管の僅かな安定化、紡錘体チェックポイントの堅牢性の減弱が確認された。一方、間期における染色体の欠失や結合などを引き起こす DNA 損傷の出現頻度について、複製ストレスによって生じる DNA 損傷修復の指標である 53BP1 nuclear body の陽性細胞が加齢に伴って増加することがわかった。以上の結果から、これらの要因が加齢に伴う染色体不安定性の出現に関与することが示唆された。

興味深いことに、3%酸素濃度下で培養していた細胞を 20%酸素濃度下で生細胞観察すると、染色体分配異常の増加が見られ、特に老齢マウスより単離した細胞での変化が顕著だった。このことから、酸化ストレスレベルの増加が染色体の分配異常に何らかの影響を与える可能性が高いと考えられた。そこで、加齢に伴う染色体分配異常の増加にも酸化ストレスが関与する可能性を考え、活性酸素種のレベルについて解析した。その結果、20%酸素濃度下では 3%酸素濃度下よりも細胞内の活性酸素種が増加していただけでなく、老齢マウスより単離した細胞では、3%酸素濃度下でも活性酸素種が増加していることがわかった。このことから、老化の一因として知られている酸化ストレスの蓄積が、加齢に伴って生じる染色体不安定性を引き起こす可能性が示唆された。さらに、活性酸素種が加齢に伴って蓄積する原因として、老齢マウスではミトコンドリア機能が低下し、スーパーオキシドが蓄積することを明らかにした。

最後に、酸化ストレスが如何に染色体不安定性に関与するかを解明するために、抗酸化物質 N-アセチル-L-システイン(NAC)を投与することで、染色体不安定性と 53BP1 nuclear body の発生頻度について評価を行った。その結果、老齢マウスより単離した初代皮膚線維芽細胞を NAC で処理することによって、活性酸素種の量が減少すると共に、微小核を持つ細胞の割合も減少し、酸化ストレスの度合を軽減させることで染色体不安定性が抑えられることがわかった。また、53BP1 nuclear body を有する細胞の割合も有意に減少したため、染色体不安定性と複製ストレスの関連が示唆された。以上の結果から、加齢に伴って軽度の染色体不安定性が出現し、これが酸化ストレスの増加に起因するという新たな関連性が示された。

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