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大学・研究所にある論文を検索できる 「The Significance of Molecular Biomarkers on Clinical Survival Outcome Differs Depending on Colon Cancer Sidedness」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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The Significance of Molecular Biomarkers on Clinical Survival Outcome Differs Depending on Colon Cancer Sidedness

HIRABAYASHI, SHO 平林, 祥 名古屋大学

2020.04.02

概要

【緒言】
 結腸癌は、発生学的見地から中腸もしくは後腸に由来する腫瘍である。中腸より発生する右側結腸癌は、後腸に由来する左側結腸癌と比較して有意に予後不良とする報告が散見され、その理由として両者には分子生物学的な背景に相違があることが指摘されている。将来的には分子マーカー発現に準じた個別の化学療法の立案が必要になる可能性があることを考えると、予後に影響のある分子マーカー群を右側結腸癌、左側結腸癌それぞれに解析して明らかにする必要があると考え、本研究を立案した。

【対象及び方法】
 当科で2008年から2013年に手術を施行した結腸癌患者のうち、病理学的ステージI-IIIの117名を対象とした。原発巣の占拠部位により、右側結腸群44例(盲腸から上行結腸)と左側結腸群73例(下行結腸からS状結腸)に分けた。癌特異的遺伝子異常に関する評価項目として、①癌特異的メチル化マーカーの定量的解析と②化学療法抵抗性に関与するとされるp53蛋白/ERCC1蛋白の発現解析を施行した。前者はまず、手術標本より癌部及び非癌部の組織を採取し、DNAを抽出してbisulfited DNA検体を作成した。結腸癌新規メチル化マーカー候補であるKIF1A、PAX5、VGFについて定量的メチル化特異的PCR(QMSP)を行った。後者については、モノクローナル抗体を用いた免疫組織学的染色で検討した。これらの項目と予後データとの関連を解析して、側性別に予後因子となりうる項目の検索を行った。

【結果】
①QMSPによるメチル化の解析では、3つすべてのメチル化マーカーについて、癌組織で非癌部よりも有意に高いメチル化を認め、結腸癌特異的メチル化マーカーとして妥当であると考えられた(図1)。適切なカットオフ値を用いてメチル化マーカー陽性/陰性を定義し、2個以上の遺伝子でメチル化を認めた症例を高メチル化群、1個以下を低メチル化群としたところ(図2)、右側結腸癌で有意に高メチル化群が多かった(右側結腸で68.2%、左側結腸で39.7%、P=0.004、表1)。
②免疫組織学的染色の検討では、p53蛋白の異常発現は左側結腸癌で有意に多く認められた(右側結腸癌の52.3%、左側結腸癌の75.3%、P=0.015、表2)。またERCC1の異常発現は、結腸癌の側性別に明らかな傾向は認めなかった(右側結腸癌の29.5%、左側結腸癌の17.8%、P=0.170、表2)。
 最後にDisease free survivalについての予後因子を側性別に多変量解析で検討した。右側結腸癌では、高メチル化群が予後良好な因子となった(ハザード比0.23、95%信頼区間0.05-0.99、P=0.049)。一方左側結腸癌では、T因子(ハザード比3.72、95%信頼区間1.15-12.05、P=0.028)が予後不良因子として、p53蛋白の異常発現(ハザード比0.27、95%信頼区間0.09-0.87、P=0.028)が予後良好な因子として抽出された(表3)。

【考察】
 高メチル化群は、高齢女性症例の右側結腸癌に多くかつ予後良好と文献的に報告されており、今回の研究でもDisease free survival(DFS)について同様の傾向を観察できた。一方、TP53の変異が結腸癌の予後に与える影響に関しては、依然として議論の余地がある。本研究ではTP53変異同定よりも簡便に測定可能なp53蛋白の発現強度でDFSについて検討を行ったが、p53の異常発現症例は右側結腸で予後不良であった一方で、左側結腸では逆に、有意な予後良好因子となった。臨床病理学的因子との相関をみるとp53の異常発現は、側性に関わらずT因子・N因子、リンパ管侵襲陽性などの悪性度の高い症例と相関していたことから、左側結腸癌で予後良好となった結果と齟齬が見られる。そこで左側結腸癌症例を術後補助化学療法の有無で分けて検討したところ、術後補助化学療法を受けていない症例ではp53の発現強度によって予後に有意差を認めなかったが、術後補助化学療法を施行された症例ではp53の異常発現症例で有意に予後良好となる傾向を認めた(図3)。以上より、左側結腸の結腸癌症例でp53の異常発現が予後良好な因子として規定された背景に、p53の異常発現が化学療法感受性に影響を及ぼしている可能性が示唆された。
 本研究にはいくつかの制約がある。第一に統計的に説得力のある結果を示すには、症例数が少ない点が挙げられる。第二に結腸癌の 実臨床において現時点で治療方針の決定に関与しているRASやBRAFの変異について十分な情報がないことも、予後規定因子の候補を選別するうえで不十分な解析になっている可能性がある。よって今後これらの問題を充足した大規模コホートによる検証が必要だと考える。

【結語】
 病理学的ステージI-IIIの結腸癌切除症例のDFSを規定する分子生物学的予後因子について検討し、右側結腸癌では高頻度メチル化が、左側結腸癌ではp53異常発現が抽出された。予後を規定する分子生物学的異常は、結腸癌の側性によって異なる可能性が示唆された。

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