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大学・研究所にある論文を検索できる 「Thermal state of the upper mantle and the origin of the ophiolite pulse in the Cambrian-Ordovician time」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Thermal state of the upper mantle and the origin of the ophiolite pulse in the Cambrian-Ordovician time

木村, 皐史 東京大学 DOI:10.15083/0002006680

2023.03.24

概要

論文審査の結果の要旨

氏名

木村

皐史

本博士論文は、以下の 3 章より構成される。
第1章では、地球の熱史を理解する上でマントルの熱状態推定が重要であることを述べ、
その指標としてのポテンシャル温度(Tp)を導入した上で、Tp に基づく全球的マントル
熱状態推定、オフィオライトパルスの形成要因とそのダイナミクスの理解を本研究の目的
として述べている。特に、オフィオライト形成集中期(オフィオライトパルス)を生じさ
せる機構の背景にある地球からの間欠的熱損失として、コアマントル境界からのスーパー
プリュームの上昇とスラブ断裂の頻発などリソスフェアの急激な沈降という二つのモード
があること、及び、カンブリア-オルドビス紀の島弧起源オフィオライトパルスの時期にプ
リューム活動が不活発であったことを指摘し、カンブリア-オルドビス紀のオフィオライト
の熱履歴に焦点を当てることによって、オフィオライトパルス形成の必要条件を明らかに
するという研究戦略を立てている。
第 2 章では、本研究で重要な全球的 Tp 推定を島弧環境から得るために克服しなくてはな
らない初生マグマ中の含水量の決定と特異的溶融場の問題を指摘し、それを解決するため
に深部で急速に固化した岩脈を用いる新しい手法を提案している。その上で、研究対象と
して選択したカンブリア-オルドビス紀パルスに属する島弧オフィオライトである北上山
1

地早池峰宮守オフィオライトの沈積岩層に貫入する超苦鉄質岩岩脈について、岩石学、地
球化学、鉱物化学的特徴を記載した。得られた岩石学的・地球化学的データに対して、様々
な 2 次的改変効果を剥ぎ取った上で、上部マントルで生成された初生マグマの含水量と化
学組成を推定し、主成分組成からマグマ分離条件を温度 1430℃、圧力 5GPa、溶融度 7-9wt%
と推定し Tp として 1350℃を得、また、微量元素組成からマグマ生成機構が現在の中央海
嶺玄武岩を生じさせるようなマントル(MORB ソースマントル)の減圧溶融であることを
示した。得られた Tp は沈み込みスラブ下のアセノスフェアの熱状態を反映しており、そ
のことから、上記のマグマ生成の唯一可能なテクトニックスがスラブ断裂であるという解
釈を導くことに成功した。本章では、上記の解釈の地球科学的意義を理解するために、当
時の中央海嶺起源であると推定されている世界のオフィオライトの玄武岩噴出岩からも
Tp を推定し、当時のグローバルな上部マントルの Tp は現在の地球の最上部マントルと同
様であることを明らかにしている。さらに、カンブリア-オルドビス紀のオフィオライトの
噴出岩の希土類元素(REE)をコンパイルし、超苦鉄質岩脈の値と比較することで、サブス
ラブ由来マグマが多いことを指摘した。以上の結果に基づいて、本章では、カンブリアオルドビス紀オフィオライトパルスの成因は、ゴンドワナ超大陸形成時の大陸-島弧衝突の
頻発に伴うスラブ断裂とオフィオライトの上昇であると結論づけている。
第 3 章では、第 2 章で明確にしたスラブ断裂のテクトニクスを解明するためには、百万年
以下の時間スケールの時間分解能が必要であることを指摘した上で、そのために早池峰宮
守オフィオライトの沈積岩層ユニットと超苦鉄質岩脈をあわせて用いることが有用である
ことを述べている。この章では、詳細な地質調査に基づいて沈積岩ユニットがダナイト優
2

位とウエールライト優位の岩相が東から西に積み重なっている層序を明らかにし、沈積岩
層ユニットの岩石、地球化学、鉱物化学的記載を行った上で、単斜輝石の REE 元素比から
初生的マグマの元素比の層序変化を推定している。さらに、これらの推定結果に基づいて、
溶融深度、溶融程度、溶融に関与した流体量の推定を可能とする 3 つの REE 元素比指標を
選択し、溶融圧力指標の系統的な時間変化からスラブ断裂が 140km で起き 250km まで数
百万年以下で沈降したことを明らかにし、スラブ断裂の破局性とその頻発が上部マントル
の間欠的冷却を引き起こす可能性を指摘している。
以上のように、本論文は、今まで解析が困難と思われた地域においてマントルポテンシ
ャル温度(Tp)を推定する方法論を確立した。また、地球化学・岩石学的のデータに基づ
いて「プレート断裂プロセス」を明らかにする独自の信憑性の高いアプローチを開発した。
これらの研究成果は、本研究の主要な目的である地球の長期的な熱史究明に貢献するもの
であり、高く評価される。
なお、本論文第2章は小澤一仁教授などとの共同研究であるが、論文提出者が主体とな
って分析及び検証を行ったもので、論文提出者の寄与が十分であると判断する。
したがって、博士(理学)の学位を授与できると認める。

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