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ナトリウムイオン電池用大容量合金型/コンバージョン型/有機型負極活物質

郝, 志強 HAO, ZHIQIANG ハオ, チキャン 九州大学

2021.09.24

概要

現在、リチウムイオン電池(LIB)は、高エネルギー密度とサイクル性を併せ持つ小型携帯機器用蓄電池として、普及しているが、遷移金属を多用しているため、コストパフォーマンスに難があり、大型蓄電池としては、むしろナトリウムイオン電池(SIB)が有望視されている。SIBの電池構造や作動原理はLIB と類似しているが、ナトリウムはリチウムに比べ、3倍の原子量、 2倍のイオン体積を持つため、高性能な SIB の開発には、LIB 以上に正極・負極活物質の開発難度が高く、さらにコストパフォーマンス改善のため、希少元素を使えないという材料開発の制約も LIB 以上に厳しい。特に市販 LIB 用負極として使われている黒鉛負極は Na とほとんど反応しないため、 黒鉛負極に代わる SIB 用の負極活物質を開発することは正極活物質以上に重要かつ喫緊の課題となっている。本研究では、SIB 用負極活物質候補として、合金型 Sn4P3、コンバージョン型遷移金属カルコゲナイド FeCoS4、有機型 NaxC6O6 の3種類に着目し、それぞれの合金化反応、コンバージョン反応に伴う体積変化や電解液への溶出といったそれぞれ固有の劣化メカニズムを明らかにし、それを克服する合成プロセスの改良を図ることで経済性、安全性に優れるSIB 実現の可能性を高めることを目的とした 。

本論文で明らかにされた成果を以下にまとめる。
1) 1 つ目の SIB 用負極活物質として着目した合金型 Sn4P3 は、比較的大きな理論容量、好適なNa+合金化ポテンシャルを有しているが、合金化に伴う体積変化が大きく、サイクル特性やレート特性に課題がある。そこで、導電性付与と体積変化の緩和を狙って Sn4P3をカーボンマトリックスに埋め込んだ Sn4P3-C コンポジットを検討した。その結果、既報の Sn4P3 ベース負極活物質の中でも、優れたレート性能(540 mAh /g at 5 A/g)と最高の可逆容量(844 mAh/g at 0.5 A/g)を示した。その可逆容量は、0.5 A/g で 100 サイクル後でも 705 mAh/g と高く、初期のクーロン効率は 85.6%に達し、3~100 サイクル目の平均クーロン効率は 99.75%を達成した。この負極を用いて Na-Sn4P3-C 負極//Na2C6O6 正極のフルセルを組んだところ、そのエネルギー密度は、負極と正極の活物質の合計重量に基づいて、0.5A /g で 256Wh /kg を達成し、Sn4P3 合金型負極の炭素複合体化が、レート特性とサイクル特性を同時に改善可能であることが明らかとなった。

2) 2 つ目の SIB 用負極活物質として着目したバイメタル型硫化物 FeCoS4 は、8Na とのコンバージョン反応により、882 mAh/g もの理論容量が期待できる有望な負極活物質の 1つである。しかし、合金型負極同様、体積変化が大きく、またNa との反応生成物として、絶縁性の Na2S が充電末期に多量に生成する問題があり、サイクル性や充放電過電圧の低減による充放電効率改善の課題があった。本章では、カーボンナノチューブ・グラフェン・ハイブリッド(CNTGH)をその場固相成長させ、その中にナノサイズのFeCoS4を埋め込んだ。このような空間分布により、支持体である CNTGH マトリックスに包まれたナノサイズの FeCoS4 活物質粒子は、大きな Na2S および Fe/Co クラスターの成長を防ぎ、体積変化を緩和し、優れたレート性能と長いサイクル寿命を実現した。 FeCoS4@CNTGH の可逆容量は、初期サイクルの 0.5A/g で 745mAh/g、5.0A/g でも 660mAh/g を超え、FeCoS4@CNTGH の長期サイクル寿命試験では、2.0A/g で 1000 サイクル後の容量が 680 mAh /g に達した。さらに、FeCoS4@CNTGH 負極// Na3V2(PO4)3 正極のフルセルにて、これまでサイクル性に課題があったコンバージョン型負極でも 4000サイクル後の容量保持率が 80%と良好な可逆性を発揮しうることを実証した。

3) 導電性に難のある有機系負極 NaxC6O6 を、再結晶処理によって結晶子サイズ 29.5 nm、二次粒子サイズを 100nm までナノ化し、初回容量に関しては改善に成功したものの、ナノ化によって、有機系負極活物質の課題である電解液への溶出による特性劣化の問題が深刻化する。そこで電解液の最適化を検討する中で、エーテル系電解液にて 0.1A/g の電流密度で、ナノ化 NaxC6O6 の可逆容量が 2Na の理論容量 250 mAh/g に肉薄する約 230 mAh/g であり、5.0 A/g のハイレート条件でも 128 mAh/g に達することが可能となった。さらに、ナノ化 NaxC6O6 の容量保持率は、0.5 A/g で 1000 サイクル後に約 85%を達成し、 NaxC6O6 負極// Na3V2(PO4)3 正極のフルセルにて、放電電位 2.0 V の高電位を維持することで有望なエネルギー密度の実証に成功した。

以上、本論文では、SIB 用の 3 種類の異なる負極材料を報告し、いずれもエーテル系電解質で優れた電気化学的特性を示した。さらに、それらのナトリウム蓄積メカニズムを分析した。一方、本論文は、長いサイクル寿命と大きなエネルギー密度を持つ SIB を構築するための解決策を提案した。

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参考文献

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