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大学・研究所にある論文を検索できる 「Denudation process of high-grade metamorphic nappe in a continental collision zone constrained by thermochronological inverse analysis: an example from eastern Nepalese Himalaya」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Denudation process of high-grade metamorphic nappe in a continental collision zone constrained by thermochronological inverse analysis: an example from eastern Nepalese Himalaya

Nakajima, Toru 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k23018

2021.03.23

概要

大陸衝突帯における高度変成岩類の上昇・削剥過程を理解する上で、ヒマラヤのような現在進行形の大陸衝突帯を研究することは非常に重要である。本論文の2章でレビューされたように、ヒマラヤでは従来、地表における高度変成岩類の、熱年代の分布パターンに着目した研究が主として行われてきた。しかし、高度変成岩類の詳細な温度-時間履歴(t-Tパス)を制約し、上昇・削剥過程を明らかにするためには、従来の熱年代測定に加え、熱史逆解析を行い、時間分解能を高める必要があった。そこで本研究は、東ネパールに分布する高度変成岩類であるHigher Himalayan Crystallineナップ(HHCナップ)とその構造的下位の堆積岩類であるLesser Himalayan sediments( LHS) に対し、フィッション・トラック( FT)年代測定、および、FT長解析をもとにした熱史逆解析法を適用し、これらの冷却史を高時間分解能で明らかにした。またthermokinematicモデルを用いて、HHCナップとLHSの冷却史の前進モデリングを行うことで、東ネパールにおけるHHCナップの冷却過程と、上昇・削剥過程との対応関係を明らかにし、HHCナップの岩石が記録する冷却過程を説明しうるテクトニクスを制約した。これらの結果を総合することで、東ネパールの上部地殻の、地質学的タイムスケールにおける上昇・削剥過程を明らかにした。

3章では、東ネパールの南北測線に沿ってHHCナップとLHSの岩石試料を計17個採取し、ジルコンと燐灰石のFT年代測定とFT長解析を行った。東ネパールで新たに得られたジルコンFT年代は、HHCナップの先端部から高山帯に向けて段階的に若くなる年代分布パターンを示した。一方、燐灰石FT年代はHHCナップの先端部で若い年代が得られ、単調な北方若年化パターンは示さなかった。FT長解析をもとにした熱史逆解析では、HHCナップから採取された8つの片麻岩試料のt-Tパスを制約することに成功し、350℃以下の温度領域におけるHHCナップの冷却史が以下の3つの特徴をもつことが明らかになった。

(i) HHCナップは250–350℃で徐冷したのち、約100℃まで急冷し、その後再度徐冷した (gradual-rapid-gradual cooling、以下GRG冷却)、
(ii) 各地点の岩石が経験した急冷の時期は、北方地域の試料ほど遅い、
(iii) HHCナップの最前縁部は100–350℃の温度領域で徐冷後、2 Ma以降に急冷した。

4章では、2章でレビューした、従来ヒマラヤで提唱されてきたテクトニックモデルを検証すると同時に、東ネパールにおけるHHCナップの上昇・削剥の主営力を制約することを目的に、以下の①~③の過程を再現する5つのテクトニックモデルについて、3次元thermokinematic前進モデリングを行った。

①プレート境界断層であるMain Himalayan Thrust(MHT)の活動に伴い、HHCナップと下位のLHSが一体となってオーバースラストするとともに、削剥される過程。
②LHSのデュープレックス構造の発達とともに、その直上が強い削剥を受ける過程。
③MHTから分岐する断層の活動に伴い、第四紀以降に高山帯が急速にオーバースラストし、削剥される過程。

5章では、3章で熱史逆解析を行った地点に相当する8地点について、3次元thermokinematic前進モデリングから算出されたFT年代およびt-Tパス(4章の結果)と、東ネパールから実際に得られたFT年代およびt-Tパス( 3章の結果) とを比較することで、テクトニックモデルの妥当性を検証した。その結果、以下のような結果を得た。

①の過程を再現するモデルのうち、MHTが平坦な形状を示すモデルでは8地点の t-Tパスはいずれもほぼ一定の冷却速度を示し、試料間での冷却史に顕著な差は見られなかった。一方、MHTがflat-ramp-flat構造を示すモデルでは、GRG冷却や急冷時期の北方若年化、FT年代の北方若年化など、東ネパールで観察されたFT年代およびt-Tパスの特徴が最もよく再現された。

②の過程を再現するモデルのうち、MHTの屈曲部でデュープレックス構造が発達するモデルでは、デュープレックス構造が発達する期間はGRG冷却や急冷時期の北方若年化が生じなかった。一方、デュープレックス構造が形成された後にMH Tの形状が安定化するモデルでは、東ネパールから実際に得られたデータをよく再現する結果が得られた。また、デュープレックス直下で下盤の物質が連続的に付加し続けるモデルでは、GRG 冷却は生じなかった。

③の過程を再現したモデルでは、分岐断層の変位速度が大きい場合、分岐断層の上盤ではGRG冷却が生じなかった。

以上の結果から、東ネパールで観察されたGRG冷却や急冷の北方若年化が生じるためには、以下の3つの条件が達成されることが必要であると示された。

(1) HHCナップとLHSがMHTの活動に伴いオーバースラスト・削剥されること、
(2) MHTがflat-ramp-flat構造を示すこと、
(3) MHTの形状が長期間変化せず安定であること。

以上により、低温領域におけるHHCナップの冷却過程は、MHTの活動に伴う上盤のオーバースラスト・削剥過程を強く反映していることがわかった。また、HHCナップのt-Tパスが示すGRG冷却や急冷時期の北方若年化といった特徴は、東ネパールのMHTがflat-ramp-flat構造を示すこと、およびその形状が9 Ma以降安定であったことを示唆することが明らかとなった。すなわち、東ネパールにおける削剥速度やその南北分布パターンは9 Ma以降大きく変化していない可能性が高い。

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